16.ご冥福をお祈りします。
昨晩の夕食どきにはロクなスキルがなかったので、〈写し技Ⅱ〉は温存した。
今日は強盗を犯したマサキの公開処刑の日だ。
だからなんだというわけじゃないが、ご冥福をお祈りします。
朝食どきに〈写し技Ⅱ〉を起動する。
《現在の〈写し技Ⅱ〉の対象は以下の通りです。
〈料理〉〈給仕〉〈鋭敏味覚〉〈鋼の胃袋〉〈魔力眼〉》
……うん?
見慣れないスキルだな、〈魔力眼〉。
商売系のスキルが欲しいところだが、魔法系というのも気になっている。
以前〈通信販売〉で見かけた『魔法の基礎』だが、この街の在庫はなくなっている。
しかし他の街にはまだ在庫があるのだ。
つまり〈個人輸入〉ならば入手が可能なのである。
これは入手しておくべきか?
多分、ここを逃すと滅多に入手できるスキルじゃないだろう。
たまたま誰かが発動しているスキルだろうし。
よし、これに決めた!!
《警告。〈写し技Ⅱ〉を〈魔力眼〉に変化させますか?》
よし、〈魔力眼〉を入手した。
早速、使ってみよう。
うお、これは面白い。
魔力を可視化することができるらしい。
魔法使いっぽい杖を持った奴はやっぱり魔力量が多いな。
そうでもない奴も魔力量が結構あったりするが、この辺は宝の持ち腐れか?
試しに自分も見てみると、結構あった。
というか魔法使い並みに魔力量がある気がするぞ。
伊達に経験値増幅スキルでレベルアップしていないからな、基礎ステータスはきっと高いのだ。
これは魔法習得が楽しみになってきた。
〈新聞閲覧〉しながら〈匿名掲示板〉の管理をしていると、ドアがノックされる。
「コウセイさん、またお客さんですよ。昨日の子です」
「分かった。今、降りていく」
パタパタとクロエの足音が遠ざかっていく。
エミコか、何の用事だろう?
俺が食堂に降りてくると、エミコが肩で息をしながら顔面蒼白で待っていた。
ただならぬ様子に驚くが、年長者として落ち着き払った態度で接するべきだろう。
こちらまで慌てる理由もないしね。
「エミコ、どうした?」
「大変なんです、コウセイさん! マサキさんが……広場で処刑されちゃいそうなんです!」
「マサキ……日本人か?」
「はい。ほとんど話したことないですけど、日本人に間違いありません」
「処刑ってなんでまた?」
「それが……どうやら強盗殺人の容疑がかかっているらしくって。でも裁判もなしにいきなり死刑だなんて、おかしくないですか?」
「いや、どうかな。この世界、日本と比べて遅れているように思えるから。そういうこともあるかもしれない」
「そんな……」
「多分だけど、マサキが強盗殺人だっけ? それをやらかしたと領主か騎士団に判断されたんだろうな。そうなったら、どうにもならない」
「でも、また日本人が……」
「少し話しをしたんだろ。マサキはどういう奴だった?」
「……歳が同じだって、奇遇だねって。冒険者ギルドで話をしたくらいです。だからどういう人かまでは分かりません」
「そうか。助けようなんて変な気を起こすなよ。君が領主に逆らって処刑されるなんて話は聞きたくない」
「……っ、はい」
エミコは悄然としながら立ち去っていった。
俺と会話をして少しは落ち着いただろうか?
……おっと、そういえばエミコに〈魔力眼〉を使い忘れたな。
また今度の機会があれば試してみよう。
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 30
クラス 自宅警備員 レベル 15
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈聞き耳〉〈忍び足〉〈通信販売〉
〈新聞閲覧〉〈隠れ家〉〈相場〉〈個人輸入〉〈匿名掲示板〉
〈魔力眼〉〈アイテムボックス〉〈経験値5倍〉》
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