表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

人の親切を当たり前と思っている人に対する対処法

作者: 山田 勝

 義母は洋服のお直し屋をやっている。店舗兼家には、お客様用の駐車スペースがある。


 ある日、客でもないのに、駐車場を貸してくれと言ってくる者がいたそうだ。


「葬式がありますので、貸して下さい」


「ええ、ご町内の方?」


「いえ、〇〇地区の丸山ですが」


「ええっー、遠いし、知らない人だわ」


「この家は目印になりますから、ここに案内板をおいて、車を止めて、ピストン輸送します。明日には取りに来ます」


 義母は、断ったら、


 心の底から驚かれたそうだ。


「田舎なら、貸してくれるって聞きましたが」

「限度があります」


 私の住んでいる田舎では、葬式があったら、町内の者は、弔問客に、駐車場を貸す風習がある。


 しかし、あくまで、顔を見知っている人だ。


 その人は、葬式会社か喪主かは、分らないが、人の親切を特権と勘違いしたみたいだ。


 ・・・・・


 実は、我が社でも、そんな人がいた。


 30半ばのおっさんで、形式上は、私の上司に当たる。矢木さんと言う。


 奥さんが亡くなり、父子家庭になった。小3の息子さんがいるそうだ。


 定時に帰りたいので、外回りから事務方に異動になった。


 まあ、仕事は、定時に帰って、有給を消化するのは理想だ。


 しかし、彼は、16時45分終わりなのに、30分から帰る準備をする。


 仕事も新しい仕事は出来ない。

 それに、頻繁に休むので、責任のある仕事はさせられない。

 雑用だ。


 しかも、その雑用を人に手伝ってもらおうとする。


「俺、字が汚いから、ファイルに名前を書くのを手伝って、ほら、女の子だと丁寧に書くでしょう?」


「はあ、ええ」


 我が社では、紙のファイルを再利用するために、背表紙に鉛筆で項目を書き。

 中の資料が用なしになったら、また、消して書くのだ。

 まあ、再利用だ。


 父子家庭。皆は、可哀想に想ってか、キツく言わない。


 また、子供が急に病気になり。

 突発で月に2,3回は休む。


 まあ、これも、仕方ないのか?と私は疑問に思った。


 何故なら、私も父子家庭で、病気になったときは、市販の薬を飲んで、親父が帰って来てから、熱が下がってないようだったら、病院に連れて行ってもらったのだ。


 親父に看病なんてされたことはない。


 そう言えば、不景気な時で、親父が家にいると、クビになったのかと不安に思ったものだ。


「父さん・・・会社、クビになったの?」

「馬鹿!有給だ!」


 矢木さんの子供と、私は一世代違いだが、時代が変わったのかな。


 と感じていたが、


 ある日、その疑問が、確信に変わる出来事があった。


「昨日は大変だったよ。息子が、熱が出て・・」


 私は、感じたことを述べた。


「コロナ検査した方がいいのではないですか?」


「ああ、行ってきた。駅前のコロナセンターだ。数日後には分るって言っていた」


 あれ、おかしい。


「私も、行った事がありましたが、受付してもらえませんでしたよ。熱があると受け入れ拒否です。熱が下がってから来て下さいと言われました」


「いや、違った。病院に行ったよ。あのデカい総合病院で検査したよ」


「あの、私もそれで、その総合病院のサイトで確認したら、感冒は予約必要で、外での受診ですよ」


 ・・・私はその時は、靖子さんに車を運転してもらった。センターで検査を拒否されて、病院も予約待ちだった。


 靖子さんが、気を利かせて、飛び込みで、個人病院に行って、直談判をして、当日予約無しで、


 外で、受診してもらった。


 病院の入り口に、イスを置いてもらって、そこで先生にみてもらって薬を出してもらったのだ。


 そして、次の日には、熱が下がったので、コロナセンターで検査をしてもらって、その日のうちに、陰性の判定がでたのだった。メッセージで来た。

 矢木さんの話とは食い違う。


 もしかして、子供をだしにして、ズル休みとかしているんじゃないだろうか?

 と疑問に思い。


 そんな話を、外回りの人に聞いて見た。


 彼は矢木さんと一緒に仕事をしていた同期だ。


「ああ、あれさ。怪しいのよ」


「どんな風に付き合ったの?」


「俺さ。野球が好きでさ。韓国でこんな話があるのよ」


 国名を出して、あれだけども、同期は外国の話をした。


 韓国のスタジアムで、ホームランボールを手にした青年が、もの欲しそうにみる子供に、ホームランボールをあげた事件があった。


「ほら、あげるよ」

「有難う」


 通常、美談になるが、事実、美談になったが、すぐに、変な事態になった。


「「「チョーダイ!チョーダイ!」」」


 しばらくして、子供が、手を出して、「チョーダイ!」と言いながら、ホームランボールを取った客を取り囲むようになったのだ。


 恩恵が特権になってしまった。


「それと、この話何の関係があるの?」

「それがさ」


 ・・・・・


「「「チョーダイ!チョーダイ!」」」


 頭に来た客は、


 ポイッ


 とボールをグランドに返したり。


「「「ヒドイ!」」」


 また、ある人は、


「「「チョーダイ!チョーダイ!」」」


「・・・・・・・」


 ボールをカバンにしまって、無視をした。


「つまりだ。恩恵を特権に感じる人には、無視か。捨てるかするに限るって話だよ。

 俺も矢木さんにそんな感じで接したよ。

 仕事は手伝わない。時間が余ったら、本当に頑張っている他の人を手伝うようにしたよ」


「まあ、やってみます」


 ・・・・・


 仕事を手伝わない。

 時間が余ったら、他の人を手伝うようにしたら、


 矢木さんは独り言を言うようになった。


「今度の週末、運動会だから、キャラ弁を作らなきゃ。今のうちに仕込んでおいた方がいいかな」

「最近、物騒だから、児童館に早めに迎えに行かなきゃいけないな~」


 無視をしていたが、


 やがて、結構、児童虐待とも思える事案が判明した。


 ☆


 あの病気がやや収まって、飲み会をしようと言うことになった。

 忘年会だ。


 少人数でやることになったが、


 矢木さんが来た。


 子供をつれて、やって来た。


 幹事は悲鳴をあげる。


「ヒィ、矢木さん・・・子供の世話があるから、来なくて良いって言ったのに・・」


「大丈夫だ。夕飯をここで食べさせるから、勿論、俺が払うよ。おい、武、あの綺麗どころのところに行って来なさい」


「はい・・・」


 うわっと思った。


「武には、唐揚げと、サラダとウーロン茶、ライスあるよね。それだして」


 子供は、慣れているのか。


「父がお世話になっています・・」


 とペコッと頭を下げた。


「ええ、君は何年生?」

「三年生です」


 矢木さんは、構わず飲んでいる。


 ご飯を食べ終わった後、


 武君は、カバンからノートと教科書をとって、宿題をやり始めた。・・・・


 陰キャだ。

 分る。何故なら、私も陰キャだからだ。


 しかも、まるで接点のない大人に囲まれている。

 居づらいだろう。


 私だったら、スマホをいじっているな。


 これ、何か言った方がいいかなと思っていたら、係長が英断を下した。


「矢木君、子供を連れて帰りなさい・・・」


「え、でも、武を家に1人にすると、心配ですよ」


「馬鹿者!君も帰って一緒にいるのだ!!」


「えっ、はい」


 後日、


 詳しく話を聞いたり、調査をしたら、


 早く帰り。子供のためにご飯を作っていると思ったら、


 結構な頻度で、居酒屋で食事をしているそうだ。


 虐待か、非常識かは意見が分かれることだろう。



 問題は、会社に嘘を言っていたことだ。



 俺も父子家庭だったから、小3ぐらいになると、自分で洗濯機を回せるし、米もとぐことが出来るし、皿も洗った。

 さすがに、火は、中々使わせてもらわなかったが、


 親父が帰ってきてから、野菜炒めとか肉とかを作ったり、惣菜を買ってきたりしていたな。


 まあ、嘘を言って、子供をダシに使ったことが、問題になった。


 矢木さんには、飲み仲間がいて、その人達に会うのを楽しみにしていた。


 結局、矢木さんは、異動になった。


「不定期異動だ。君は、実家近くの事業所に移動だ。君のお父様とお母様に連絡を取った。

 武君の面倒を喜んでみると言っていたぞ」


「そんなー、武は、学校の仲間と別れたくないと言っています!」

「ほお、君は武君がいじめられているから、担任と話し合うために、早退を繰り返していたのではないか?」


 いろいろ嘘バレてしまった。


 まあ、私には子供がいない。


 子供が出来たら、どうなるんだろうな。


 しかし、子供をダシにすることはしないようにしよう。


「孫の顔を見たいですって、・・・まだ、分らない。私もまだ仕事を続けたい」

「フフフフ、そのために私がいるのよ。私が面倒をみるわ」

「お母さん・・・」


 まあ、これから、育児書でも読んでみようと思う。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ