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2-34.オリヴィア、私たち、親友よね。

 エセクタ魔法魔術学院から 20キロほど離れた河口の横にある 古代森林公園。 この森は、人の手が入って整備された 魔法の森である。


 その森の奥、アードルフ・シタラ=ヒムゥラの祠の前に、ひとりの少女が 姿を現した。


 言うまでもない、アビーである。 その隣には、母子であろうか? 小さなサルが2匹。 アビーの姿をした その少女は、サルの親子に 手を差し出しながら言う。


「ふんっ。 人の手が入りすぎた森というのは、こういう いびつなモノを 産む。」


 少女の顔に見合わない低い声。 手は、子ザルのアゴの位置に置かれ、その顔をクイっと、あげさせる。


「混血・・・。 父サルは、テナガか・・・。」


 子ザルの毛をつくろっていた 母ザルは、黒い顔に短く平らな鼻の、明らかに ホワイトラルグン種であるのに対して、子供は、灰色の顔で、天狗のような鼻をしている。 この天狗のような鼻は、テナガカラステング種の特徴。


「テナガのオスは、成熟した時に、森から大きく離れるはずだが・・・。 離れるにも、近くにサルの生育に適した環境が無くなったか。 この周囲は、昔より、サルには、暮らしにくい場所に変わっているようだな。」 


 テナガカラステング種のオスは、成熟すると、交尾の機会を求めて森から離れるが、人の手が入って整備されたこの魔法の森の周囲には、もはや、移り住む森林が無くなってしまっているのだ。


「まぁ、良い。 新たな種が存在すれば、新たな魔術も、生まれるやもしれぬ。」


 そう言って、子ザルの頭をなでると、アビーの姿をした何かは、再び、黒い水晶を入り口に飾る祠へと姿を消すのであった。




[風と水の魔法使い]  【 2-34.友達でも何でもないからっ 】




 部屋の中から聞こえた どうぞっ。 という声に誘われ、私たちは、ナイチ先生のお部屋へと 足を踏み入れた。


「あぁ、オリヴィアたちかっ。」


 珍しいっ! なんと、ナイチ先生が、白衣姿だ。


「先生、実験をされていたんですか?」


「あぁ、『悲嘆する安らぎの興奮薬』を作っていたんだよ。 もちろん、オリヴィアの処方でね。」


 そう言って、軽く右目をつぶると、ニコッと笑う。 うーん。 イケメンは、ウインクするだけで、絵になるね。 じゃ、さくっと、マフィンを渡して帰ろうかっ ・・・って、ルナっ!


 うーん・・・ 私の前で、白い箱を持ったまま、ルナが、固まってしまっている。お顔が、真っ赤。 お耳も真っ赤。 たしかに、ナイチ先生の『ニコッ』は、破壊力があるけどれも、ルナ、あなた 気が多すぎじゃない? さっきは、オリバーの口元を、真っ赤になって 注視してたよね?


 石化した、ルナの背中を ツンツンツンっと、つつく。 はっと 正気に戻ったルナが、銀の箱に赤リボン、両手で持った マフィンの箱を ナイチ先生の前に突き出した。


「あの・・・ これ、みんなで作ったんですけど。」


 うわっ、声、ちいさいっ!


「ん? 何だろう? あぁ、マフィンだね。 うん、ラヴェッロの マフィンに 負けないくらい美味しそうだ。」


 箱を受け取って、そのまま 机の上に置いてしまったアメリア先生と違って、ナイチ先生は、銀の小箱にかかったリボンに手を伸ばすと、スルッと、それを解いて、箱を開け マフィンを眺めている。


 そのまま、先生は、指先で箱をコンコンと叩くと、呟いた。


「キレイで かわいい銀の箱だけど、素材が紙なのが、残念だね。 保存のペーパーが、使えない。」


「保存の魔術符っ? 先生も、描けるんですか?」


 ルナが、びっくりしたように 声を上げた。


「ん? あぁ、オリヴィアか。 そうそう、アガサのペーパー魔術符だね。 私が描くことが出来るのも、同じモノだよ。」


 ルナが、『先生も』って言ったので、分かったのだろう。 私が、即席の保存の魔術符を 使ったことに、気づいたみたいだ。 先生は、私の方を向いて、ちょっと微笑んだ。


「先生は、南の賢き魔女と、親しかったんですか?」


 ケイシーが、妙に よそよそしい呼び方で ママのことを言う。 いつもは、オリヴィアのママって 呼んでるのにっ!


「あぁ、同級生だったからね。」


「えっ、そうなんですか?」


 あぁ、なんか、やだ。 ルナの興味を ひいちゃった。


「あっ、ナイチ先生。 そう言えば、『悲嘆する安らぎの興奮薬』作ってたんですよね。」


 ママの話から、話題を変えたいと思った私は、先生が作っていた魔法薬について聞いてみた。


「まぁ、ちょっとした内職だね。 まだ、市場では、旧商品と切り替わっていないんだよ。 だけどね、ギルドが、経過措置を設けて 新処方へ切り替えるって発表したために、いろんな商会が、新処方の薬の在庫を積み上げている。 だから、今だけの ちょっとした需要だね。」


 そうなんだ。 エセクタの先生って、結構、お給料もらっている イメージなんだけれども、ナイチ先生も、そういう 内職するんだ。


「え? 先生って、結構、お給料を もらってるイメージなですけど、そういうのするんですか?」


 あっ、ケイシー聞くんだ。 同じこと思ったんだねぇ。 あんまりにも失礼すぎて、私は、聞けないけど・・・。


「まぁ、金銭的には、大したことないんだよ。 今は、本当に薬の在庫量が足りてないからね。 ギルドの偉い人たちに、恩を売れるっていうほうが大きいかな? それにね、オリヴィアの方が、私なんかより、いっぱい お金を儲ることが出来るよ。 いまからね。」


 えっ? なんで? 私、何にもしてないよ?


「オリヴィア、なんか、悪いことしてるの? やめてよ。 私、関係ないからっ。 オリヴィアとは、友達でも 何でもないからねっ!」


 してないっ! なんで、そこから、悪いことに繋がるのよっ。 ケイシー、頭おかしいでしょ。


「いや、『悲嘆する安らぎの興奮薬』の新処方だよ。 新しいモノの、販売が始まれば、売れた数だけ、ギルドから オリヴィアに手数料が入る仕組みがあるんだ。」


「オリヴィア、私たち、親友よね。」


 あれ? ・・・友達でも何でもない人が、手を握ってきたぞ? 知らない人と 手をつなぐ趣味は無い。 その手を軽く振り払うと、ナイチ先生に聞く。


「そんな話、初めて聞いたんですけれど、ホントですか?」


「あぁ、エセクタの生徒は、ギルドの準構成員だからね。 その権利は 守られる。」


 こうして、私は、いきなりお金持ちになることが、決定した。 あっ、まだ、お金貰ってないけどね。 ええいっ。 暑苦しいっ。 手を握るなっ。 知らない女っ!

急に親友が増えたことがある人は、高評価を押して次の話へ⇒

☆☆☆☆☆ → ★★★★★


ううん、苦しい。こっちまで、文章1行に30分かかると、美容師を更新できないデス。

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