22.これが本来のベルナベルの姿か?
〈隠れ家〉から出て、俺はベッドに腰掛けながら〈匿名掲示板〉の管理と〈新聞閲覧〉をしていた。
俺の背中にくっついてベルナベルが〈匿名掲示板〉と〈新聞閲覧〉のホロウィンドウを覗き込んでいる。
他人には不可視なはずなのだが、当たり前のように視えるらしい。
「興味深いスキルじゃ」
「面白いだろ? こんなのばっかりだよ、俺のスキルは」
スレが埋まっていたので、急いで新しいスレを建てた。
スレ建て代行には「早くしろ」との催促のコメントが幾つかついていた。
せめて次スレが建つまで、減速するということを覚えてもらいたい。
夕食後、俺は再び〈匿名掲示板〉の管理と閲覧に戻った。
ベルナベルは退屈そうにそんな俺を眺めている。
「のう、主よ。わしは普通の食事もできるが、一番に欲しいのは精なのじゃ」
「精? ああ、エロい方のエネルギーか?」
「まあその通りじゃが。のう、主よ。主ひとりでは身がもつまい? わしは折角、表の世界に来たのでな。思う様、男を漁りたいのじゃ」
「…………」
「そんな顔をするでない。わしが肌を重ねるのは主だけじゃ」
「は? それじゃどうやって精を集めるんだ?」
「〈淫夢〉と〈忘却〉を使う。淫らな夢を見せて精を吸い上げ、その後にその夢のことを忘れさせるのじゃ。わしは本来、そうやって精を吸い上げるものでな。実は肌を重ねるのは効率が悪い」
「じゃあなんで俺の童貞を奪ったし」
「主は別じゃ。わしと契約の繋がりもあるゆえ、特別に美味に感じられる。だから直接、精を吸い上げたい。じゃが他の有象無象の男からなら、〈淫夢〉経由で十分じゃ」
「ふうん。まあ〈忘却〉で忘れるっていうんなら問題はないんだろうな」
「もちろんじゃ」
「分かった。昼みたいな激しいのは俺もキツいし、〈淫夢〉で精を集めてきてもいいぞ」
「おお! 話が分かる主じゃ。よし、では早速、行ってくる」
スラリ、とベルナベルの背中からコウモリのような翼が生える。
先端が菱形に尖った尻尾も生えてきた。
頭部には二本のねじ曲がった大きな角が生えてくる。
これが本来のベルナベルの姿か?
「ぬふふ……では行ってくる。朝には帰るでの」
「ん、ああ」
シュン、とベルナベルはその場から消えた。
飛ぶでもないのに翼はなんのためにあるのやら。
疑問に思いながら〈匿名掲示板〉を弄っていると、ホロウィンドウがポップアップしてきた。
《自宅警備員がレベルアップしました》
《〈隠れ家Ⅱ〉のクラススキルを習得しました》
十九レベルになった。
どうやらもうひと部屋、〈隠れ家〉を作成するスキルらしい。
今のところ使い道は思い浮かばない。
……ん、いや待て。
この〈隠れ家Ⅱ〉は〈隠れ家〉の中にしか作れないようだ。
その上で〈隠れ家Ⅱ〉には扉がふたつあり、もう片方は自由な場所に開くことができる。
つまり〈隠れ家Ⅱ〉を外で使うと、一瞬にして〈隠れ家〉へと戻って来れる、という使い方ができそうだ。
……いや、そんな目立つ帰り方をしないと思うが。
しかし覚えておいて損はない。
最近は〈代理人〉で外に出ることも多いからな。
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 30
クラス 自宅警備員 レベル 19
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈聞き耳〉〈忍び足〉〈性豪〉
〈闇:召喚〉〈通信販売〉〈新聞閲覧〉〈隠れ家〉〈相場〉
〈個人輸入〉〈匿名掲示板〉〈魔力眼〉〈代理人〉〈隠れ家Ⅱ〉
〈アイテムボックス〉〈経験値5倍〉〈契約:ベルナベル〉》
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