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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

僕達のダンジョン探索記

(習作) 僕達のダンジョン探索記 - hookline

作者: 亜音

209x年、日本。とあるF級ダンジョンにて


今日も僕達パーティは、親達にも誰にも内緒でダンジョンに侵入している。

その当面の目的は、モンスターを退治して経験を積んだり魔石を収集したり、ダンジョンの未踏破箇所を探索したりだ。が、更に先の目的のためにも、やりたいことはたくさんある。

なのでできれば、朝から夜までダンジョンを探索したいところなのだけれど、僕達は今、小さな子供達二人だけで公園かどこかで外遊びをしていることになっている。折角この歳でそれだけの信頼を得られている以上、夕方の門限までにはちゃんと家に帰らなければならないな。


そんなことも考えながら、暗いダンジョンの洞窟内をいつものように探索する。

凸凹が少ない地面を、音を立てないように履き慣れたスニーカーでコソコソと進んでいく。

洞窟の道の幅は2~3m、たまに1m程度の箇所もある。

ダンジョン内は、所々でヒカリゴケがぼんやりとした光を発している。おかげで懐中電灯やヘッドライトのような照明器具が無くとも、歩みを進めることができる。むしろ照明など点けていたら、モンスターの方に先に気づかれてしまう。

普通のダンジョン探索者パーティならば、ここダンジョン最浅域に現れる最弱クラスのモンスターなど、たとえ不意打ちを受けたとしても返り討ちにできる。なので場所や状況によっては、派手に動いてモンスター達をおびき寄せるような戦術を取る探索者達もいる。

しかし、体格や膂力で圧倒的に劣る僕達では……。


僕と相方の出で立ちは、履き物はスニーカーで軽快だが、ヘルメットと簡易プロテクター一式を装着して、その上に周囲環境の色に合わせた迷彩模様の薄手のフーディーを羽織っている。そして更に両手で武器を携行。

腰や背中には、それぞれ予備の武器・小道具や、それまでの戦利品も負っている。

ダンジョン洞窟内は適温に保たれているが、まだ幼い僕達の身体にとってはなかなかの重装だ。

それでも、息も乱さず苦にも感じず周囲に気を配りながら歩き続けられるのは、やはり実は目に見えない経験値での成長によるものなのか、魔力が全身を巡ることでの身体強化によるものなのか、少なくない数のモンスターの命を屠り捧げてきたことに対する見返りなのか、ダンジョンに満ちるマナによるものなのか、それとも。


------


前方に曲がり角が見えた。僕達は歩みを止めて、耳を澄ます。万が一にも出会い頭にモンスターとの不意の近接遭遇戦になったら、僕達の戦力では太刀打ちできない。

……とりあえず何も聞こえない。そろりそろりとスニーキング。

しかし曲がり角まで十数メートルのところで、曲がり角の向こうの方から複数の足音物音や話し声のようなものが聞こえてきた。

再び歩みを止める。同時に気づいた様子の、後ろやや斜めにいる相方を見やり、お互い声を出さずに状況を確認しあう。相方から、予め決めておいたハンドサイン。


(この位置で迎え撃つ態勢を準備しよう)

(ok。こちらへ向かってくるか様子をうかがう)

(ok。こちらに現れたら、先ず標的を目視確認する。敵なら攻撃)

(ok。攻撃開始のタイミングはそちらから)

(ok)


僕達の主武器は、共に飛び道具。待ち伏せによる不意打ちか、側方後方からの不意打ちが基本戦術だ。

本当は曲がり角からもう少し距離を取りたい。が下手に後ろに下がろうとして物音を立てて標的に気づかれても面白くない。

このダンジョン・この状況では、僕達以外に足音物音を立てて移動するものなどモンスターしかありえないのだが、念の為に標的を目視確認してから攻撃する。

両手に武器を構えなおす。僕は銃、相方はクロスボウ。僕の銃には銃剣が取り付けられている。標的を求めて徘徊している時点から既に、武器はコッキング済み、装填済み。

狭い洞窟の通路内。身を隠すものは無いが、左右それぞれ壁際で姿勢を低くし、曲がり角から標的が出てくる予想位置に狙いを定める。


はたして、足音物音は段々と大きくなる。やがて曲がり角の向こうから、標的らが姿を現す。やはり、いつものゴブリン達だ。


ゴブリン。ファンタジー世界だけの、空想上の生き物。……だったもの。

過去に物語小説や漫画アニメゲーム等で語られ描かれてきたイメージらしく、頭には小さな角と、口からは牙が飛び出ている、醜い鬼。

身に着けているものは襤褸切れのような腰蓑と、目の前にいる個体は手に短い棍棒を持っている。

加えて、ここ日本や東アジア圏に現れるゴブリン達だけの特徴なのだが、腹が異様に膨れており、しかし手足は骨と皮だけのように細く、あばらが浮いて頬は痩せこけている。つまり、いわゆる餓鬼を思い起こさせる外見的特徴も併せ持っている。

そして餓鬼のようなゴブリンの体格は、小さな子供ぐらいしかない。しかしつまりは……僕達と同じぐらいか、僕達より少し大きい。

ゴブリンの性向は、これまで何十年も探索者らによって確認されてきた限りでは、きわめて攻撃的だ。ゴブリン達はこちらに気づけば、問答無用で即座に襲い掛かって来る。


先頭の一体目は、続く二体目が曲がり角から姿をみせたタイミングで、薄暗い通路の端で縮こまっている僕達に気づきかけた。その攻撃本能からなのか、無意識に手に持った棍棒を構えての攻撃態勢に移ろうとしている。

その刹那、僅かに先制するタイミングで、既に十分狙いを定めていた相方がクロスボウの引き金を引く。パシュンと控え目な音を立てて放たれた矢は、一体目のゴブリンの胸に突き刺さった。それだけで致命傷となったようだ。声を上げる間もなく倒れる。

二体目のゴブリンが、ギギィと不快な声を短く発する。小柄で目立ちにくい格好の僕達をハッキリと視認したわけではないだろうけれど、こちら側に攻撃者がいることを本能的に察知して、そのまま向かってこようとした。がしかし、相方のクロスボウ発射を合図に、僕も銃の引き金を引く。カシュッと銃とは思えないような小さな音を立てて発射された弾は、二体目のゴブリンに命中した。

この僕でも扱える特殊な仕様のセミオートの銃は、相方のクロスボウよりも単発の威力は低い。今度は致命傷にはならなかったが、それでも十分なダメージは与えることができた。その場に苦し気にうずくまった二体目のゴブリンは、もう大きな脅威とはならない。

一射目の直後から、相方はクロスボウのコッキングハンドルを回しながら後ずさりし始めている。

先頭のゴブリン二体が攻撃を受けた直後に、続く三体目以降のゴブリン達が、先の二体を避けて若しくは乗り越えて、こちらへ向かってくる。

このゴブリンという種族は、攻撃本能は高いが身体能力は低く、知能は更に低い。

今この状況でも、ゴブリン達は彼我の攻撃射程の差を認識しないのだろうか。曲がり角を戻って身を隠すことも、倒れた味方を気遣うこともしない。そしてしかし、こちらの攻撃をものともしない頑強さも無ければ、彼我の距離を一気に詰められるだけのすばしっこさも無い。持っている武器にしても、そもそもゴブリン達には弓矢どころか槍や盾を扱えるだけの知能や器用さも無い。

それなのに、ゴブリンは目の前にいる味方以外のモノを攻撃しようとすることを止めない。


……と、ギャッギャッと威嚇するような声を上げながらこちらに向かってくる三体目のゴブリンが、味方のゴブリンを乗り越えてきた際にわずかにバランスを崩した。一瞬動きが鈍ったそのゴブリンにも、銃弾を一発撃ちこみつつ後ずさる。


戦闘は続く。状況は一方的に僕達が優勢だ。それでも未だ幼い僕達では、体格や膂力ではゴブリンに敵わない。棍棒や掴みかかる手がこちらへ届く前に、脅威度の高い標的から優先して、油断なく落ち着いて攻撃を撃ち込んでいく。


---


そうして、当初は総勢六体だったゴブリンの一団も、まともに動ける数を減らしていき、ついに辛うじて動ける最後の一体となった。短い棍棒を持っているが、逆腕側の肩に矢を受けている。一方、僕達は全くの無傷だ。

と、僕と相対するその最後の一体が、まだ距離があるにもかかわらず手に持った棍棒を大きく振りかぶった。

……初めてダンジョンに入った時のゴブリン達との初戦闘でも、こんなシチュエーションがあったのを思い出した。とっさに身をかがめ、銃剣を斜めに構えるように防御姿勢を取る。ゴブリンにより投げ放たれた棍棒は、迷彩柄の上着越しに僕の肩部プロテクターを僅かにガリッとかすめて、誰もいない後方の床に転がっていく。

それがゴブリン達の、最後の抵抗となった。僕はしゃがんだ姿勢のまま即座に銃を構えて発射。ちょうどクロスボウを巻き上げ終わったタイミングの相方も、間髪を容れずに矢をつがえて放った。共に命中し、そのゴブリンは絶命して倒れた。


---


戦闘は終了し、途端に静かになる。ゴブリン達は既に死んでいるか、虫の息。一方の僕達には、息の乱れすらもほとんどない。……いや、最後に攻撃を受けかけて、僕も相方も少しだけ興奮気味だろうか。相方が僕に、大丈夫だったか声を掛ける。上着の肩のところが僅かに汚れただけなのだが、相方が思わず声を掛けるのも、まぁ無理はない。なにせ今の僕達には、怪我を即座に直す魔法の薬は無いのだから。


まだ息のあるゴブリンに、とどめの弾を撃ち込もうと銃を構えようとした。が、相方に身振りで制される。僕の銃の残発射可能数を気にしたようだ。たしかに、銃の弾ももったいない。別の方法でとどめを刺すことにしよう。

戦闘しながらも、こちらの後方やゴブリン達の向こう側から新手が来ないかは気に掛けていた。あらためて通路の前後双方向に注意を向けながら、武器のコッキング、残発射可能数の確認。

相方がクロスボウの巻き上げをしている傍ら、僕は再装填が済んだ銃をすぐそばの壁に立てかけ、背中に負っていた伸縮式の短槍をとどめ刺し用に取り出す。

その短槍は、外観は伸縮式の物干し竿の先端に包丁を取り付けたような代物だ。伸ばして四尺ほど、縮めれば1mもない。穂の鞘を取り外して伸ばす。

とどめ刺しに銃剣を使用することで、槍の携行を省いて荷物を軽くすることもできるのだが、やはり槍の方がこういう時には重さも長さも手ごろだ。

相方のクロスボウのコッキングと、僕の槍の準備が完了したタイミングで、いよいよ戦利品の収奪に移る。ハンドサインで、いつもの様に手筈を確認しあう。

比較的傷が浅い、まだ息のあるゴブリンからとどめを刺していく。死んだふりや弱ったふりをするゴブリンなどは見たことも聞いたこともないが、念の為だ。

先ずは一体目。周囲に耳を澄ませ警戒しながらも、相方は地面に横たわるゴブリンにクロスボウを向ける。

僕は慣れた手つきでゴブリンの急所に槍を突き入れてとどめを刺す。グゲッと小さな声を立てて、ゴブリンは絶命した。僕はそのまま、戦利品となる魔石がある辺りを槍の穂で切り込んでいく。

赤黒い血肉の中から、明らかに普通の臓器の類ではない、明るい青緑色系統の色の小石が見つかった。僕と相方は満足げに顔を見合わせる。


---


そうして、念の為に矢先を向けて警戒する係と、槍で魔石を露出させる係を、僕と相方とで交代しながら作業を進める。六個全ての魔石とまだ使えそうなクロスボウの矢を速やかに回収し終えた。

……いや、途中で相方が、ある一体のゴブリンに対しては妙に念入りにとどめ刺しをしていたか。あの一体は確か、僕に棍棒を投げつけた、なかなか根性のある個体だったような。


とどめ刺し等を終えて汚れた槍の穂を奇麗にして、槍の穂に鞘を被せた。柄を縮めたら、僕は槍を再び背中に負う。

一連の戦闘は、体感で十分も掛からなかった。怪我や体力の消耗、息の乱れどころか返り血による服装の汚れもない。


それぞれの射撃武器を構えなおし、ゴブリン一団の死体を後にして、僕達パーティは薄暗い洞窟内を標的を求めて再び歩き出すのだった。

読みにくい文章でしたらすみません。

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