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第11話 密猟団との遭遇

 アルカ国へ来て数日が経った。

 私は今日、 マムアンが採れるという南の森へ来ている。

 この森に生息してる魔獣たちに、キュウのことについて何か知らないか聞くためだ。


 ちなみにゼンデさんとランさんは調査任務のためにまた国境の森へ行っている。

 一人で行くことを心配されたが、個人的なことに付き合わせるのも申し訳ないのでちょうど良かった。

 

 森に入ってすぐに艶のあるオレンジ色の実がたくさん成った木が並び、たくさんの魔獣たちがその実を頬張っている。


 森に入ってすぐにいる魔獣たちは比較的人にも慣れていて大人しいらしい。


 私は近くの木の下で休んでいる魔獣に声をかけることにした。

 驚かせないようにゆっくりと近づき、少し離れたところでしゃがんで目を合わせる。


「すみません、少しお聞きしたいことがあるんですけどかまいませんか?」

(わあ、言葉がわかるの? 珍しいね。僕でよければ何でも聞いて)


 許可をもらったので、もう少し近くに寄り、目の前に座った。


「ありがとうございます。ある魔獣を探しているのですが、ここにいないかなと思いまして」

(どんな魔獣なの?)

「もう十年以上前なのですが、小さい羽と牙があり、背中にフワフワの毛が生えている子です」

(背中だけに毛が生えてたってことは、何かの幼体だろうなぁ。でもそれだけ小さいならだいたい親と行動しているし、親の姿は見ていないの?)

「出会った時には親とは離れていたようなんです。今、どのような姿になっているかはわからなくて……」


 鳥類の魔獣でないのなら、種類は限られるだろうけど、この森に生息してはいないらしい。

 時々、他の場所からマムアンを求めて珍しい魔獣も来るけれど、全ての魔獣を覚えてはいないそうだ。


 それもそうだよね。でも、ここにいるわけではないとわかっただけでも一歩前進なのかな。


 私は魔獣にお礼を言い、 森の奥へと足を進めた。


 これは、ちょっとした好奇心だ。まだ見たことのない魔獣を見てみたい。

 人に慣れていない危険な魔獣もいるらしいけれど、それは意思疎通ができないから。

 言葉を交わし、もし魔獣が嫌がれば帰ればいい。

 そう思っていたけれど――。


 遠くの方から、かすかに魔獣の咆哮のようなものが聞こえた。

 かなり、森の奥からだ。でも異常な叫びだということはわかる。


 私は足を速めた。


 森の奥へ進んでいくと、数人の人影を見つけた。

 おそるおそる近づき、木の陰から様子を窺う。


 その状況に目を見開いた。

 一見、冒険者のような風貌をした人が三人いるけれど、違う。


 三人は一匹の魔獣を取り囲み、押さえつけるように体を拘束している。

 その前足には枷がはめられている。


 きっとあれがゼンデさんが言っていた密猟団だ。

 焔虎を狙ったのもあの人たちかも。


 どうしよう。一旦戻ってギルドに報告するべきだよね。

 でも、そうしている間にあの子が連れて行かれるかもしれない。

 

 何か方法はないだろうか。私一人で密猟団を捕まえるなんてことは無理だ。

 せめて、あの子を助けるだけでも――。


 私は、さっきいたマムアンの木がたくさん並んだ場所へと戻った。

 そこにいる魔獣たちに声をかける。


 密猟団たちはきっと手練れた人たちだ。

 だから、数で向かうしかない。


「みんなさん、協力していただけますか?」

(もちろん! 最近、いなくなる魔獣がいておかしいと思ってたんだ)

(僕たちの仲間にひどいことをしてるなんて許せないよ)

(いつ自分が狙われるかわかんないからね。悪いやつは懲らしめとかないと)


 大勢の協力を得て、また先ほどの場所へと戻る。


 捕らえられた魔獣は、ぐったりとしていて、運ばれようとしていた。


 集めた魔獣たちには、密猟団に気づかれないように、周りを取り囲んでもらっている。


 私は密猟団から距離を取った状態で姿を見せた。

 

「野生の魔獣を許可なく捕らえるのは犯罪ですよ」

「ああ? なんだお前。だからなんだって言うんだよ」

「その子を離してください」

「うるせぇ!」


 三人のうちの一人が私に短剣を振りかざし、襲い掛かろうとする。

 その時、周りにいた魔獣たちが一斉に飛び出した。


 私に注意が向いていた三人は、近づいてきていた魔獣たちに気付いていなかったのだ。

 

 二人は抱えていた魔獣を下ろし、魔力を蔓延らせた。

 けれど、魔獣たちは臆することなく飛びかかる。

 男たちも魔獣に向かっていった。


 私は魔獣たちが攻めかかっている間に、捕らえられていた子に治癒魔法を施す。

 まず怪我をしている足治す。

 そして透視魔法で血の巡りを確かめる。

 焔虎はマムアンを食べると体をが痺れたと言っていた。

 

「……やっぱりそうだ。毒が体を回っている」


 私は体に自分の魔力を流し込み、解毒魔法をかける。

 これで、意識もはっきりするはず。


(ん……)


 魔獣はゆっくりと目を開く。


「良かった。大丈夫ですか? 動けそうなら、ここから逃げましょう」

(え……うん。でも……)

 

 周りに視線を向けると、密猟団の三人は意識を失い倒れていて、魔獣たちが得意気に私を見ていた。


「みなさん……すごいですね……」


 まさか、ここまですると思っていなかった。

 でもよく考えたら人間と魔獣では力に大きな差がある。いくら手練れの密猟団といえ、これだけの数の魔獣に襲われたらひとたまりもないよね。


 でも、この人たちどうしよう。

 放っておくわけにもいかないし。


 すると、一匹の魔獣が密猟団の腰袋からロープを咥えて取り出してきた。


(これ、使ったら?)

「そう、しましょうか」


 私はロープで三人全員の手足を縛る。これで目が覚めてもすぐには動けない。

 街に戻って人を呼んでこないと。


「ふぅ」


 息を吐いて立ち上がると、バタバタと人の足音が聞こえてくる。


 もしかして密猟団の仲間?!


 緊張しながら振り返ると、そこにはゼンデさんとランさんがいた。

 後ろには数人の冒険者がいる。彼らはギルドで見たことがあるので正真正銘冒険者だ。


 拘束された状態の密猟団にひどく驚いた顔をしている。


「これ、フィーナがやったのか?」

「私……というか、この子たちが……」


 魔獣たちは私を囲むようにおとなしく並んでいる。


 その様子に冒険者たちは全員、信じられないというような目で私を見ていた。

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