74.俺はお前を殺しに来たんだ。
やっつ目の聖痕を得て〈経験値45倍〉になった。
攻略スレの情報を鵜呑みにすれば、レベルの高い者で二十五程度らしいので、俺は三倍近くのレベルを誇っているのだ。
身体能力こそ初期のままだが魔力は膨大で、ボーンガーディアンの強さは恐らく地球人よりはるかに格上だと思える。
正面切っての戦いになれば、俺が勝つだろう。
昼過ぎに〈浮遊島〉の管理をしている〈代理人〉からジスレールフェルスの街の上空に待機しているとの一報が入った。
俺はちょうど戻って来たベルナベルと〈代理人〉を殺人鬼狩りに派遣することにした。
俺とベルナベルは、〈浮遊島〉に来ていた。
〈城塞〉が設置されているから、完全に軍事拠点として使用可能な状態にある。
もちろん俺は軍など所持していないので、せいぜいが〈代理人〉とボーンガーディアンを並べるくらいが関の山だ。
……いやなんかそれ結構、強そうだな。
さて街へ降りなければならない。
だが俺には〈浮遊島〉に〈帰還〉することはできても、逆に〈浮遊島〉から降りるスキルは持ち合わせていない。
いや正確にはひとつだけあるのだが、それを使って〈浮遊島〉から落ちるのは初めてなのである。
「のう主よ、何か問題が生じたならわしが助ける。だから腹をくくって飛び降りるのじゃ」
「わ、分かっているよ。……世界の運行を司る精霊たちよ。我が命に従え。落下する俺を支えてゆっくりと地上に降ろしてくれ」
精霊たちが俺にまとわりつく。
そう万能魔術〈精霊:使役〉により、落下速度を落とそうという試みだ。
効果は時間が経てば経つほど薄まるから、俺は勇気を振り絞って空中に足を踏み出した。
「う、おおおおおおお――っ?!」
「落ち着け主、ちゃんとゆっくり落ちておるぞ」
自前の翼で俺の周囲を飛ぶベルナベルは、呆れた顔で言った。
十秒に満たない自由落下をなんとかこなすと、ジスレールフェルスの街は目と鼻の先にあった。
しかし〈精霊:使役〉で「俺以外に地球人を殺した奴を探して教えてくれ」と命じると、街中ではなく近くの森の方角を指し示していた。
まだ日が高いから冒険者の仕事でもしているのだろう。
俺たちは精霊の導きに従い、殺人鬼を追うことにした。
幾度か〈精霊:使役〉を使い、森の中で距離を詰めていく。
そしてとうとう、日本人らしき男と遭遇したのだった。
その男は驚いた風にこちらを見て、告げた。
「こんにちは。もしかして地球人?」
「ああ。コウセイという。そっちも地球人のようだな」
「そうだよ。俺の名前はタケヒトだ」
戦斧を背負っているタケヒトは、人の良さそうな笑みを浮かべて名乗った。
そして俺の隣のベルナベルに目を留めて、怪訝そうにする。
「そっちの女性は……君のパーティメンバーかい?」
「いや。魔術で召喚した契約悪魔だよ」
「へえ、魔術を習得しているのか。俺も……って銀ランク!?」
俺の首にぶら下がっている冒険者タグを見て驚くタケヒト。
「まあな。俺の契約している悪魔が強くて、銀ランクになった。俺自身は戦いは苦手なんだよ」
「へえ? そんなこともあるんだな」
警戒心を煽ってしまったが、些末事だな。
「まあ同じ地球人同士、仲良くしてくれよコウセイ」
「いや、それはない」
俺が断るとは思ってもみなかったようで、タケヒトは不可解と言わんばかりに首を傾げた。
だから教えてやることにする。
「アキラとイチカを殺した殺人鬼。俺はお前を殺しに来たんだ」
タケヒトの顔から表情が抜け落ちた。
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 30
クラス 自宅警備員 レベル 73
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈聞き耳〉〈忍び足〉〈性豪〉
〈料理〉〈闇:召喚〉〈空間:防御〉〈時間:治癒〉〈創造:槍〉
〈精霊:使役〉〈同時発動〉〈高速詠唱〉〈通信販売〉〈新聞閲覧〉
〈相場〉〈個人輸入〉〈匿名掲示板〉〈魔力眼〉〈多重人格〉
〈睡眠不要〉〈闇市〉〈ボーンガーディアン召喚〉〈別荘〉〈夜の王〉
〈隠れ里〉〈牢獄〉〈テイム〉〈防犯カメラ〉〈ホットライン〉
〈帰還〉〈領土〉〈姿写し〉〈領域支配〉〈隠れ家Ⅲ〉〈代理人Ⅲ〉
〈眷属強化〉〈ダンジョン管理〉〈浮遊島〉〈城塞〉〈リサイクル〉
〈アイテムボックス〉〈経験値45倍〉〈契約:ベルナベル〉
〈隷属:青葉族〉〈隷属:黒影族〉〈従魔:マーダーホーネット〉
〈従魔:レッドキャトル〉》
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