108.おかしいな、レシピ本の通りのはずなんだが。
ガシガシと頭を掻きむしる。
俺は〈通信販売〉と〈個人輸入〉から探し出した『錬金術、その秘奥』という書物を購入し、読み終えたところだ。
内容はというと、錬金術の最終目的であるホムンクルスの作成と賢者の石の作成について語られていたのだが、…………これが酷い。
何が酷いって作者の独断と偏見に満ち溢れた妄想が書き綴られていたのだ。
〈錬金術〉初心者の俺がこれを妄想と断言できるのもおかしな話だが、現代日本に生きて科学をかじった人間ならば、いかにこの内容が荒唐無稽かは論じるまでもないだろう。
そのくらい、とんでもない本だった。
ああ、大ハズレだったよ。
時間をドブに捨てたようなものだ。
俺は件の本を〈アイテムボックス〉に放り込んだ。
〈リサイクル〉しなかったのは、これでも金貨二枚という〈相場〉が見えているからである。
こんなロクでもない本にも需要というのはあるものだな。
いや俺も購入したクチだからそういう意味じゃ需要はあるのだが……。
仕方がない、今日のところは魔王の報告待ちだな。
空いた時間はポーションの錬成でもしよう。
〈錬金術〉を実際に使ってみるという経験も役に立つだろう。
いきなり賢者の石に飛ぶから行き詰まるのだ。
勉強だと思って、〈錬金術〉に必要な錬金釜を購入しておこう。
錬金釜とは、〈錬金術〉で使用する釜のことで、この中に素材を入れてかき混ぜるとアイテムが出来上がるというものだ。
例えば一番簡単なポーションならば、薬草だけでできる。
魔力を混ぜ棒に注ぐことで、エーテルという液体で錬金釜が満たされ、薬草が溶けてポーションになるのだ。
保存用の瓶は別途、購入する。
いや先に珪砂から錬成して用意しておいて、それにポーションを注ぐのもいいか。
まあともかく、実践だ。
おかしいな、レシピ本の通りのはずなんだが。
書いてある色よりかなり濃い。
宝箱から入手しているポーションより濃い色合いだ。
手順は合っているはずだし、こうして完成している以上は道具にも問題はないはずだ。
よく分からない。
保存用の瓶と蓋用のコルクは問題なくできたのだが、肝心のポーションがおかしい。
一応、瓶に入れて明日にでも魔王城にいる〈錬金術〉持ちの悪魔に聞いてみるか。
夕方、〈代理人〉たちが帰還してくる。
嬉しいことに魔王からは賢者の石の素材についての情報があった。
どうやら魔王城にいる〈錬金術〉持ちの悪魔はかなり優秀そうだ。
俺の失敗作ポーションの原因も見せれば判明するかもしれないな。
ダンジョンで宝箱設置をしていた〈代理人〉からは、スキルオーブがふたつ献上されてきた。
〈石化耐性〉と〈気絶耐性〉である。
状態異常を解消するポーションには確かに石化を治すものと気絶を治すものがある。
他の状態異常も耐性や無効をつけたいところだ。
さてこの世界で最も深いダンジョンである大迷宮に送り込む人員を用意しておかなければならない。
中央山脈の中に入り口があると聞いているが、具体的な位置までは知らないので、後でローレアに婿入りした〈代理人〉に詳しく調べてもらおう。
夕食後、ベルナベルが俺の腕に抱きついてきた。
「主よ、今日は主と肌を重ねる日じゃぞ」
「そうだな、分かっているよ」
「では早速、まぐわろうぞ」
シュルリと黒いゴスロリ服が消える。
俺はベルナベルをベッドへエスコートした。
《名前 コウセイ 種族 人間族 性別 男 年齢 30
クラス 自宅警備員 レベル 93
スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈槍技〉〈暗視〉〈気配遮断〉
〈性豪〉〈料理〉〈醸造〉〈錬金術〉〈農耕〉〈礼儀作法〉〈審美眼〉
〈ウワバミ〉〈毒無効〉〈即死耐性〉〈石化耐性〉〈気絶耐性〉
〈痛覚軽減〉〈闇:召喚〉〈空間:防御〉〈時間:治癒〉〈創造:槍〉
〈精霊:使役〉〈同時発動〉〈高速詠唱〉〈通信販売〉〈新聞閲覧〉
〈相場〉〈個人輸入〉〈魔力眼〉〈多重人格〉〈睡眠不要〉
〈ボーンガーディアン召喚〉〈別荘〉〈夜の王〉〈隠れ里〉〈牢獄〉
〈テイム〉〈監視カメラ〉〈ホットライン〉〈帰還〉〈領土〉
〈百面相〉〈領域支配〉〈隠れ家Ⅲ〉〈代理人Ⅲ〉〈眷属強化〉
〈ダンジョンマスター〉〈浮遊島〉〈城塞〉〈リサイクル〉
〈監視衛星〉〈永続召喚〉〈地下迷宮〉〈天運〉〈視界共有〉
〈ボーンアーチャー召喚〉〈地脈操作〉〈霊脈操作〉
〈アイテムボックス〉〈経験値100倍〉〈契約:ベルナベル〉
〈隷属:青葉族〉〈隷属:黒影族〉〈隷属:魔王軍〉
〈従魔:マーダーホーネット〉〈従魔:レッドキャトル〉
〈従魔:アイスドラゴン〉》