オタクイケメンには喫茶店で缶コーヒーを
「青山くん。私と付き合ってください!」
「ごめん。僕、三次元女子には興味がないんだ」
桐部理香は中学一年生の頃、初恋の彼に告白してフラれた。
彼の名は青山充。イケメンで優等生でみんなの人気者。
しかし無類のアニメオタクで、二次元の女子キャラクターしか愛せないのだった。
フラれた理由に納得がいかず理香は心底ショックだった。
――4年後の冬、高校生になった理香は、父が営んでいる喫茶店の手伝いをしていた。ある日、一人の客がやってきた。
「い……いらっしゃいませ。ご注文を……どうぞ!」
「うーん、初めての店だしな。おすすめのメニューってある?」
「……こ、このスペシャルブレンドカフェラテの……セットはいかがですか? お好きな焼き菓子と……合わせてご注文いただけます」
「じゃあそのカフェラテとドーナツのセットで」
「かしこまりました……」
足音を立てないよう早歩きで厨房へと引っ込む理香。
あの客とは接したくなかった。なぜなら、
その客が中一のあの時に理香をフッた、――青山充だったのだ。
(さっきの態度、私の事なんて覚えてないようね……。何とかあの時の恨みをはらせないものか……。あっ、そうだ!)
理香は憤りを胸の内に留めつつも、ある事を閃いた。
「お待たせしました。スペシャルブレンドカフェラテセットです」
「え?」
充は目を丸くした。ドーナツとともに出てきたのはカフェラテではなく、――缶コーヒーだった!
「ごゆっくりどうぞ。クスッ」
にやけながら厨房へと戻る理香。わざわざ店の前にある自販機から、缶コーヒーを買ってきて出してやった。しかもキンキンに冷えている。季節は冬半ば、ささやかながらも厳しい嫌がらせだ。
「フフフ、せいぜい寒がればいいわ」
理香は厨房の入り口から様子をうかがう。
「うーん」
充はしばし沈黙し、理香の視線に気づいたようで、温かな微笑みを向け―― 冷え切った缶コーヒーを美味しそうに飲み干した!
「え?」
驚く理香をよそに充はお金を払って店を出ると、こう呟いた。
「これってツンデレってやつ? この店、最高かよ!」
アニメのツンデレ属性のキャラを推す充は、歓喜した。以来、常連となり毎回出される缶コーヒーを嬉々として飲みに来る。
そんな充が自分に気があると、理香が勘違いするのは別の話――。
ついに始まったなろラジ、年に一度の祭典。
今年も投稿するぞー!
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