9.これ、実は壊れスキルなんじゃね?
うーん、やっぱりそう上手くはいかないか。
俺は〈通信販売〉の販売品目を眺めながら、〈相場〉より安いものを探していた。
しかしそうそう安値で売られているものはない。
というか相場で売られているものがほとんどだった。
……そんなことがあり得るのか?
もしかして、〈相場〉スキルってこの街の相場を示しているだけじゃなかろうか。
そうじゃなければ、例えばこの街で売られているトマトに似た野菜は、遠い外国まで行けばきっと珍しいから価値が変わるはず。
そうしたら〈相場〉スキルはそれら全世界のすべての相場を平均して示してしまい、グチャグチャな値付けをすることだろう。
そうならないように、恐らくこの街での相場だけを示していると考えられる。
そうなると需要と供給が長年、釣り合ってきただろうから、大半の物は相場通りということになる。
……例外は、新しく持ち込まれたリバーシくらいだからな。
リバーシは需要が高く、供給が足りていないようだ。
未だ在庫切れになっており、相場は売値よりかなり高い。
……見通しが甘かったかな。
〈相場〉スキルで稼げるかと思ったが、抜け道がない。
とはいえ〈写し技〉の対象となるスキルは、食事の場ではなかなか吟味が難しいから、〈相場〉はアタリの部類だと思う。
ホロウィンドウの明かりを見ているから、日が沈んでもすることがあるのはいいことだ。
しかしそろそろ寝ておくか。
この世界はどうも、日が落ちたら寝て、日の出とともに起きるようだから、朝が凄く早いのだ。
そう思っていたら、ホロウィンドウがポップアップしてきた。
《自宅警備員がレベルアップしました》
レベルは十。
寝て起きたら、十一になっているかもしれない。
そうしたら、新しいスキルが増えるはずだ。
一ヶ月の間にどれだけレベルを上げて、金策に繋げられるかが勝負だな。
朝、起きてステータスを確認すると、レベルが十一になっていた。
クラススキルが増えている。
〈個人輸入〉というスキルだ。
そういえば健康のためにサプリメントを個人輸入したことがある。
海外のものは日本のものより内容量が多い割に安価なので、重宝した。
ひとまず朝食の後でスキルを検証するか。
名称からすれば、他の街の物品を購入できそうだが、果たして。
朝食後、部屋で〈個人輸入〉を起動する。
これもインターフェースは海外のECサイトに良く似ていた。
まず目に止まるのは、トップ画面のオススメ商品だ。
シルクの反物。
やっべえ、相場よりかなり安い。
金貨一枚で購入できるのに、〈相場〉スキルで見ると金貨五枚を示している。
実際には相場は小売店の売値だから、俺が卸すときには若干下がるとはいえ、金貨にして四枚くらいで売れると見込める。
そうすれば金貨三枚の利益だ。
いきなり資産が四倍になるぞ。
やはり〈相場〉はアタリだった。
温存しなくて良かったぜ。
早速、シルクの反物をひとつポチった。
決済を終えと、〈アイテムボックス〉内の金貨が消えて、シルクの反物を入手する。
……ん?
個人輸入はそもそも外国からの輸入である。
一瞬で決済して物が入手できるようなものではない。
これ、実は壊れスキルなんじゃね?
どこかで到着までの日数が表示されるかと思ったが、そんなことはなかった。
ひとりシルクロード待ったなしである。
これは……儲かる予感!!
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 30
クラス 自宅警備員 レベル 11
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈聞き耳〉〈通信販売〉〈新聞閲覧〉
〈隠れ家〉〈相場〉〈個人輸入〉〈アイテムボックス〉
〈経験値5倍〉》
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