72.焦る必要はないのだ。
俺はダンジョンから戻って来た〈代理人〉と記憶を統合した。
そしてすぐに新しい〈代理人〉をダンジョンに派遣する。
これを既に数回、繰り返している。
俺の全魔力の十分の一を注ぎ込んだ宝箱からは、いろいろな品が出てきた。
防刃効果のある魔法の衣服はベルナベルと一緒にいる〈代理人〉に渡しておきたいところだ。
他にはマナポーションが多く出てきている。
魔力を回復するポーションで、金貨一枚の価値がある、なかなか役立つ一品だ。
あとは銀貨、魔法の武具だ。
内容を並べた結果、全魔力の十分の一程度では大したものが出ないことが分かった。
ダンジョンの浅い階層と同等程度の宝箱である。
つまり、良い品を入手しようと思ったら、かなり多くの魔力を注ぎ込む必要があるということだ。
そろそろ十分の一ではなく、五分の一にしても良いだろう。
倍の魔力を注いだ結果、どのくらい宝箱の中身の質が向上するのか、興味がある。
なお最終的には全魔力を注いで宝箱を設置することになるだろうが、それは時期尚早だ。
低い魔力からしか出ない品もあるだろうから、いきなり全力投球は控えたい。
時間はある。
焦る必要はないのだ。
昼を過ぎて日が傾き始めた頃、ホロウィンドウがポップアップしてきた。
《自宅警備員がレベルアップしました》
《〈城塞〉のクラススキルを習得しました》
これはまた……〈浮遊島〉に設置しろと言わんばかりのスキルが出てきたな。
俺は〈ホットライン〉で〈浮遊島〉にいる〈代理人〉に〈城塞〉の建設許可を出した。
これで〈浮遊島〉は軍事拠点としても使えるようになったわけだが、自宅警備員に何をさせたいのかね、創世の女神様は。
俺とベルナベルは聖痕のある方角へと歩みを進めていた。
次の聖痕は割りと近いらしく、精霊たちが距離を伝えてきている。
しかし日が傾き始めてきているので、恐らく今日中にはたどり着かないだろう。
喉が乾いたので水袋に魔法の水差しで水を補充しようと思ったら、〈アイテムボックス〉に見慣れないアイテムが増えていた。
ああそっか、ダンジョンの管理者が宝箱を量産しているんだったな。
どんなものがあるのかチェックしつつ歩く。
お、防刃効果のある魔法の衣服とかあるぞ。
いいなこれ、こういう普段着にできる防具が欲しかったんだ。
まだ一着しかないが、今後、増えるのかな?
「主よ。〈アイテムボックス〉を覗いて何かあったのか?」
「ああほら。〈ダンジョン管理〉で宝箱を量産している結果が、ね」
「なるほど、そういえばそんなこともしておったのう。何か面白い品はあったか?」
「いや、そこまでは。多分、魔力を段階的に引き上げながら何が出るのか調べているんじゃないかな?」
「なるほど、主らしいのじゃ。ダンジョン産の魔法の品々は時に貴族が高く買いたがるものもあるそうじゃ。良い金策になるじゃろうなあ」
「お金にはそう困っていはいないんだけど、そういう便利だったり強力な魔法の品を入手するのが目的だからな」
「ふむ。自分で使うのか、贅沢な話じゃが、悪くないのう」
かなり目標地点に近づいたが、夕方になったので俺たちは聖痕探索を切り上げることにした。
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 30
クラス 自宅警備員 レベル 71
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈聞き耳〉〈忍び足〉〈性豪〉
〈料理〉〈闇:召喚〉〈空間:防御〉〈時間:治癒〉〈創造:槍〉
〈精霊:使役〉〈同時発動〉〈高速詠唱〉〈通信販売〉〈新聞閲覧〉
〈相場〉〈個人輸入〉〈匿名掲示板〉〈魔力眼〉〈多重人格〉
〈睡眠不要〉〈闇市〉〈ボーンガーディアン召喚〉〈別荘〉〈夜の王〉
〈隠れ里〉〈牢獄〉〈テイム〉〈防犯カメラ〉〈ホットライン〉
〈帰還〉〈領土〉〈姿写し〉〈領域支配〉〈隠れ家Ⅲ〉〈代理人Ⅲ〉
〈眷属強化〉〈ダンジョン管理〉〈浮遊島〉〈城塞〉
〈アイテムボックス〉〈経験値40倍〉〈契約:ベルナベル〉
〈隷属:青葉族〉〈隷属:黒影族〉〈従魔:マーダーホーネット〉
〈従魔:レッドキャトル〉》
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