164.なんか凄く悪そうなスキルが来たぞ?
《自宅警備員がレベルアップしました》
《〈記憶奪取〉のクラススキルを習得しました》
…………なんか凄く悪そうなスキルが来たぞ?
「なあベルナベル、新しいスキルなんだが、これどんなだ?」
「む? うむ……これは……」
ベルナベルが目を細めて「また主は凄まじいスキルを得たようじゃ」と言った。
「文字通り、対象の記憶を奪うスキルじゃな。奪える記憶は割りと自由が効く」
「うへえ、文字通りか。自由が効くってどのくらいだ?」
「例えば一定期間の記憶をまるごと奪えるし、特定人物に関する記憶だけを奪うこともできる。主にとっては後者の使い方がありがたいかもしれぬな」
「へえ。自分についての記憶を奪えば、コウセイが複数いたりするのも分からなくなったりするのか」
「その場合、誰かと接触していたが、誰だったか顔も名前も思い出せない、という不思議な状態になる。……というかだな」
「ん?」
「最も危険な使い方は、対象の技能に関する記憶を奪うことじゃ」
「技能に関する、記憶だと……?」
「ありていに言えば、対象がスキルにまで昇華している技能に関する記憶ならば、主がそのスキルを奪うことになるじゃろうな」
「なんだそれ、凄く迷惑なスキルじゃねえか。いや敵対する相手からスキルを根こそぎ奪ったりできるか? ……しかし邪悪だなこれ」
「制限がひとつだけある。相手の額に触れることじゃ」
「割りと制限になってない気がするのは気のせいか?」
「奪う記憶が多ければ多いほど、額に触れる時間は長い。そして当然のことながら人類に近い種族からしか奪えぬ」
「植物とか額ないしな。魔物も駄目そうだな」
「……というわけで、凶悪極まりないスキルじゃ」
アカリリスが俺の胸に頬をすりつけながら「主様は凄い。誇るべき」と言った。
「〈代理人〉が〈記憶奪取〉を使った後、記憶を統合すれば主様にもその記憶が宿る。主様は積極的に〈代理人〉たちに〈記憶奪取〉を使わせるべき」
「いや、確かにそうか。使うのは〈代理人〉でもいいわけか……。だけど乱発はできないな。他人の記憶を奪えば、最悪ソイツの生活が破綻しかねないとかリスクがあるわけで」
「罪人ならどうなってもいい。日常生活以外の記憶をすべて奪うべき」
「ん?」
「日常生活以外の記憶を失った罪人は、生ける屍、人形と化す。従順な犯罪奴隷となるから、罰としてはこれ以上ない。主様はここの王国から罪人を一時的に引き取り、〈記憶奪取〉して送り返す、そういう仕事を受注すべき」
「……っ!? アカリリスお前、意外と容赦ないな。でも面白い案だ。魔王にやらせてみるかな」
ベルナベルがコツン、とアカリリスの頭に拳を押し当てた。
「不用意すぎる。その場合、不要な記憶を奪取して死ぬ〈代理人〉を用意しておいた方が良いぞ。重罪人の記憶など主に統合していけば、きっと主の人格が歪んでいくじゃろう」
「確かに。主様の人格が他人ごときに捻じ曲げられるのは避けるべき」
「なるほどな。俺も犯罪者の記憶なんて欲しくはない。有用なスキルの記憶なら欲しいけどな」
俺は早速、〈ホットライン〉で魔王に犯罪者の更生プランとして王国に進言してみることを提案した。
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 20
クラス 自宅警備員 レベル 107
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈念話〉〈槍聖〉〈騎乗〉〈暗視〉
〈気配察知〉〈危険感知〉〈気配遮断〉〈魔力隠蔽〉〈精密作業〉
〈性豪〉〈料理〉〈醸造〉〈錬金術〉〈農耕〉〈礼儀作法〉〈審美眼〉
〈酒豪〉〈感覚遮断〉〈オートマッピング〉〈マナ集積〉〈呪破〉
〈福音の祈り〉〈新緑の魔手〉〈麻痺眼〉〈未来視〉〈直感〉
〈霊馬召喚〉〈闇:召喚Ⅱ〉〈空間:防御〉〈時間:治癒〉
〈創造:槍〉〈精霊:使役〉〈同時発動〉〈高速詠唱〉〈通信販売〉
〈新聞閲覧〉〈相場〉〈個人輸入〉〈魔力眼〉〈多重人格〉
〈睡眠不要〉〈ボーンガーディアン召喚〉〈別荘〉〈夜の王〉
〈隠れ里〉〈牢獄〉〈テイム〉〈監視カメラ〉〈ホットライン〉
〈帰還〉〈百面相〉〈領域支配〉〈隠れ家Ⅲ〉〈代理人Ⅲ〉
〈眷属強化〉〈ダンジョンマスター〉〈浮遊島〉〈城塞〉
〈リサイクル〉〈永続召喚〉〈地下迷宮〉〈天運〉
〈ボーンスナイパー召喚〉〈地脈操作〉〈霊脈操作〉〈全異常無効〉
〈王威〉〈寄生〉〈天冥眼〉〈王道楽土〉〈記憶奪取〉
〈アイテムボックス〉〈経験値100倍〉〈契約:ベルナベル〉
〈契約:アカリリス〉〈隷属:青葉族〉〈隷属:黒影族〉
〈隷属:魔王軍〉〈従魔:マーダーホーネット〉
〈従魔:レッドキャトル〉〈従魔:アイスドラゴン〉》