110.さて今晩はどこまで行けるだろうか。
魔王として魔王城に赴任した俺は、まずアルドロンを呼び出して失敗したポーションを見せることにした。
「魔王様、お呼びだそうでー?」
「ああ。ちょっとポーションを試作してみたんだが、色がおかしくなってな。レシピ通りに作ったはずなんだが、何が間違っていたのか分からないんだ。ちょっと見て欲しい」
俺は〈アイテムボックス〉から失敗作のポーションを取り出した。
アルドロンはそれをマジマジと見つめて、すぐに「ああ、なるほどー」と声を上げた。
「魔王様、これは魔力を込めすぎですよー。魔王様以外が飲んだら多分、他者の魔力による中毒症状が起こるのではないでしょうかー」
「魔力を込めすぎ? そうか……確かレシピにはしっかりと魔力を込めるように、とあったからちゃんとしたつもりだったんだが、逆効果だったのか」
「そもそもですねー。魔王様ほどの魔力の持ち主が初級者の作るような普通のポーションを錬成するのがまず駄目なんですよー。もしも普通のポーションを魔王様が錬成したいなら、道具の質を敢えて落として伝導する魔力を減らすのが楽ですよー」
「道具の質を落とす? なるほど、その発想はなかったな」
せっかくなので最高の道具類を揃えたが、どうやら逆効果だったようだ。
俺は失敗作のポーションを〈魔力眼〉で見る。
確かに普通のポーションとは違い、並々ならぬ魔力がこもっていた。
「なあアルドロン。この失敗作のポーションは何かに使えるのか? 捨てるしかないか?」
「うーん、魔王様が飲むなら普通のポーションとして使えますよー。それ以外の用途は思いつきませんねー」
「そうか、ありがとう。また何か失敗したら助言を求めるから、よろしく頼む」
「はいー。……しかし魔王様、本当に錬金術をなさっているんですねー。なんだか嬉しいですよー」
「目標は賢者の石の錬成だからな。いきなり躓いてしまったが、錬金術の実践は続けていくよ」
「はいー、錬成の経験は必須だと思いますー。がんばってくださいねー」
アルドロンを立ち去らせた後、俺は〈ホットライン〉で本体に失敗作のポーションが出来上がってしまった理由を説明した。
なるほどな、魔力を込めすぎていたのか。
敢えて最高の道具をいきなり揃えたのも悪かったとは思わなかった。
普通のポーションを作成するために、品質の悪い混ぜ棒を〈通信販売〉で購入する。
そしてレシピ通りに薬草を使ったポーションの作成を行う。
今回は魔力を多く流しすぎないように気をつけつつ、品質の悪い混ぜ棒を使ったのが功を奏したのか、通常の色のポーションができあがった。
「……ようやく第一歩、か」
俺はレシピ本の次のページに書かれている簡単な魔法の道具、灯りを付ける道具の素材を〈通信販売〉で購入して、錬成することにした。
夕方、〈代理人〉たちが戻ってくる。
ベルナベルと四人の〈代理人〉たちは無事に国境を越えられたらしい。
北の大国ブイユゲット王国の探索者協会に登録して身分証を入手、宿を取って戻って来たそうだ。
宝箱設置をしていた〈代理人〉からはスキルオーブをふたつ献上された。
〈天運〉が相変わらずいい仕事をしているようでなにより。
スキルオーブは、〈沈黙耐性〉と〈麻痺耐性〉だ。
さっそくふたつのスキルオーブを使用する。
《〈沈黙耐性〉のスキルを習得しました》
《〈沈黙耐性〉のスキルが〈沈黙無効〉に進化しました》
《〈麻痺耐性〉のスキルを習得しました》
《〈麻痺耐性〉のスキルが〈麻痺無効〉に進化しました》
〈全耐性〉のお陰で耐性スキルはすぐに無効スキルに進化してくれた。
この調子ですべての無効スキルを身に着けておきたいものだ。
夕食後、ベルナベルは〈淫夢〉で精を集めてくると言ってでかけていった。
俺は引き続き、錬金術の実験をすることにする。
さて今晩はどこまで行けるだろうか。
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 30
クラス 自宅警備員 レベル 95
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈槍技〉〈暗視〉〈気配遮断〉
〈性豪〉〈料理〉〈醸造〉〈錬金術〉〈農耕〉〈礼儀作法〉〈審美眼〉
〈ウワバミ〉〈毒無効〉〈即死無効〉〈石化無効〉〈気絶無効〉
〈沈黙無効〉〈麻痺無効〉〈痛覚軽減〉〈闇:召喚〉〈空間:防御〉
〈時間:治癒〉〈創造:槍〉〈精霊:使役〉〈同時発動〉〈高速詠唱〉
〈通信販売〉〈新聞閲覧〉〈相場〉〈個人輸入〉〈魔力眼〉
〈多重人格〉〈睡眠不要〉〈ボーンガーディアン召喚〉〈別荘〉
〈夜の王〉〈隠れ里〉〈牢獄〉〈テイム〉〈監視カメラ〉
〈ホットライン〉〈帰還〉〈領土〉〈百面相〉〈領域支配〉
〈隠れ家Ⅲ〉〈代理人Ⅲ〉〈眷属強化〉〈ダンジョンマスター〉
〈浮遊島〉〈城塞〉〈リサイクル〉〈監視衛星〉〈永続召喚〉
〈地下迷宮〉〈天運〉〈視界共有〉〈ボーンアーチャー召喚〉
〈地脈操作〉〈霊脈操作〉〈全耐性〉〈アイテムボックス〉
〈経験値100倍〉〈契約:ベルナベル〉〈隷属:青葉族〉
〈隷属:黒影族〉〈隷属:魔王軍〉〈従魔:マーダーホーネット〉
〈従魔:レッドキャトル〉〈従魔:アイスドラゴン〉》