メンヘラで面食いな彼女。
愛してるの、宇宙一。ただ、それだけ。
「ふざけるな!!何考えてるんだ!!
こんな仕事もしてないニートと結婚だなんて許す
わけが無いだろう!!
…お前がそんなに馬鹿だとは思ってなかった
育て方を間違えたみたいだ」
そう言っておもむろに立ち上がり、扉を乱暴に閉めて出ていくお父さん。
お母さんも眉間に皺が寄っている。
「…今回ばっかりは私も反対よ。
せっかく来てくれたのに申し訳ないけど、
もう一度考え直した方がいいわ
二人の将来やそれぞれ自分自身についてね」
「…ふぅ。やっぱりこうなるのね」
私は悲しい気持ちで机を見つめた。
分かってはいたけど、両親は私たちの結婚を認めてはくれないみたい。
チラリと隣に座る彼を見る。
明るい茶色の髪の毛が照明の光を反射して、
キラキラと光っている。
…こんなにかっこいいのに。
彼の顔は最高に私の好みの造形で、
近くで見ていられるだけで幸せを感じる。
「…ごめん、オレが働かねぇからだよな」
見つめていたら、彼が悔しそうな顔で呟いた。
「ううん、そんなことないよ、私の親がごめんね、
とりあえず帰ろっか」
彼の手を引き、玄関へと向かった。
「…ねぇ、私ね、ずっと考えてたんだけど」
帰り道、私は静かに彼に話しかけた。
「なに?」
「あのね、きっとこれからも、
私の親は認めてくれないと思うの
あの様子だと、
これからの仕送りも打ち切られそうだし」
「…あぁ」
「でも、私1人の稼ぎじゃ、
生活して行けないでしょ?」
正直なところ、私の稼ぎは世間の平均的なものよりも低い。
だが、私の親からの仕送りを、彼の生活費の分に回すことで、なんとか生活できていたのだ。
「あぁ。オレが働くしかねぇな
お前の親に認めてもらうためにも」
「働けないでしょ?」
「…」
彼は辛そうな表情で押し黙っている。
実は彼は精神的にとても不安定なのだ。
浮き沈みが激しく、自分の感情をコントロールできない。
そのせいで数え切れないほどアルバイトをクビになってきた。
「…あのね、私はもう、
ヨシくんの辛そうな顔、見たくないよ
ヨシくんはもうたくさん、
苦しんだし、悩んだでしょ?
だからね_」
「…準備、できたよ」
両親への挨拶から数週間後の朝。
窓からは雲ひとつない青空が見えている。
「…おう」
光が降り注ぐ明るい室内の中央にあるテーブル。
その上には二つのグラスが並んでいる。
「_今まで、ありがとう。
私の、彼氏になってくれて、ありがとう」
私は彼に、微笑みかけた。
「…こっちこそ、オレなんかと一緒に、
人生を歩んでくれて、ありがとな。」
彼もふわりと微笑んだ。
「…幸せにしてやれなくて、ごめんな」
少しだけ、泣きそうな笑顔の彼に
「ううん!私は十分、幸せだったよ!」
と言って、元気づけるために、
満面の笑みになるように笑顔をつくる。
でも、これは紛れもなく、私の本音だった。
「…ありがとう。ほんとに、ありがとな」
そう言って浮かべた表情は、
今まで見たなかで、一番好きな顔だった。
グラスを手に持った彼は私に、一つ質問をした。
「…もしも、生まれ変わったら、オレと、
恋人になってくれるか?
きっと、今度こそ、幸せにしてみせるから」
不安そうな彼に、
「もちろん!」
と応えてみせる。
「…そっか」
嬉しそうな彼を見ながら、私もグラスを手に取る。
「…飲もっか」
「…おう」
二人で目を合わせて、同時にグラスに口をつける。
…ガシャッ、ガタンッ。
グラスが彼の手から滑り落ちたと同時に、
彼は椅子から落ちて倒れた。
私は席を立って、彼の姿を見に行く。
「…騙してごめんね?
でも、これからはもう、
苦しい思いしなくていいし、
ずーっと私のものだよ」
返事が返ってくることはないと知りながらも、
彼の顔を見つめながら話しかける。
彼は目を瞑っていても本当にイケメンだ。
上手くいって良かった。
彼を私のものにしたかったし、
彼の悔しそうな顔や、苦しそうな顔は
もう見たくなかったから。
これからは私だけがこの愛おしすぎる顔を、
独占できる。
私は鼻唄を歌いながら、
届いていた業務用冷凍庫の準備をした。
Thank you for reading.




