63.上手くいきすぎだった。
カチリ、バシュッ!!
ボーンガーディアンが床のスイッチを踏んだ音だ。
そして壁から矢が放たれる。
キィン!!
甲冑に弾かれて、矢は床に落ちた。
ボーンガーディアンに罠を踏ませるという試みは上手くいっていた。
というより、上手くいきすぎだった。
ウォーロード時代より頑強さを増した甲冑は飛来する矢など屁でもない。
魔法の爆発でさえ、耐えて見せた。
そしてボロボロになりながらやっと破壊されたとしても、新しいボーンガーディアンがおかわりされる。
ダンジョンは今頃、悔しくて地団駄を踏んでいるに違いない。
本来ならば暗くて見通しの効かないダンジョン内だが、ベルナベルの〈闇:暗視〉の魔術で視界がハッキリしている。
さすがは夜の闇を縄張りにしているサキュバスだけあって、闇属性もお手の物らしい。
一体、どれだけ魔術に造詣が深いのか……。
出現する魔物もまた問題はない。
今のところボーンガーディアンと俺の〈ホーミングジャベリン〉で片付いている。
ベルナベルには周囲の警戒と、俺たちで手に負えない魔物の処理を任せているが、出番はなかった。
防御力ばかりでなく全体のスペックが向上していることにより、攻撃力も上がっているボーンガーディアンは、かなり強力な手駒だ。
大盾によるシールドバッシュを叩きつければ魔物はバランスを崩して転倒すらするし、そこへ大剣を振り下ろし叩き潰すことで単独で魔物を屠ることすらできている。
「む、主よ、宝箱じゃ」
「本当だ」
見た目もしっかり宝箱だと分かる造形。
罠の発動で中身が破損したりする恐れがあるとベルナベルが言うので、〈精霊:使役〉で罠の解除を命じる。
鍵穴に入って罠を解除するのは、精霊という大きさのない存在にとってはお手の物らしい。
無事に罠の解除を終えたと知らせが来たので、それでも念のためにボーンガーディアンに開けさせた。
中身は水差しだった。
「ベルナベル、これはハズレか?」
「いや。ただの水差しではないな。ふむふむ……なるほど、これは無限に冷たい水が湧いて出る魔法の品じゃ」
「へえ? ……ってそれ凄く便利では?」
「うむ。大当たりの類じゃな」
冷やすという行為は、水属性の魔術に少しあるだけで普通は無理だ。
冷たい飲み水を無制限に得られるとなれば、使い道はいくらでもある。
もっとも飲用水の確保に〈アイテムボックス〉に入れておくのが良いだろう。
ちなみに本体と〈代理人〉の〈アイテムボックス〉は共用なので、中に入れておけば全員が使える。
便利な仕様だ。
さっそく水袋の中身を補充して、〈アイテムボックス〉に入れた。
ダンジョン探索はその後も順調だった。
階層が深くなるにつれて罠は悪辣に、魔物は強化されていったが、問題はまだ起きていない。
宝箱も稀だが発見できている。
というより、今いる階層の宝箱を〈精霊:使役〉で探させているから、取りこぼしはない。
金貨や魔法のアイテムなどが入手できている。
魔法のアイテムについては水差しのような便利アイテムではなく、武具の類なので俺たちには不用品だが。
〈闇市〉で高値で売るのがいいだろう。
ふとベルナベルが天井を見上げた。
「主よ、そろそろ夕方じゃ。この辺で切り上げようぞ」
「分かった」
〈隠れ家〉の扉を壁に設置して、俺たちは帰還した。
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