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第68話 ルーテ襲来


 ジェリーとスクイードは椅子から立ち上がり、サメの口からまろび出た双子へ駆け寄る。


「漆黒の安否確認」

ィーあワコもドク(こどもかわいい)


 そして、訳の分からないことを言いながら二人の無事を確認した。


「…………やっと出られた……べとべとだけど……」

「からだ……とけてないよね……?」


 脱出に成功したノアとレアは、弱々しい声で呟く。体は溶けていないが、服は少しだけ溶け始めていた。


 そんな二人の元へ、ファンはゆっくりと近づいていく。


「――――こんな場所で再会するとは思っていませんでしたよ。ノア、レア」


 そして、彼らに向かって優しく語りかけた。


「え…………?」

「うそ…………!」


 ファンの声を聞き、その姿を見た双子は、みるみるうちに青ざめていく。


「し、神父さま……?! どうして…………?」

「むしろ私が聞きたいくらいですよレア。なぜ、あなた達がこんな場所に居るのですか?」

「おばけ……!」「ゾンビ……!」


 レアとノアは、立ち上がって部屋の隅へと逃げた。


「違います。私はこうしてちゃんと生きていますよ」

「く、来るなッ! レアに触ったら……許さない!」

「悲しいことを言わないでください。昔みたいに三人で仲良くしましょうよ」

「神父さまはへんたいだから嫌いっ! ノアに近づかないで!」


 怯えながらも、ファンのことを睨みつける双子。


「……説明しろファン。そのわらべどもはなんじゃ?」

「私の大切な《《作品》》ですよ。美しいでしょう?」


 オトヒメは何も言わなかった。簾によって顔が隠れているため、その感情を窺い知ることはできない。


「教団が潰されて以降行方不明だと聞いていたので、奴隷として何処かへ売り飛ばされたのだとばかり思っていましたが……まさかこれの口から飛び出してくるとは……!」


 サメの脇腹を足で蹴飛ばすファン。


「……お主が育てたのか?」

「ええ。なるべく外の情報を与えず、悪意から遠ざけて、出来る限り純粋無垢にね」


 ファンはノアとレアを愛おしそうな目で見つめる。


ィおみク(きもい)

「――それから、時間をかけてじっくりと魔物に堕としていくつもりだったのですが……私を殺させて殺人の味を覚えさせた所で終わってしまいました。……使えない教団ですよ、まったく」

「暗黒の変態」

「……倫理に背かせて罪悪感を植え付け、人間の悪意を教え込み、地獄のような苦痛を味わわせて、完全に心を壊した後で邪神へ生贄として捧げる。……そうやってカルマを積み重ねていけば、我々――紅蝠血(ヴェスペルティリオ)に匹敵する存在に成れたかもしれないというのに……惜しいことをしました。今のこの子達は中途半端に穢れてしまった」


 ジェリーとスクイードは、さり気なくファンの近くを離れて不快感を露わにする。


ェづンぃす(死んで)」「漆黒の気色悪さ」「ェなゲモみクンォキロル」「バカ」「まぬけ」「アホ」「ひとでなし」


 酷い言われようである。


「まさか、殺し屋がこの程度の話でそんな反応をするとは思って居ませんでしたよ」

「|ェでィあなリアひにァキす《視界に入らないで》」

「漆黒の対話拒否」


 こうして、ファンはその場に居たほぼ全員から決定的に嫌われたのだった。


「……ま、まあ良いでしょう。とにかく、彼らは私が――」


 刹那、再び部屋の扉が開け放たれ、瀕死の半魚人が中へ転がり込んで来た。


「お、オトヒメさまッ!」

「……騒々しいぞ。どうした」

「や、屋敷に……子供が二人侵入しましたッ!」


 息も絶え絶えの様子で、必死に訴えかける半魚人。


「……だから何だというのじゃ。さっさとつまみ出せば良いであろう」

「そ、それが……恐ろしく強くて我々ではまるで対抗できませんッ!」

「なんだと?」


 予想外の答えに、オトヒメは当惑する。


?ォもドカたム(またこども?)

「漆黒の遠足でもしているのか?」


 すると、今度は遠くで爆発音のようなものがして、屋敷全体がわずかに揺れた。


「これは……予想以上に厄介な事が起こっているようですねぇ」

「ジェリー、スクイード、侵入者を即刻排除しろ!」


 慌てて二人に命令するオトヒメ。


ゥおしァ(こども)|ワく、ォぬレみじォもドク《いじめるの、かわいそう》」

「漆黒の渋々承諾」


 暗殺コンビは仕方なく命令に従い、部屋を後にして爆発音のした方へ向かう。


「一体……何が起こっているというのじゃ……?!」


 ――こうして、恐怖の時間が始まったのだった。

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