52.何故、こんな大惨事に。
なかなかに強烈な記憶を統合した俺は、こめかみを押さえながら今後の方針について考えをまとめていた。
昨晩から今朝にかけて、レベルはよっつ上昇していた。
つまりクラススキルをふたつ習得していたのである。
まずひとつ目は〈代理人Ⅱ〉。
これはふたり以上の代理人を作り出すスキルである。
そしてこのスキルを習得したと同時に、〈二重人格〉が〈多重人格〉に進化していた。
結論から言えば、複数の〈代理人〉を自由に生み出すことができるようになったのである。
そしてふたつ目は〈帰還〉。
その名の通り、どこからでも自宅認定された場所に即座に帰還できるというスキルだ。
ついでに聖痕が本体に宿ったことで、〈経験値20倍〉が〈経験値25倍〉に進化した。
実はローレアを籠絡しなくとも、〈代理人〉をひとり常に派遣すれば済む話だったのだ。
それが、何故、こんな大惨事に。
「ベルナベル、恨むぞ……」
俺はそう呟いてから、〈代理人〉を起動してオルタンスモーアの領主館の客間に送り帰した。
俺はベルナベルとローレアと旅に出た。
しかしすぐに最悪に最悪を重ねた作戦が決行された。
旅の足手まといになるローレアを〈牢獄〉に置き去りにして、彼女をいろいろな意味で慰める〈代理人〉をひとり付けた。
そうして、俺はベルナベルとふたりで旅を再開したのである。
「つまり、主は新しいチカラを得て、あの小娘を籠絡などする必要はなかった、と。そういうわけじゃな」
「まったくその通りだよ」
「そうかそうか。まあ良かったではないか。足手まといを連れて旅をするのは正直なところ、わしも想定外じゃったからな。調教が上手く行き過ぎたのはあの娘にも才能があったからだと思うのじゃが、その辺は――」
「ああ、もういい。その話はやめよう。とりあえず、次の目的地を決めるぞ」
俺は〈精霊:使役〉で次の聖痕のある方角を探索する。
近い、精霊が方角だけでなく距離も伝えてきた。
「よし、次の聖痕は近くにあるらしいぞ」
「ほう? では行くとするかの」
俺たちは聖痕のある方角へと歩き出した。
違和感を感じたのは、二度目の〈精霊:使役〉を使って方角と距離を測ったときのことだった。
……近づいている!?
距離が歩いてきたよりも近づいてきている。
つまり聖痕をもつ人類か魔物は、こちらへと向かっているということだ。
偶然なら良いが、もしもこれが向こうも聖痕を狙っての動きだとしたら?
「ベルナベル、魔力の探知はできるか? どうも聖痕の持ち主との距離が予定より縮まっている。そう遠くないうちに接触しそうだ」
「ふむ。……確かに、強い気配があるのう。数はむっつじゃ。魔物の群れではないな、これは」
「六人ってことは、冒険者か?」
「さあのう。わしはそこまで調べる術はない。だがそうだと想定して動くのが良かろう」
野盗じゃなく冒険者が今度の相手か。
悪人じゃないのに殺さなければならないのは少々、いやかなり、気が咎めた。
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 30
クラス 自宅警備員 レベル 49
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈聞き耳〉〈忍び足〉〈性豪〉
〈闇:召喚〉〈空間:防御〉〈時間:治癒〉〈創造:槍〉
〈精霊:使役〉〈通信販売〉〈新聞閲覧〉〈隠れ家〉〈相場〉
〈個人輸入〉〈匿名掲示板〉〈魔力眼〉〈代理人〉〈隠れ家Ⅱ〉
〈多重人格〉〈睡眠不要〉〈闇市〉〈ボーンナイト召喚〉〈別荘〉
〈夜の王〉〈隠れ里〉〈牢獄〉〈テイム〉〈防犯カメラ〉
〈ホットライン〉〈代理人Ⅱ〉〈帰還〉〈アイテムボックス〉
〈経験値25倍〉〈契約:ベルナベル〉〈隷属:青葉族〉
〈従魔:マーダーホーネット〉》
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