2-42.【閑話】受診するならエイプリル医院
「くしゅんっ。」
「オリヴィア、風邪?」
「ううん。花粉症みたい。ルナは、大丈夫なのね。」
「うん。今のところ、そんな症状が出たことは、無いかも・・・」
いいなぁ。
今年は、いつもより花粉がよく飛んでいる。
そのせいだろうか・・・わたしのくしゃみは、なかなか止まらない。
「オリヴィアの場合、ヨークが、噂をしてるのかもっ。」
いやいや、それだとヨークって、1日中、わたしの話をしていることになっちゃうよ。
最近、日中は、ずっとくしゃみしてるんだもの。
ルナと、そんな話をしていると、ドアノブが、ガチャリと音を立てた。
「かゆ~~~ぅぃぃぃぃぃぃぃぃ。」
声の主は、もちろん、妖怪カユゥイン・・・ではなく、ケイシー。
「花粉症でしょ?顔を洗って来たら、楽になると思うよ。」
「え・・えーとね・・・」
「ん?ケイシー?どうしたの?」
なにやら、ケイシーが、もじもじと体をくねらせる。
「んーと、顔じゃなくてね・・・いや、昨日、ジェイコブと街に遊びに行ったのよ。だけど、かゆくてかゆくて」
「うん。だから、どこが?」
「いや、その・・・お・・・」
「えっ?」
「お股が・・・」
あっ、デリケートゾーンだったから、言いにくかったのね。
ちょっと悪いことをしたかも・・・
「様子見ようと思うんだけど、かゆいのが我慢できなくて・・・何かいい方法ないかなぁ。」
「ダメっ。様子見るなんて。病院行かなきゃ。えーと、今日の当番は・・・エイプリル医院ね。皮膚専門の病院らしいから、ちゃんとしていると思うわ。」
わたしは、当番病院を調べると、ケイシーに地図をサッと渡した。
「えーでも・・・めんどくさい・・・」
「だめよっ。悪くしたら、そっちの方が困るわよ。」
[風と水の魔法使い] 【 2-42. お股のかゆいケイシーさん 】
こうして、ケイシーは、しぶしぶエイプリル医院へと向かうことになるのであったが・・・
さて、その部屋の隅っこのこと。
「えっ?昨日、ジェイコブとデートしてて、ケイシーのお股がかゆくなった?ってことは・・・ふふふ・・・」
ルナが、顔を赤くしてなにやら呟いていたことに、オリヴィアとケイシーが気づくことは、無かった。
☆ ☆ ☆
「ここが、エイプリル医院ね。」
お昼過ぎ、少し気温が上がってきて、暑いって感じるくらい。
王都の中心から少しはずれた場所にあるこの医院には、皮膚病専門の医師がいると評判らしい。
「こんにちわー。初めてなんですけど、診察してもらえますか?」
受付には、なにやら頼りなさげな女の子。
「ケイシーさんですね。あっ、初めての方は、こちらに記入をお願いします。」
『始めて来院された方に、お尋ねします』と書かれた用紙を渡される。
んーと・・・適当でいいか。
症状は、お医者さんに話せばいいもんね。
さらさらと、書き上げると、受付の女の子にボードごと用紙を返す。
「はいー。ありがとうございます。」
え?チェックするの???
あろうことか、その女の子は、私の書いたボードをひとつずつチェックした上、問いただしてきた。
「すみませーん。ケイシーさん、ここですね。今回、どのような症状で受診されるのでしょうか?」
『今回、受診を希望されるお困りの症状を教えてください』
いや・・・そこ書きたくないから書いてないんだよ。
分かろうよ?
しかし、女の子は、空気を読まない。
「あのー・・・症状が分からないと、先生も、診察できないんですけど・・・」
この子、ヤバい。
「言わないと、診察しないよ」と言わんばかりの口調。
顔がゆでダコのように熱くなる。
「言えばいいんでしょ?言えばっ!あのねっ、かゆいの。」
「かゆい???」
「股の奥が・・・股関が、かゆいのよっ!!!!!どう?満足した?」
キッと、女の子を睨みつける。
ガチャリ
その時であった。
診察室のドアが開いた。
にっこり笑いながら出てきたのは、スタイルの良い女性。
「ケイシーさんですね?こちら診察室へどうぞ。」
女の私でさえ、ぽぉっとなってしまいそうな素敵な笑顔だ。
私は、女性に見とれたまま診察室へと向かった。
「うんうん。聞こえてたから大丈夫だよ。かゆいんだね。じゃ、そこ座って。」
なに?このおじいさん・・・お医者さんかな?
説明なく、何やら変わった形の台の上に座らされる。
「はいっ、じゃぁ、足広げてねぇ。」
「キャァァァァァァ」
あっ・・・・
思わず鼻に正拳突きを入れた上に左の頬にビンタを入れてしまった。
今、床に倒れてるの、ここのお医者さんだよねぇ。きっと・・・
「気にしないで。大丈夫ですよー。」
倒れた医師の襟首を、さっきのスタイルの良い女性の右手が掴んだ。
え?片手1本で?
ずりずりずりと床の上を引きずりながら、ドアを開けると、ぽいっとゴミ・・・じゃない、お医者さんらしき物体を放り出す。
「はいっ。もう一回ここに座ってね。ちょっと恥ずかしいけど、大事なことだから、足を広げてかゆい場所を見せてね。」
今度は、正拳突きも、ビンタもしない・・・ってかしちゃダメだ。
素直に診察を受けた。
「うーん。ちょっと炎症があるみたいだけど・・・オリモノなんかは無い?うんうん。じゃぁ、そこまで問題なさそう。かゆみを止める塗り薬を塗っておくね。えーと、この塗ったお薬と同じものと、念のため、ばい菌をやっつけるお薬とを出しておくから、受付で貰ってね。はいっ、お疲れさまでした。」
診察は、2~3分?
女性の顔に見とれているうちに終わってしまっていた。
お薬の使い方なんかも、このキレイな女の人が教えてくれた通りでいいから、あんまり受付の人の話を聞く必要はない。
ぼーっとしたまま、受付でお薬を受け取った。
キレイだったなぁ。あの人。
☆ ☆ ☆
「ケイシー、何、ほっぺを赤くして、ボーっとして笑ってるの?」
貰ったお薬をテーブルの上に置いたまま、思い出し笑いをしてたら、オリヴィアが不思議そうに声をかけてきた。
「あのね。今日行った医院で診察をしてくれた女の人が、すっごいキレイだって、ちょっと思い出してたの。」
「えーと・・・ケイシーは、えーと・・・その・・・お股の診察をキレイな女の人にしてもらって、思い出し笑いをしながら、ほっぺを赤くしてた・・・と。えーと、そういう趣味の方だったんですね。あっ、ちょっと離れていただけます?ケイシー・リィデング・エトガンさん。」
「ちょ・・・フルネームで呼ぶなぁ。」
「冗談だよぉ・・・って、この薬なに?」
「え?塗り薬と、飲み薬だけど?」
「だって・・・ほら、塗り薬の使い方のところ見て。『外陰部、うずく部位』って・・・うずくの?あっ、やっぱり寄らないでっ!エトガンさん。」
「ちがぁぁぁう。『外陰部、うすく塗布』って、教えてもらったもん。違うの。きっと、あの受付の子が間違えて書いたんだって。ちょ、オリヴィアぁぁぁぁぁ、部屋から出て行こうとしないで!」
☆ ☆ ☆
こうして、いつものドタバタコメディをはじめるふたりであったが・・・
さて、その部屋の隅っこのこと。
「えっ?昨日、ジェイコブとデートしてて、ケイシーのお股がうずくようになった?ってことは・・・ふふふ・・・」
ルナが、顔を赤くしてなにやら呟いていたことに、オリヴィアとケイシーが気づくことは、無かった。
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【ご案内】
下の4本、本日中に、投稿を予定しています。
それぞれ視点が違います。
お時間がございましたら、是非お楽しみください
★本日,09時に投稿予定 アリー視点
【美容師の娘】3-60. 【閑話】エイプリル医院のお手伝い 前編
https://ncode.syosetu.com/n6487gq/223/
★本日,10時に投稿予定 アリー視点
【美容師の娘】3-61. 【閑話】エイプリル医院のお手伝い 後編
https://ncode.syosetu.com/n6487gq/224/
◆本日,15時に投稿予定 ライア視点
【冒険者の娘 ライリューン】1-4.【閑話】エイプリル医院のライアーヌさんは、今日も大忙し
https://ncode.syosetu.com/n6384gw/4/
▲本日,17時に投稿予定 オリヴィアとケイシー視点
【風と水の魔法使い】2-42. 【閑話】受診するならエイプリル医院
https://ncode.syosetu.com/n9635hm/79/