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157.神の領域……?

 大迷宮、第百二十一階層。

 今日からアカリリスが加わったことで、魔物との戦闘時間は大きく短縮された。


 まずアカリリスの戦闘スタイルは武器戦闘、特に近接戦闘に大きな適性があるらしく、手加減していても拳の一発でこの階層の魔物に風穴を空ける。

 戦闘開始とともに空中を駆け上がり、巨大な魔物の頭部に一発、それで一体は死ぬ。

 スピード、パワー、いずれもベルナベルとは雲泥の差があるのだ。

 ボーンスナイパーが開幕に射撃する間もなく、次の獲物に向かうアカリリス。

 空中を縦横無尽に駆け巡り、パンチとキックで魔物を粉砕していくアカリリスによって、俺たちの出番は完全に失われていた。

 ベルナベルですら、魔物に接敵したときには既にアカリリスによって殺された後、ということが何度も起こる。

 ここに来てようやく、俺たちはベルナベルが魔法使い系の悪魔だと認識することができるようになったのだ。


「アカリリス、お前の強さは十分に分かった。分かったから、少し縛りを設けよう」


「疑問。縛りとはなにか?」


「魔物との戦闘で、まず俺たちのボーンスナイパーが一斉射撃する。その後にアカリリスが攻撃に出ていい。ただしアカリリスは特別な指示がない限り、一回の戦闘で倒していい魔物は一体だけとする」


「……不可解。理由を述べるべき」


「アカリリスが魔物をすべて瞬殺すると、俺たちの実戦訓練にならないからだ。ベルナベルも魔術を使わずに戦いを楽しむためにここへ来ている。ああそうだな、ベルナベルが魔術を縛っているんだから、アカリリスも倒す魔物は一体だけという縛りを受け入れて欲しい」


「理解。主様の実戦訓練のために、私は一体だけ魔物を間引く」


「そうだ、よろしく頼むぞ」


 コクリと頷くアカリリス。

 ベルナベルもなかなか戦闘に参加できずに不満げだったから、これでいいだろう。


 しかし過剰戦力にも程がある。

 ベルナベルとアカリリスのふたりが揃っていると、大迷宮の難易度がだだ下がりだ。


 アカリリスは俺の言う通りにしてくれた。

 まずボーンスナイパーたちの一斉射撃。

 クロスボウの一撃はかなりの威力であり、装填に時間がかかることを考えても戦力として十分だと判断できるものだった。

 人類相手に向けて放てば、よほどの重装備でなければ数人ほど貫通するだろう。

 そしてアカリリスが一体を瞬殺する。

 襲いかかってくる魔物の中でも一番強そうな奴を狙っているが、ちょうどいい難易度調整だ。

 そしてベルナベルが接敵して爪による戦闘を開始する。

 俺たちも〈創造:槍〉による魔術攻撃で魔物を駆逐していく。

 だいたいそういう流れになった。


 しかしベルナベルが本気を出せば〈空間:攻撃〉で魔物を一掃できるのだろうし、アカリリスが本気を出せばまだ見たことないが何でも焼き切る魔剣で魔物を一掃するのだろう。


「ちなみにアカリリス、仮に相手が〈火:無効〉の魔術で防御してきた場合は、アカリリスの魔剣はどうなるんだ?」


「無意味。私の魔剣は耐性や無効の魔法など歯牙にもかけない。火炎という魔法の枠の中にすらない」


「炎の魔剣なのに、火炎の魔法じゃないのか?」


「そう。敢えて言うなら神の領域にあると言うべき」


「神の領域……?」


 俺たち〈代理人〉が首を傾げていると、ベルナベルが面倒くさそうに説明してくれる。


「つまりじゃな、神属性というものがあると思っておけば良い。神属性には神属性でしか対抗できぬのじゃ。すべての魔法の上位にあるもので、どんな色や形や形状であれ、下位の魔法を無視するというわけじゃな」


「へえ。ということはベルナベルも神属性の魔法を持っているのか?」


「当然じゃ。なければ天使と戦うことなぞできぬ」


「上には上がいるとは思っているが、想像もつかない世界だな」


「……主ならいずれは届くじゃろ。そう思っておるぞ」


「マジで? 俺たちも神属性を扱えるようになるのか?」


「うむ」


 アカリリスがベルナベルを半目で見やる。


「ベルナベルは言葉が足りていない。手段を選ばなければ、主はもう神属性とやらを扱える」


「え、どうやって?」


「ベルナベルに〈寄生〉して、魔力を底上げ。それから〈創造:槍〉で神属性を付与したものを撃ち出すだけ」


「あー……つまりまだ俺たちの独力では神属性には足りないってことか」


 ベルナベルの魔力の10%はかなり大きいぞ。

 しかしそうなのか、魔力さえあれば神属性を付与した〈創造:槍〉を放てる時が来るのか。


「そうじゃな。わしに〈寄生〉すれば魔力は足りるようになるが……そもそも大迷宮は神属性が必要な戦いじゃなかろう? 主の〈ペネトレイトジャベリン〉で十分じゃ」


「まあな。でも魔力を鍛えればいずれ届く……そのことは覚えておくよ」


 俺たちは宝箱を目指して歩き出した。

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