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106.まずレシピが分からない。

 『錬金術の基礎』を熟読し、『錬金術、その秘伝のレシピ集』に一通り目を通した。

 なかなかに奥深い内容だった。


 錬金術でまず作成できる定番のアイテムといえば、ポーションだろう。

 とはいえポーションだけでも複数の種類がある。

 怪我を治すポーションから、疲労を治すスタミナポーション、魔力を回復するマナポーション、状態異常を治療する各種ポーションなどなど。


 実はダンジョンの宝箱設置でこれらの基本的なポーションはかなり溜め込んでいた。

 武具の類は〈リサイクル〉の対象だが、ポーションは残してあるのだ。

 つまり錬金術で敢えてポーションを作成する必要はないということである。


 では作成できる中で有用そうなものとなると、魔法の道具類なのだが、これも実は宝箱設置で便利グッズは残してあるのだ。

 ダンジョン産のアイテムは人類の手で制作できるものより質が良いので、これも敢えて作る必要はない。


 では何を作成するか。

 レシピ集にはなかったが、『錬金術の基礎』にはホムンクルスの作成と賢者の石の作成こそが錬金術の最終的な目標である、と書かれていたのだ。

 正直なところホムンクルスには興味がない。

 人手が欲しければ、〈代理人〉を出せば良い。

 しかし賢者の石には興味をそそられた。


 『錬金術の基礎』に書かれていた賢者の石の特性は、無限の魔力を内包しているという点のみだ。

 正直なところそれだけでは何の魅力もない。

 なぜなら俺は代理人で実質、無制限に魔力を扱えるし、ベルナベルも大気中のマナを取り込んで自動回復していると以前、言っていたからだ。


 しかしここで以前、読んだことのある『魔法の基礎』の中にある記述が蘇る。

 魔力を使い現実の事象を上書きするのが魔法である、とするならば、理論上は無限の魔力がありさえすればどんな無理難題も実現できるのだ、と。

 これが錬金術の最終目的である賢者の石の使い道なのだろう。


 ありとあらゆる願いを叶える無限の魔力を秘めた賢者の石。


 ちょっと暇つぶしに作ってみようじゃないか。



 朝、戻って来たベルナベルにその話をすると、「ほう」と面白そうなものを見る目で俺を見た。


「主よ。無限の魔力がありさえすれば、大抵のことは可能になる。例えばこの世界と魔界との間を行き来できるようにする穴を開けることなども可能じゃろう」


「へえ。とすると、魔王城の連中を魔界に帰してやれるのか」


「そうじゃな。しかし……賢者の石はわしが知る限り、過去に誰かが作成したという話は聞かぬぞ」


「そうなんだよな。まずレシピが分からない。材料の目星もついていないからなあ」


「それを暇つぶしに作ろうとするのが主らしいところじゃが」


「情報収集をしてみるよ。魔王城の生産系の悪魔たちから聞き取りだ。〈錬金術〉を持っている悪魔がいただろ?」


「うむ。あやつか……知っておるかは分からぬが、聞いてみるのはタダじゃな」


 聞き取りは、魔王として赴任させている〈代理人〉に任せればいいだろう。

 俺はその間、〈通信販売〉と〈個人輸入〉で賢者の石に関する情報が載っていそうな書物を探してみよう。


 さて朝食を、と思ったところへホロウィンドウがポップアップした。


《自宅警備員がレベルアップしました》

《〈無貌〉のクラススキルを習得しました》

《〈無貌〉と〈変身〉を統合します。〈百面相〉を習得しました》


 んんん?

 なんかよく分からないスキルを習得したと思ったら、統合されて更に変なスキルになってしまった。


「ベルナベル、この〈百面相〉というのはどういうスキルか分かるか?」


「ほう、新しいスキルじゃな。……ふむ、また珍しいスキルじゃ。自身の姿を望んだ通りに変える〈変身〉の上位スキルじゃな。性別こそ変えられぬが、名前、種族、体型、顔かたちを自在にできる。ステータスもそれに合わせて変わるようじゃな」


「へえ、そりゃ凄い。もっと早く入手できていれば、聖痕探索部隊が捗ったんだけどなあ」


「どこかで役立つこともあろう。そうじゃ、ふたりいるコウセイを徐々に〈百面相〉で体型や顔を変えていくのはどうじゃ? うっかり鉢合わせても同名の別人として見られる程度には変えられるじゃろ」


「……なるほど。それはアリだな」


 クロエのところのコウセイとローレアのところのコウセイ、今のところ接点はないが、なにかの間違いで共通の知り合いができたりした場合が危険だ。

 ただどちらもベルナベルと契約している冒険者という共通点も抱えているのが不安点だ。

 それでも同じ顔をしたふたりより、同名の別人の方が言い訳も効くだろう。

 早速、今日から誰の目から見ても分からないように、ほんの少しずつ変化させていくことにした。


《名前 コウセイ 種族 人間族(ヒューマン) 性別 男 年齢 30

 クラス 自宅警備員 レベル 93

 スキル 〈人類共通語〉〈簡易人物鑑定〉〈槍技〉〈暗視〉〈気配遮断〉

     〈性豪〉〈料理〉〈醸造〉〈錬金術〉〈農耕〉〈礼儀作法〉〈審美眼〉

     〈ウワバミ〉〈毒無効〉〈即死耐性〉〈痛覚軽減〉〈闇:召喚〉

     〈空間:防御〉〈時間:治癒〉〈創造:槍〉〈精霊:使役〉

     〈同時発動〉〈高速詠唱〉〈通信販売〉〈新聞閲覧〉〈相場〉

     〈個人輸入〉〈魔力眼〉〈多重人格〉〈睡眠不要〉

     〈ボーンガーディアン召喚〉〈別荘〉〈夜の王〉〈隠れ里〉〈牢獄〉

     〈テイム〉〈監視カメラ〉〈ホットライン〉〈帰還〉〈領土〉

     〈百面相〉〈領域支配〉〈隠れ家Ⅲ〉〈代理人Ⅲ〉〈眷属強化〉

     〈ダンジョンマスター〉〈浮遊島〉〈城塞〉〈リサイクル〉

     〈監視衛星〉〈永続召喚〉〈地下迷宮〉〈天運〉〈視界共有〉

     〈ボーンアーチャー召喚〉〈地脈操作〉〈霊脈操作〉

     〈アイテムボックス〉〈経験値100倍〉〈契約:ベルナベル〉

     〈隷属:青葉族〉〈隷属:黒影族〉〈隷属:魔王軍〉

     〈従魔:マーダーホーネット〉〈従魔:レッドキャトル〉

     〈従魔:アイスドラゴン〉》


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