73.それが俺の強みだからな。
俺は〈代理人〉たちと記憶の統合をしながら、今日のことを振り返っていた。
ダンジョンでの宝箱設置は結局、自分の魔力の五分の一で魔法の日用品が混じり始めた。
まだ数は少ないが、掃くと砂埃などの汚れを消し去る箒だとか、衣服を水と一緒にこすりつけるだけで石鹸が勝手に泡立つ洗濯板など、面白くて便利な品が入手できた。
それ以外は大抵は武具の類である。
〈闇市〉に流してもいいが、値崩れを起こしそうなので、少しだけ放流したら〈アイテムボックス〉の肥やしになりそうだ。
防刃効果のある魔法の衣服は、予定通りにベルナベルと一緒に聖痕探索をしている〈代理人〉に着せることになった。
魔法の衣服も魔術への抵抗力が上がるものなど、他に幾つかあるので聖痕探索しているコーニエルに化けている連中にも配っていきたい。
〈代理人〉たちが各地で購入した屋台料理で腹を満たした後、ベルナベルは悪魔モードになって〈淫夢〉で精を集めに出かけた。
さて俺は〈匿名掲示板〉と〈闇市〉を眺めながら、長い夜を過ごそう。
翌朝になった。
〈新聞閲覧〉のニュースを見て、予感が当たったことを知る。
地球人のひとりが、地球人狩りを始めたのだ。
……目的は聖痕のひとり占めか、それとも殺人を楽しんでいるのか?
どちらにせよ、早く止めないと死者が出続けることになる。
昨日もひとり、イチカという女性が殺されたのだ。
少し考えをまとめてから、〈匿名掲示板〉のニュース速報に書き込みをする。
地球人がまた死んだこと。
そして、前日の死者と今日の死者を殺したのは同一人物であり、地球人であることを明かした。
スレでは混乱が始まった。
死者が出たのは同じ街で、スタート地点のジスレールフェルスの街だ。
俺は〈浮遊島〉の管理をしている〈代理人〉と〈ホットライン〉を繋ぐ。
「もしもし。他の街は見つかったか?」
「ああ本体? まだ降りてはいないが、ひとつ目の街を発見したよ。何かあったのか?」
「ああ。早めにジスレールフェルスの街に向かって欲しい。〈精霊:使役〉を使ってその方角へ進んで貰えれば、いずれは着くだろう?」
「ジスレールフェルス、ね。最初の街のひとつか。そこで何かあったのか?」
「殺人鬼の出現だ」
「ああ……危惧していた新聞記事のあれね。了解、ジスレールフェルスに向かう」
「頼んだ」
とりあえず介入のための下準備はした。
できるだけ早くジスレールフェルスに〈代理人〉を送り込み、殺人鬼を返り討ちにしなければならない。
これ以上の死者を出さないためにも。
《自宅警備員がレベルアップしました》
《〈リサイクル〉のクラススキルを習得しました》
ホロウィンドウがポップアップした。
今回は随分とエコなスキルが出たが、一体どんな効果だろう。
起動してみたが、ちょっとよく分からない。
仕方がないのでベルナベルに見てもらうことにする。
「ふむふむ。それはゴミ箱じゃな」
「ゴミ箱?」
「そうじゃ。スキルを起動すると入り口が生まれるじゃろ? その中へゴミを入れるのじゃ。そうすると入れたゴミがマナに分解されて、入れた主の魔力が回復するのじゃ。回復量はゴミの含有する魔力や価値によって上下するようじゃな。ただしそのゴミ箱には生き物は入らないようじゃ」
ほほう、それは面白いスキルだ。
ちょうど持て余し気味だったダンジョン産の武具が沢山ある。
これらをリサイクルして魔力を回復して、新しい宝箱に変えることができるわけだ。
「ありがとうベルナベル、なかなかに使い勝手の良いスキルだ」
「そうかのう……? とはいえ魔力を回復するスキルは希少じゃから、そう悪いものでもないかもしれぬが」
俺は不思議そうに首を傾げるベルナベルに、〈代理人〉を付けて聖痕探索の続きに出るように告げた。
昨日はすぐ近くまで来ていたから、聖痕の持ち主はすぐに見つかった。
それは全身鎧だった。
ただし中身はない、死者の怨念で動くリビングアーマーの類だ。
武器は槍。
構えは堂に入ったもので、鎧の身体がぬるりと動く。
「主よ、来るぞ?」
来た。
素早いすり足でこちらに接近、槍が突きこまれてくる。
それをボーンガーディアンが大盾で止めた。
俺は下がりながらもう一体、ボーンガーディアンを追加する。
二体もいれば前線は支えられるという計算だ。
……通常の槍じゃ貫通しても大したダメージにならないかな。
なにせ相手は中身のない鎧だ。
穴が空いたところで、大したダメージになりそうもない。
「我は創造する。剣より長き刃もつもの。汝の名は槍――〈ロケットジャベリン〉!!」
二体のボーンガーディアンの間を縫って爆散の槍がリビングアーマーに着弾する。
派手に爆発して鎧の前面を吹き飛ばした。
それでリビングアーマーは破壊されたらしく、聖痕が剥がれ落ちる。
ふわふわと飛来する聖痕を身に宿して、ひとまず今日の仕事は終わりとなった。
「うむ、強くなったものじゃな主も」
「ベルナベルの指導のお陰だよ」
「そうじゃろ? だが魔術を磨き上げて使いこなす速度は、常人の比にならんのう。さすが〈代理人〉を複数も用意して一日中、魔術の練習をさせているだけはある」
「それが俺の強みだからな」
「人海戦術の極みじゃな。己の強みを活かせるのも重要なことじゃ」
俺たちは〈隠れ家〉を通って本体のもとへと帰還した。
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 30
クラス 自宅警備員 レベル 73
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈聞き耳〉〈忍び足〉〈性豪〉
〈料理〉〈闇:召喚〉〈空間:防御〉〈時間:治癒〉〈創造:槍〉
〈精霊:使役〉〈同時発動〉〈高速詠唱〉〈通信販売〉〈新聞閲覧〉
〈相場〉〈個人輸入〉〈匿名掲示板〉〈魔力眼〉〈多重人格〉
〈睡眠不要〉〈闇市〉〈ボーンガーディアン召喚〉〈別荘〉〈夜の王〉
〈隠れ里〉〈牢獄〉〈テイム〉〈防犯カメラ〉〈ホットライン〉
〈帰還〉〈領土〉〈姿写し〉〈領域支配〉〈隠れ家Ⅲ〉〈代理人Ⅲ〉
〈眷属強化〉〈ダンジョン管理〉〈浮遊島〉〈城塞〉〈リサイクル〉
〈アイテムボックス〉〈経験値40倍〉〈契約:ベルナベル〉
〈隷属:青葉族〉〈隷属:黒影族〉〈従魔:マーダーホーネット〉
〈従魔:レッドキャトル〉》
面白い、続きが読みたい、そういった読者様は評価とブックマークで応援してください。
評価とブックマークは作者のモチベーションに関わるため、是非ともお願いします。




