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15.さて、誰が来た?

《〈忍び足〉のスキルを習得しました》


 部屋を歩き回ること小一時間。

 色々と試して足音を殺して動いていたら、ようやく〈忍び足〉を習得できた。


《自宅警備員がレベルアップしました》

《〈写し技Ⅱ〉のクラススキルを習得しました》


 十五レベルになった。

 スキルコピーの〈写し技〉が再びやって来た。

 超有能スキル〈相場〉を得たときのことを考えれば、やはり食事どき、人の多いときに使うべきだろう。


 〈匿名掲示板〉の管理をしつつ、〈新聞閲覧〉で新聞を読む。

 本日の一面記事は以前、旅商人の一家を惨殺した下手人が捕まり処刑されるとの一報だった。


「昨日、旅商人の一家を惨殺して金品を強奪した凶悪犯マサキ(人間族(ヒューマン)/男/16歳)が騎士団によって捕らえられた。〈アイテムボックス〉に仕舞われている奪われた金品を取り戻すのは困難であり、取り戻すことはできなかったが、公開処刑となることが決まった。処刑は明日の正午、広場にて行われる」


 同郷の者が死ぬところを見に行く趣味はない。

 明後日、訃報が出たら掲示板に書き込むか。



 〈匿名掲示板〉を眺めていると、ドアがノックされた。


「コウセイさん、お客さんがみえてますよ」


 女将の娘、クロエのようだ。

 俺に客人とは連日、珍しいこともあるものだ。


「分かった。食堂に降りていけばいいか?」


「はい。お願いします」


 パタパタと足音が離れていく。

 さて、誰が来た?



 食堂に降りると、ひとりの女の子が待っていた。

 新聞の写真で見たことがある、エミコだ。


「あ、初めまして。私、エミコといいます。同じ日本人がいるってタクミさんから聞いたので……訪ねてきました」


「そうか。コウセイだ。それで、何か用か?」


「いえ、用事というほどのこともないんですけど。ちょっと気になって……」


「何が気になった?」


「ええと。街から出ずに過ごしているんですよね? レベルも一って聞いているんですけど」


「まあな。戦うのは性分じゃない」


「そうですか。もし気が変わったら、私に声をかけてください。私、こう見えて結構、強いんです。もう、同じ日本人が死ぬのは嫌なんです」


「ん? それはひとり目の死者のことか?」


「はい。カオルっていうソロで冒険に出て、亡くなった人がいるんです。ちょっとしか話をしていないんですけど……」


「そうか。ひとり目の死者はこの街にいたのか。知らなかったよ」


 テキトーに話を合わせながら、俺は試しに〈写し技Ⅱ〉を起動してみた。


《現在の〈写し技Ⅱ〉の対象は以下の通りです。

 〈料理〉〈給仕〉〈獣人語〉〈危険感知〉》


 ふむ、キッチンの奥で女将さんと店主が獣人語で話をしているらしい。

 あとは多分、この〈危険感知〉はエミコのだろうな。

 やっぱり俺に向いたものはない。

 食事どきを大人しく待つか。


「ところでコウセイさんは日本へ戻りたくないんですか?」


 エミコが問うてきた。


「ああ。実は日本にいた頃は病気でね。でもこの世界に来たら治っていたんだ。そういうこともあって、元の世界に未練はないんだよ」


「え、そんなことが……!?」


「ああ。だから聖痕も集める気はない」


「そう、だったんですね」


「エミコは帰りたいのか?」


「はい。……でも、掲示板ではもう既に入手した人がいるらしいんですよね」


「そうだな」


「その人から、殺してでも奪い取ろうなんて、思えません……」


「そうか……」


 まあ普通はそうだろう。

 その後もとりとめのない話をして、エミコは立ち去っていった。


《名前 コウセイ 種族 人間族(ヒューマン) 性別 男 年齢 30

 クラス 自宅警備員 レベル 15

 スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈聞き耳〉〈忍び足〉〈通信販売〉

     〈新聞閲覧〉〈隠れ家〉〈相場〉〈個人輸入〉〈匿名掲示板〉

     〈写し技Ⅱ〉〈アイテムボックス〉〈経験値5倍〉》


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