33.今宵は楽しい夜になりそうだな。
夕刻、〈代理人〉を解除して〈匿名掲示板〉の管理をしていると、ホロウィンドウがポップアップしてきた。
《自宅警備員がレベルアップしました》
《〈闇市〉のクラススキルを習得しました》
《全地球人に〈闇市〉のスキルを与えます》
レベルアップのペースが明らかに早い。
さすが〈経験値10倍〉だ、宿に引きこもっているだけでどんどんレベルが上昇していく。
とはいえ今回のスキルも不穏だな。
〈匿名掲示板〉のように全地球人に付与されているし。
何ができるのだろうか?
早速〈闇市〉を起動する。
すると見たことのあるユーザーインターフェースが現れた。
これは……フリマアプリか!!
匿名で品物を売買できるオンラインフリーマーケットのようなものだ。
多分〈通信販売〉や〈個人輸入〉のように、通貨を消費して即座に〈アイテムボックス〉に品物が届くのだろう。
管理者である俺にはもちろん、売買している地球人の名前が筒抜けである。
それどころか、売買額の一部を手数料として徴収できる仕組みまである。
……これは放置していても金が入ってくる仕組みだな。
〈個人輸入〉を駆使して積極的に売買に介入することも考えたが、地球人たちは色々な街に散っている。
各地の特産物を高値で売りつけるやり方は無理があるだろう。
というかそういうことを、他の地球人にやらせた上で、俺は手数料を徴収するのが美味しいと思われる。
早速〈匿名掲示板〉に「闇市スレ Part1」を建ててやる。
〈闇市〉自体にはコミュニケーション要素はないらしい。
値引き交渉など煩雑になるから、省かれたのだろうな。
しかし意図せずにこの世界の物流を加速してしまった気がする。
商人系のクラスの持ち主はこの〈闇市〉を有効に活用して、せいぜい貿易で儲けて経験値を稼ぐといい。
夕食後、闇市スレは急速に伸びていた。
当然だ、〈匿名掲示板〉以来の全地球人に付与されるスキルなのだ、盛り上がらないわけがない。
俺は書き込みに目を通しながら、〈闇市〉に出品されている品物と値段を確認する。
なかなか強気の値段設定だが、遠方から購入するならむしろ安いくらいだ。
貿易に必要な運送費と時間を無視できるのだから、ここぞとばかりに特産品を売りまくっている地球人がいる。
「なにやら楽しそうじゃな、主よ」
「うん? ああ、新しいスキルがまた面白くてね」
「変わった魔法じゃな。ところで今夜は〈淫夢〉で精を集めてくるつもりじゃが、もう行っていいか?」
「ああ、いってらっしゃい」
「うむ。さあて、今日は誰を毒牙にかけるか……」
悪魔モードになったベルナベルがシュン、と姿を消す。
さあ、俺は〈匿名掲示板〉の管理だ。
今宵は楽しい夜になりそうだな。
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 30
クラス 自宅警備員 レベル 27
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈聞き耳〉〈忍び足〉〈性豪〉
〈闇:召喚〉〈空間:防御〉〈時間:治癒〉〈創造:槍〉
〈精霊:使役〉〈通信販売〉〈新聞閲覧〉〈隠れ家〉〈相場〉
〈個人輸入〉〈匿名掲示板〉〈魔力眼〉〈代理人〉〈隠れ家Ⅱ〉
〈二重人格〉〈睡眠不要〉〈闇市〉〈アイテムボックス〉
〈経験値10倍〉〈契約:ベルナベル〉》
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