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122.目立つのはやはりベルナベルか。

 大迷宮の街エルネロットから肝心の大迷宮へ行くには、竜の谷と呼ばれる危険地帯を通過しなければならないらしい。

 竜の谷はその名の通り、空をドラゴンが行き交う場所である。

 ドラゴンに見つからないように気配を殺して物陰に隠れながら進んだり、一気に大迷宮を目指して駆け抜けてドラゴンに追い回されたり、まあともかくここで死ぬ程度の奴らでは大迷宮に潜る資格はないという一種の試練のようなものらしい。


 幸いにして俺たちは〈気配遮断〉を持っているし、ベルナベルもドラゴンに察知されない程度の芸当は余裕らしいので、隠れてコソコソ進む方針で大迷宮に向かうことにした。


 竜の谷には大きな岩陰や樹木がそこかしこにあり、上手く隠れればドラゴンの視界に入らずに済むようだ。

 ドラゴンはすべて〈魔力眼〉をもっているので、魔力の隠蔽技術も問われる。

 方法は簡単だ。

 予め、魔力を枯渇状態にしておけばいい。

 俺たちは明け方にダンジョンで全魔力を注ぎ込んで宝箱を設置してから、宿に〈帰還〉した。

 魔力枯渇状態の疲労感は消えないが、わざわざドラゴンと戦って目立つのは避けたい。

 ちなみにベルナベルは魔力を隠匿する(すべ)も心得ているらしいので、魔力を枯渇状態にする必要はないらしい。


 というわけで竜の谷をゆっくりと進む。

 上空のドラゴンがこちらを察知したら、ベルナベルに撃退してもらえるから、他のパーティのように危険はない。

 一時間ほどをかけて竜の谷を越えると、中央山脈の岸壁にぽっかりと穴が空いていた。

 その大穴こそが、大迷宮の入り口なのである。


 大迷宮に入ってすぐのところは広く掘削されており、大迷宮を探索する者たちや、探索する者たち目当ての商人で賑わっていた。

 俺たちが入ってくると皆、注目してくる。

 目立つのはやはりベルナベルか。

 その美貌に男たちは釘付けになっている。


 新顔の俺たちに声をかけてくる者たちもいたが、どいつもこいつもベルナベルと一言でも会話をしたいという欲望が露骨であった。

 それでも有益な情報ももたらしてくれたのは事実であり、この第一階層は完全に人類の手で管理されており、危険がないこと。

 竜の谷を抜けてきたばかりのパーティは一晩、宿に泊まって休んでから探索をすることなどが聞けた。


 とはいえ俺たちは今日から探索する気でいたので、宿は休憩だけすることにした。


 雑魚寝する大部屋でもお高いが、ベルナベルと一緒にそんな場所に放り込まれるのは勘弁願いたいので、奮発して個室を借りた。

 とはいえ俺たちの資金からすれば大した額ではないのだが。

 それに〈隠れ家〉を使うのに大部屋はマズい。

 そういう理由で個室を借りたのだ。


「それじゃあベルナベル、俺たちは本体のところへ戻って魔力を回復した状態にしてから戻ってくるから、少し待っていてくれ」


「うむ。個室に乗り込んでくる奴もおるまい。留守は任せるがいい」


 俺たちは本体のもとへ行って記憶の統合をして、〈代理人〉スキルで再誕を果たす。

 魔力全快状態で生み出されるので、これで完全回復だ。


 順番にイチロウ、ジロウ、サブロウ、シロウに〈百面相〉してから宿の個室へと戻る。


「よし、休憩ということになっているからもう少しのんびりしよう。お茶とお菓子でもつまんでから、昼くらいになったら宿を出ようか」


 五人で雑談しながら時間を潰す。

 そうしてそろそろ昼になる頃、宿を出て頑丈な扉を潜り、第二階層へと続く階段を降りたのだった――。


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