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100.完全に詰みですねこれは。

 聖痕探索部隊は無事にドラゴンの迎撃に成功した。

 年経たドラゴンたちは若いドラゴンたちが翼を失って落下していくのを見て、戦う気を削がれたらしい。


「ベルナベル、魔力は大丈夫か? マナポーションなら腐るほどあるぞ」


「うむ? わしの魔力は空気中のマナを取り込んで自然回復するからの。実質、無尽蔵じゃ。安心せい」


「そうか……魔力も尽きないのか。そりゃ心強い。そろそろ聖痕の在り処が近づいてきている。頂上付近みたいだ」


「年経たドラゴンじゃな。どのくらいの年寄りかは知らんが、厄介そうじゃな」


「……ベルナベルが厄介と言うなら、俺たちが相手にできるレベルじゃなさそうだな」


「いや。主たちは八人もいる。空中戦でなければボーンガーディアンが出せるじゃろ。役割分担を決めて攻めれば割りといい勝負になると思うぞ」


「うへえ。戦わせる気かよ……」


「まあ相手を確認してからじゃな。空中戦になったらわしが落とすが」


「よろしく頼むよ」


 そして遂に〈浮遊島〉は聖痕の反応がある直上に来た。

 頂上付近に陣取っているドラゴンのつがい。

 その二頭のドラゴンにそれぞれ聖痕が宿っているのが〈魔力眼〉で見て取れた。


「二体か……」


「ふむ、それなりに年経たドラゴンのようじゃが、勝てない相手じゃないぞ。飛行する気配もない。地上戦じゃ」


「もしかしてベルナベル、俺たちに戦わせる気でいるか?」


「うむ。四人で一体。やれなくもないじゃろ」


「マジか……」


 俺たち聖痕探索部隊はベルナベルに鍛えられた記憶も当然、統合されている。

 戦術に関しては幅が広がったし、地上戦なら確かにボーンガーディアンが出せるが。


「ま、やれるだけやろう。ひとり死んだ時点でベルナベルに出張ってもらうってことで」


「そうだな。全滅だけは避けなきゃ話にならん」


「聖痕の回収役がひとりは必要だし、ひとり死亡でベルナベルに交代はアリだな」


 ベルナベルは「うむ」と頷いた。


「では主がひとり死んだ時点で交代する。もしくはそれ以上の被害が出そうなら、わしも黙ってはおらぬ」


 かくして俺たちは地上へ降りて、ドラゴン戦へと突入した。



 ふたりがボーンガーディアンの召喚役、ひとりが〈創造:槍〉での攻撃役、そして残った最後のひとりが〈空間:防御〉の防御役だ。

 ドラゴンの吐くブレスは〈空間:防御〉の障壁で遮断できることは、空中戦で判明しているので問題ない。

 問題があるとすれば、若いドラゴンより硬い鱗をもつドラゴンであることから、攻撃力不足になることくらいか。


 地上に降りた俺たちを、聖痕を宿した二体のドラゴンが待ち受けていた。


「矮小なる魔族らめ。我らが得た神々の欠片を奪いに来たか?」


 人類共通語を話すドラゴンにギョッとしながら、俺たちは顔を見合わせる。

 どうやら〈変身〉しているため、俺たちのことを魔族のコーニエルだと認識しているらしい。


「その通りだ。譲渡できるなら寄越せ。そうすれば、命は助けてやる」


「笑止。魔族ごときに命乞いするドラゴンがどこにいる!!」


 ゴウ、と輝く白い息が放たれる。

 どうやら氷属性のドラゴンらしい。


 〈空間:防御〉の障壁を張って、凍える吐息を凌ぐ。

 直撃は遮断したが、周辺の気温が一気に低下した。


 もう一体のドラゴンも同じく氷属性のドラゴンらしく、続けてブレスを放ってくる。

 戦闘はもう始まっていた。


 先制されてしまったが、役割分担どおりに動くことは変わらない。


 四人で一体の相手をする。

 まずはボーンガーディアンをふたりで三体ずつ、一度に六体ずつ召喚し、ドラゴンのもとへ向かわせる。

 ドラゴンは爪を振るうと、ボーンガーディアンの一体をなんなく叩き潰した。

 ボーンガーディアンの大剣は鱗に阻まれて傷をつけることもできない。


 やべ、これ詰んでねえ?


「我は創造する。剣より長き刃もつもの。汝の名は槍――〈ミサイルジャベリン〉!!」


 最後のひとりが攻撃に移る。

 頭部に命中した〈ミサイルジャベリン〉が派手に爆発した。

 かなりの魔力を込めた一撃だったが、ドラゴンは首を振っただけでダメージを与えたようには見えなかった。


「魔族風情が、なかなかやるようだが、相手が悪かったな」


 再びブレスを吐き出すドラゴン。

 四人を守るように〈空間:防御〉を展開するが、綺麗に周囲が凍って氷の中に埋もれてしまった。


 あーあー、完全に詰みですねこれは。


 〈ホットライン〉でベルナベルに連絡を取る。


「すまん、ベルナベル。俺たちじゃ太刀打ちできない」


「そうじゃな。相手が少々、悪かった。よし後は任せるが良い」


 そこからは早かった。

 ベルナベルは〈空間:攻撃〉の斬撃で首を一刀両断し、二体を瞬く間に殺した。


 ふたつの聖痕が浮遊しながら、俺に宿る。


 氷の中から脱出して、八人が互いの無事を喜び合う。


「すまんなベルナベル。手間をかけさせた」


「なに。二千年以上は生きたドラゴンじゃろう。相手が悪い。それにアレを見よ」


「アレは……ドラゴンの子供か?」


「生まれて百年も経っておらんな」


 なるほど、子供がいたから空中に上がってこなかったのか。


「なあベルナベル。あのドラゴンってテイムできるか?」


「できるじゃろ。捕まえていくなら、〈空間:拘束〉を使うが?」


「是非ともお願いします」


「うむ。それとあの二体の死体を〈アイテムボックス〉に仕舞うがよい。二千年クラスのドラゴンの素材じゃ。生産系の悪魔は喜ぶじゃろうなあ」


「了解」


 かくして俺たちは最後のふたつの聖痕を入手した。


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