36.やっぱり俺の部下でもあるらしい。
魔族の集落に辿り着いた。
集落に名前はないが、森を切り開いて作った広場に幾つかのログハウスが建てられている。
元が森人族と悪魔の交配によって生まれた一族らしく、森を好んでここに集落を作ったのが百年前のことらしい。
以後、自らを青葉族と名付け、祖先の悪魔に仕えていたらしい。
しかし悪魔は魔王の元に下り、一族は放置された。
そして、今は強力な魔物に集落が襲われているとのことだった。
俺たちを出迎えに来たのはアーチャドという名で、村の戦士の取りまとめ役をしているとのことだった。
「柵も破り、戦える男衆も抵抗むなしく幾人も帰らぬ人となりました。もはや我らだけでは魔物を退けることはできません」
「ふむ。その魔物とやらは一体、なんの魔物じゃ?」
ベルナベルの問いに、アーチャドは首を横に振った。
「見たことのない魔物です。集落の長も知らないとのことで……」
「そうか。まあよい、何が出てもわしが居ればなんとでもなろう。なあ主よ」
「ん? ああ、ベルナベルなら楽勝だろ」
俺たちの関係に理解が追いついていないらしいアーチャドが問うた。
「あの、そちらの人間族は一体、どのような関係でいらっしゃるのでしょうか?」
「ん? ああ、コウセイはわしの主じゃ。わしを召喚せし偉大なる召喚術師じゃぞ。わしより敬え」
「はっ、これは失礼を!! コウセイ様、どうか我ら一族をよろしくお願いします!!」
いきなり俺に直角に腰を折るアーチャド。
そんなバキバキにかしこまらなくてもいいのになあ。
「コウセイだ。魔物はベルナベルがいればなんとでもなる。だから安心していろよ」
「はっ!!」
ここでのヒエラルキーは、俺、ベルナベル、青葉族という順番になったらしい。
あれ、このままだともしかして魔族の部下って俺の部下でもあるってことになるのか?
そんなことを考えていたとき、集落の物見櫓にある鐘が激しく打ち鳴らされた。
「魔物だ!! 魔物が来るぞー!!」
外に出て俺たちを迎えていた青葉族がたちが恐怖に震え上がった。
「女子供たちは室内に避難しろ!! 男たちは弓を持て!!」
アーチャドが声を張り上げる。
「コウセイ様、ベルナベル様、なにとぞお力をお貸しください」
「うむ、もちろんじゃ。主も戦ってみるか?」
「いや、俺は見学しているよ」
青葉族の男たちはエルフの子孫らしく細身だが屈強で、とても俺より強そうだ。
そんな男たちが束になっても勝てない魔物に、俺が勝てるはずない。
「……む、来たのう。むむむ? おい主よ、もしやあれは聖痕ではないか?」
「え? あ、ホントだ」
俺が〈魔力眼〉で見ると、確かに魔物の身体に文字が刻まれており、そこから大量の魔力が溢れ出ている。
魔物の形状は前傾姿勢のティラノサウルスのような形をしている。
とても強そうだ。
青葉族の男たちが弓を構える。
しかしそれは無駄になった。
ベルナベルが指をパチンと鳴らした途端、魔物の首が切断されて落ちたからだ。
青葉族の男たちは何が起きたか分からず、呆然としている。
隣のアーチャドもポカンと口を開けて呆けていた。
「終わりじゃな」
「ああ。ご苦労さま、ベルナベル」
聖痕がふわふわと光を放ちながら魔物から剥離して、俺のもとへ飛来してきた。
本体に戻ったら、またスキルの強化ができるのかな?
青葉族の男たちは、魔物が死んだことにようやく思考が追いついてきたらしく、各々で歓声を上げた。
アーチャドも興奮した様子で、俺たちに感謝を述べる。
「こ、こんなにあっさりと……!! これで約定は果たされました。どうか、我ら青葉族の忠誠をコウセイ様とベルナベル様に捧げます!!」
あ、やっぱり俺の部下でもあるらしい。
ベルナベルは満足げに頷く。
「うむ。そなたらの約定、確かに果たされた。ここに青葉族はコウセイに隷属する契約を結ぶ!!」
「うん? ちょっと待て、ベルナベル。何をしようと――」
「魔の血筋の者たち。青の葉の一族。汝らの生死はコウセイのもの。一族累々、隷属したまえ!」
アーチャドを筆頭に、青葉族の男たちは全員が俺に向けてひれ伏した。
《青葉族の集落が自宅として認定されました》
……は?
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 30
クラス 自宅警備員 レベル 29
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈聞き耳〉〈忍び足〉〈性豪〉
〈闇:召喚〉〈空間:防御〉〈時間:治癒〉〈創造:槍〉
〈精霊:使役〉〈通信販売〉〈新聞閲覧〉〈隠れ家〉〈相場〉
〈個人輸入〉〈匿名掲示板〉〈魔力眼〉〈代理人〉〈隠れ家Ⅱ〉
〈二重人格〉〈睡眠不要〉〈闇市〉〈写し技Ⅳ〉〈アイテムボックス〉
〈経験値10倍〉〈契約:ベルナベル〉〈隷属:青葉族〉》
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