96.俺の面目は立ったというものだ。
快楽を貪った翌朝、ホロウィンドウがポップアップした。
《自宅警備員がレベルアップしました》
《〈弩兵召喚〉のクラススキルを習得しました》
ん、これは〈ボーンガーディアン召喚〉には統合されないらしいな。
〈城塞〉には備え付けの大型クロスボウが設置されているため、それを扱うための要員を召喚できるようになったということらしい。
一体、何と戦争をさせられるんだ、自宅警備員……。
さて本日のベルナベルの予定は、……昨日から引き続き俺との戦闘訓練だ。
まだまだ俺の戦闘スタイルを伸ばす余地があるというので、ベルナベルに一任することにする。
〈ミサイルジャベリン〉という新しい魔術のレパートリーも増えたことだし、戦術もまた少し変わらざるを得ないだろう。
というわけで、ベルナベルと〈代理人〉を送り出して、俺は〈匿名掲示板〉の管理をすることにした。
いつものルーチンワークである。
もちろん新聞にも目を通しておく。
俺は北の国へ商隊の護衛として入国したコーニエルだ。
街へ無事に入れた俺は、まず探索者協会に登録した。
その後は〈精霊:使役〉を使って聖痕のある方角を探る。
折角、正規の方法で入国したのだから、ひとつくらい聖痕を入手しておきたい。
〈浮遊島〉の連中は順調に集めているだろうから、急がなければ俺の取り分がなくなってしまいかねない。
徒歩では効率が悪いので、ボーンガーディアンを召喚して肩車してもらうことで、速度を稼ぐ。
なりふり構っていられないのだ。
もちろん人目は気にしているから、ちゃんと誰も見ていないところから乗っている。
疲れを知らないアンデッドの騎士は、グングンと速度を上げて走る。
揺れが酷いが、必死に兜に縋り付いてなんとか耐えながら、時折、〈精霊:使役〉で方角を確認しながら進む。
北へ北へとどんどん進んでいく。
喜ばしいことに、どうやら〈浮遊島〉の探索範囲から離れた位置にあるらしい。
なんとか聖痕を入手したい。
その一念でボーンガーディアンを走らせた。
結果として、聖痕を宿した魔物を発見することができた。
オーガの戦士だ。
オーガは悪魔に分類される、いわゆる鬼である。
額に二本の角をもつ筋骨隆々の大男だった。
オーガは両手に戦斧を持ち、よだれを垂らしながらこちらに向かってきた。
正気を失っているらしく、がむしゃらに斧を振り回してくる。
俺は素早くボーンガーディアンから降りて、追加のボーンガーディアンを召喚した。
三体で戦わせるのが基本、それが昨日、ベルナベルに教わったことだ。
金属と金属がぶつかり合う音がする。
どうやら戦斧を並べた盾で防いでいるらしい。
ベルナベルの爪のように盾を破壊するほどの威力はなさそうだ。
〈ミサイルジャベリン〉を撃ち込もうかと一瞬だけ考えたが、それでは前衛のボーンガーディアンを巻き込む。
まかり間違ってボーンガーディアンが欠けた状態でオーガが突っ込んできたら俺が危ない。
普通の〈ホーミングジャベリン〉で攻撃することにした。
「我は創造する。剣より長き刃もつもの。汝の名は槍――〈ホーミングジャベリン〉!!」
前線の頭上を飛び越えた槍は、大きく迂回してオーガの後頭部を吹き飛ばした。
よし、聖痕を入手したぞ!!
ヘトヘトになりながら、その場に座り込む。
これでなんとか、俺の面目は立ったというものだ。
しばらく休憩したら、本体のもとへ戻ろう。
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 30
クラス 自宅警備員 レベル 87
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈槍技〉〈暗視〉〈気配遮断〉
〈性豪〉〈料理〉〈礼儀作法〉〈ウワバミ〉〈闇:召喚〉
〈空間:防御〉〈時間:治癒〉〈創造:槍〉〈精霊:使役〉
〈同時発動〉〈高速詠唱〉〈通信販売〉〈新聞閲覧〉〈相場〉
〈個人輸入〉〈匿名掲示板〉〈魔力眼〉〈多重人格〉〈睡眠不要〉
〈闇市〉〈ボーンガーディアン召喚〉〈別荘〉〈夜の王〉〈隠れ里〉
〈牢獄〉〈テイム〉〈監視カメラ〉〈ホットライン〉〈帰還〉〈領土〉
〈変身〉〈領域支配〉〈隠れ家Ⅲ〉〈代理人Ⅲ〉〈眷属強化〉
〈ダンジョンマスター〉〈浮遊島〉〈城塞〉〈リサイクル〉
〈監視衛星〉〈永続召喚〉〈地下迷宮〉〈天運〉〈視界共有〉
〈弩兵召喚〉〈アイテムボックス〉〈経験値75倍〉
〈契約:ベルナベル〉〈隷属:青葉族〉〈隷属:黒影族〉
〈隷属:魔王軍〉〈従魔:マーダーホーネット〉
〈従魔:レッドキャトル〉》
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