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154.性別が両性具有で、年齢が不明だと?

 俺は〈追加召喚〉のスキルオーブを使用した。


《〈追加召喚〉のスキルを習得しました》

《〈闇:召喚〉と〈追加召喚〉を統合します。〈闇:召喚Ⅱ〉を習得しました》


 さらに高位のマナポーションで魔力回復をしておく。

 全快になったところで多少、腹がタプタプしているが、召喚に支障はないだろう。


 しばらくすると、ベルナベルが〈隠れ家〉の一室から出てきた。


「魔法陣が完成したぞ。乾燥と定着をさせておいたから今から使えるはずじゃ」


「ありがとう。じゃあ早速、召喚するよ」


「見学してよいかの?」


「もちろんだ」


 俺たちは魔法陣のある部屋に入った。

 〈アイテムボックス〉からブラックダイヤモンドを取り出し、中心に置く。


「そうだ、呪文。長かったよなあれ。覚えてないぞ」


「メモに書き出そう。書くものを用意せよ」


「頼む」


 紙にサラサラと呪文を書くベルナベル。

 〈風:乾燥〉の魔術でインクを乾かしてから、俺に渡してきた。


 ああ、この呪文だ、懐かしいな。


「よし、いくぞ」


 ベルナベルは壁際に下がる。

 俺はメモに書かれた呪文を高らかに詠唱した。


「いと暗き世界より生まれしものよ。汝、夜を旅する者。昼の敵。闇の朋友にして同伴者よ。月と星の瞬きより祝福されし黒きもの。――――出よ!」


 魔力が吸い上げられる。

 駄目だ、もっと持っていけ!!

 俺は召喚陣とダイヤモンドに魔力を勢いよく注いでいく。

 空っぽになる勢いで魔力を叩き込むと、魔法陣が真っ赤に輝き、ブラックダイヤモンドが黒い光を放つ。


 ダイヤモンドから黒い霧のようなものが噴出し、魔法陣は直視しがたいほどの光量で輝きを強める。

 ベルナベルが身を固くするのが視界の端に移るが、俺は〈アイテムボックス〉内の不用品をひとつ〈リサイクル〉して魔力を回復した。

 グ、と魔力がさらに引っ張られる。

 大食らいめ、まだ欲しいのか?!

 いいぜ、くれてやる!!


「悪い、ベルナベル!!」


「――?! よかろう、使え!!」


 俺はベルナベルに〈寄生〉して魔力を高めた。


 ゴウ、と霧が晴れる。

 そこにいたのは、黒い翼を持った真っ赤なドレスを身にまとった少女だった。

 赤毛のショートカットがよく似合っていて可愛らしい。


「は、はぁ、はぁ――」


 肺が潰れるかと思った。

 最後の最後に魔力をありったけ持っていきやがって。

 ベルナベルに〈寄生〉しなかったら危なかったぞ。


 〈アイテムボックス〉からマナポーションを取り出して煽る。

 そして〈寄生〉を解除した。


「――こやつはまさか」


 〈魔力眼〉で見れば、ベルナベルにも匹敵しうる濃密な魔力を纏っている。

 〈簡易人物鑑定〉も試した。


《名前 アカリリス 種族 堕天使(フォールンエンジェル) 性別 両性具有 年齢 不明》


 性別が両性具有で、年齢が不明だと?

 いや種族からして堕天使(フォールンエンジェル)とは……。

 こいつはとんでもないのを引き当てたんじゃないか?


 ベルナベルの方を見ると、珍しくポカンと口を開けて固まっていた。

 アカリリスの方に視線を戻すと、ベルナベルを見ていた。

 少女の眉が怪訝に歪められる。


「“淫蕩の”ベルナベル?」


「“華炎の天使”か。しかしその翼は……そなた堕天したのか?」


 どうやら知り合いらしい。


「今は“華炎の天使”じゃない。“災華の”アカリリスと呼ぶべき」


「災華のう……なるほど。確かに今はそれがお似合いじゃろ」


「ふたりは知り合いなのか?」


 俺は問うた。


「かつて天使と悪魔が戦ったことがある。五百年ほど前のことじゃ。そこでわしは何体もの天使を八つ裂きにした」


「ベルナベルは話を盛り過ぎ。事実を脚色すべきではない。実際に死んだ天使はいない」


「八つ裂きにしたが、創世の女神が蘇らせただけじゃろ。殺したなどとは言っておらぬぞ」


「誤解を招く言い方はすべきじゃない」


「そのときの戦争で戦った相手のひとりが“華炎の天使”じゃ。しかし堕天したところを見ると、創世の女神に疑問を持ったのじゃろう」


「疑問?」


 俺が首を傾げると、アカリリスがポツリと呟く。


「創世の女神はすべてにおいて正しい。それがすべての天使の認識。でも……私は疑問を持ってしまった。魔神へと戦いを挑み、傷つく仲間たちを見て、蘇生される仲間たちを見て、本当に正しいのか、と。思った瞬間に堕天が始まった」


「そんなことで……疑問を持つことすら許されないのか」


「疑問は持つべきだった。創世の女神にも魔神にも正義などありはしない。ただ互いのチカラを奪い合うだけの戦い。私利私欲にまみれた醜い争い。私は完全に堕天して、――魔界に紛れ込んで過ごしていた」


「魔神の庇護下にあるのか?」


「今はどちらの神の眷属ではないし、あるべきではないと考える」


「そうか」


 聖痕収集の最後だって地球人同士を殺し合わせた創世の女神だ。

 性格が悪いのは分かっていたことだが、眷属の天使に裏切り者さえ出るとはつくづく人徳に欠ける神様だな。


「ベルナベル、アカリリスはどのくらい強いんだ?」


「わしでも殺し損ねる程度には強いぞ」


「……ベルナベルがか」


「うむ。堕天してステータスがどうなったか気になって覗いておったが、スペックは大差ないのう。むしろ今の方が強いまであるぞ」


「それは凄いな」


「今は主の手駒じゃ。喜ぶべきじゃな。こんな特級の手札が二枚もあることを」


「ああ、そうだな」


 アカリリスに視線を戻す。

 目が合った。


「私にはベルナベルのような目はないけど、すべてを焼き尽くす炎の魔剣がある。戦いには私を使うべき」


「分かった。よろしく頼むよアカリリス」


「よろしく。主様」


 ベルナベルに匹敵する堕天使か。

 これは凄い手駒を入手してしまったようだな。

《名前 コウセイ 種族 人間族(ヒューマン) 性別 男 年齢 20

 クラス 自宅警備員 レベル 103

 スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈念話〉〈槍聖〉〈暗視〉

     〈気配察知〉〈危険感知〉〈気配遮断〉〈魔力隠蔽〉〈精密作業〉

     〈性豪〉〈料理〉〈醸造〉〈錬金術〉〈農耕〉〈礼儀作法〉〈審美眼〉

     〈酒豪〉〈感覚遮断〉〈オートマッピング〉〈呪破〉〈福音の祈り〉

     〈新緑の魔手〉〈麻痺眼〉〈闇:召喚Ⅱ〉〈空間:防御〉

     〈時間:治癒〉〈創造:槍〉〈精霊:使役〉〈同時発動〉〈高速詠唱〉

     〈通信販売〉〈新聞閲覧〉〈相場〉〈個人輸入〉〈魔力眼〉

     〈多重人格〉〈睡眠不要〉〈ボーンガーディアン召喚〉〈別荘〉

     〈夜の王〉〈隠れ里〉〈牢獄〉〈テイム〉〈監視カメラ〉

     〈ホットライン〉〈帰還〉〈百面相〉〈領域支配〉〈隠れ家Ⅲ〉

     〈代理人Ⅲ〉〈眷属強化〉〈ダンジョンマスター〉〈浮遊島〉〈城塞〉

     〈リサイクル〉〈永続召喚〉〈地下迷宮〉〈天運〉

     〈ボーンアーチャー召喚〉〈地脈操作〉〈霊脈操作〉〈全異常無効〉

     〈王威〉〈寄生〉〈天冥眼〉〈王道楽土〉〈アイテムボックス〉

     〈経験値100倍〉〈契約:ベルナベル〉〈契約:アカリリス〉

     〈隷属:青葉族〉〈隷属:黒影族〉〈隷属:魔王軍〉

     〈従魔:マーダーホーネット〉〈従魔:レッドキャトル〉

     〈従魔:アイスドラゴン〉》

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