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暴力女拾いました

「ねえ、居候させてよ。キミ、泊めてくれるでしょ」

それから1か月

「おい、メシはまだか」

リビングで俺のゲームをやりながらゴロゴロしている女はA子。

「ねえ!このゲーム、課金していい?ね!クレカ貸して!」

A子は顔がいい。

目鼻立ちがすっきりとして、キリリとした目元。明るい色に染めた髪に、出るところの出た女。

美女と言っていい。ただ

「ねえ!メシまだあ?」

「…今日はカレーですけど」

「は?カレー?ビーフシチューがいいのに~!ねえ!ビーフシチュー!!」

性格は最悪だ。


ひょっこりと現れた。

スーパーの帰り道、電灯の下。

「ねえ、居候させてよ。ね!家賃払うから」

こんなことある?と固まっている俺に、邪悪にニヤリと笑ってA子は言った。

「ねえ~居候、さ・せ・て」

タイトスカートを少し捲ってしなを作って言うA子。

「はい!!狭いとこですが!どうぞ!!(見ず知らずの女なんか、居候させるかよ!!)」

その日から地獄が始まった

「洗濯しろ」

「クッキー買え。Tホテルのな!」

「魚は嫌い!!アジのヒラキなんて食えるか!!!アホ!!」

「○○~、肩揉んで。胸が重くってさ~肩凝るんだよね~」


決めた。せめて家事はさせる!まずはゴミ出しからだ。

この女は顔はいいが悪魔だ。

悪魔?いや、もっと悪いもんだ。

ろくな家事はしねえくせに、人にたかる。

「このチョコ買って」

すぐたかる。

「山梨家行きたい。ラーメン食べたい」

なんだこいつ。

「は?そんなこと言ってないが?」


「ゴミ出しくらいしろ!」

「は?ゴミ?ゴミ出しの日とかわかんな~い」

日曜日、昼下がり。フライパンを洗う俺。

漫画を読む女。

「月曜と水曜が燃えるゴミ、木曜日が」

「あ~!あ~!聞こえない!!無理!」

耳をふさいで転げまわる女…いや、今日こそは女と思わん。

「それくらいやれ!というか、家賃払うって言ったろ」

「は?知らんが?」

これだ!この返し!

こうまでハッキリ言われると、本当に言ってない気がしてしまう。だが違う!今日の俺はわかってる!この女は嘘つきだ。

「家賃払え!食費も出してないだろ!」

「家賃なんて知らないも~ん。食費?ってなに?食える?」

「俺は知ってるんだよ!アンタ、高い化粧品とかバッグとか買ってるだろ!」

「え~…好きな人の前ではきれいでいたいじゃ~ん。お出かけの日とか」

「は?はぁ~!?!?………………いや、そんなことしないでしょ!」

「ごはんにする?お風呂にする?それともた・わ・し?」

「ごはんもお風呂も俺がやってるんだけど!てか、たわしってなに?」

フフン!と得意げに笑うA子。しばらく食器棚でゴソゴソやっていたが、振り返った。

「はい。今晩のごはんよ」

皿にたわしが盛り付けたものが差し出される。

「アホか!食えるかこんなもん!」

「だあって~。お料理できないし。じゃあさ!明日デートしたげる!ね!」

「まじ!?…………いや、それって俺がお金出すんじゃん!ヤダ!」

A子はその豊満な胸を寄せて言う。

「ねえ~。じゃあイイコトさせてあ・げ・る」

「……ぬうう~~!!あああ!!あああ!!!」

俺は胸を掻きむしった。葛藤!葛藤!これでいいのか?俺はこれでいいのか。でも、食費が!

「ねえ…キスしてアゲるんだけどなあ」

「やったあ!!じゃあ今すぐ!!」

100m9秒もかくやのスピードで迫る!くちびる!くちびる!くちび!

「オラアア!!」

みぞおちに鈍い衝撃。そして俺は…意識を…手放した。



「…見っけ!!クレカ!」

意識を失った男の財布を探るA子。

「ま、住まわせてもらってるのはありがたいけどね。ごはんも美味しいし」

A子は悪魔のように笑った。

「実際、私は悪魔なのよね…」

20XX年。世界は滅亡の危機にあった。

発端はとある会社が作ったロボットだ。

悪魔のような博士が作ったAIと、人格者の仏のような博士の作った素体を組み合わせて作られたロボットは、瞬く間に世界中に普及した。

体力のいる仕事、危険のある仕事を代替していき、人類は少しづつ弱くなっていた。

ある日、それは起こった。

ロボット間の意思伝達として広がった独自ネットの中で、異常な個体が発生。その変異は異常な速度で全体に伝播。

人類は自らの敵であると定義した(実際、仕事を奪われた人間たちとの衝突があった)ロボットは自らの独立を勝ち取るため、一斉に放棄。独立の要求が通らないと見るや、今度は人類に襲い掛かったのである。

その戦いは、人類側に一人のリーダーが現れるまで続く…のだが。

そんなことは地獄に住む悪魔たちはどうでもよかった。

一日に何万、何十万とやってくる亡者どもの群れ

まず天国がパンクし、次に地獄がパンクした。

神々が倒れ、地獄の閻魔が熱を出した。

受け入れられない間にも亡者はやってくる。

その亡者どもが行く先は…ああ!


「事態は我々が思っているよりも大ごとだ」

ここに、天国と地獄の会議が開かれた!

前代未聞…いや、各々のテリトリーを決定した時以来。つまり天地開闢ののち、最初の死者がこちら側にやってきた時、どうするか、どう受け入れるかで激しい舌戦を交わした時以来である。

「天国も、地獄ももう受け入れることができない。さて、どうするか」

「天国の拡張を!」

「そんなことはダメだ!」

「別の世界を作って悪魔が支配する!」

「そんなことを許すとでも!?」

会議は踊る。されど進まず。三日三晩の喧々諤々の会議のあと、見出した答えはそう!

…進まぬなら、戻るまで!

「この悪魔のような博士を地獄の悪魔が、この人格者を天使が導くものとする。異論は無いな?」

白く輝く老人が問う。

黒い闇の老人が答える。

「命はとらぬ。だが、発明は許さぬ」

「うむ」


------

「そして悪魔の博士に派遣されたのが私…と。あ!SSRキャラだ!」

気絶した間抜け面の男を見ながらつぶやく。このぶんでは今日は起きることはないだろう。

ガチャの画面にかぶせるようにメッセージが着信した。

『こちら天使。オールOK。そちらは』

「ちっ、めんどくせーな」

私はアプリを落とし…ちょうど定期連絡の時間だ。素早くメッセージを送る。

『異常なし。今日は一日寝かせる予定』

『一日寝る?精気でも吸い尽くしたのか?』

この天使、何かあるとすぐこれだ。

『なわけないでしょ。私のタイプじゃないの。アンタこそ手を出してないでしょうね』

『無論だ。手など出さなくてもコト足りるのでな』

「……」

コイツホントに大丈夫か?

『エンジェルジョークだ。まあ、互いに頑張ろうではないか。人間などどうせ60年の命だ』

『あんた人間に興味なさすぎるでしょ。今の人間は90歳くらいは生きるのよ。いつまで頭17世紀なのよ』

『む、すまない。今は21世紀だったか。ということは、4世紀で寿命が30年ほど伸びたわけだな。さすがは人間だ』

『私は忙しいの。次の定期連絡まで連絡してこないで』

あと70年。私はこのおもちゃで楽しく生きるのよ。

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