2-33.ドアをノックしよう
エセクタ魔法魔術学院の 学院長 ニミュエ・ダームデュレクは、その人生の過半を、学院で過ごして来た。
魔法黄金時代と呼ばれた、エセクタ黄金期を知る 最後の世代でもあるし、恐怖の時代と呼ばれた、魔女狩りの嵐も、その身で 体験している。 そして、闇の魔法使い アードルフ・シタラ=ヒムゥラの時代も。
そのため、ここ エセグバートの街では、魔法魔術学院といえば、ニミュエ学院長というのが 当たり前のように 考えられていた。
ある人物を 除いて・・・。
そう、かの有名な フローラン・トライスラー氏である。『魔女魔法使い人民法廷』という 特別法廷の長官を務めた 偉大な 元 裁判官。そうして、今回の 魔女魔法使いギルド査察の責任者。
彼が、そのキャリアプランのゴール。 到達点だと考えているのが、エセクタ魔法魔術学院の学院長の座であった・・・。
[風と水の魔法使い] 【 2-33.記録書類を作りなさい! 】
「うん。 ウマいっ。 甘すぎないノーマルプレーンマフィンが いいな。」
ジェイコブは、ノーマルなマフィンが、好みのようだ。 反対に、オリバーは、ポリポリと、アーモンドを かじっている感じに見える。 ルナは、オリバーが気になるのか、その 口元を じぃぃっと 見つめている。 うん。 分かりやすい。
そして、ヨーク・・・ なんで、マフィンじゃなくて、木箱ばっかり 触ってるのよ。
「オリヴィア。 これ、ホントに 保存のペーパー魔術符を 使ってるの?」
え? そっち?
「あっ、なんか、魔力銀のインクで 描いてたみたいよ。」
って、あなたが、返事するの? ケイシー。
「スゴいな。 あり得ない。後で、ペーパーを描くところを、見せて もらえないかな?」
「あっ、私も、もう一回 見たいっ。」
そんなことを、オリバーやルナまで言い出したものだから、みんな、マフィンから 目を離して、ヨークの木箱を触ったり、持ち上げて 下から眺めたり・・・。 もぉ、私は、ヨークがマフィンを食べた 感想を聞きたいのにっ。
そうして、お昼ご飯の時間が終わったら、ヨークと 一緒にアメリア先生のお部屋へと 向かうことになった。 あっ、ヨークもジェイコブと同じで、ノーマルプレーンマフィンが、好みだったらしい。 なにも入れなかった 私の勝利だと思う!
「うーん。 3人が作ったのに、ボクが持っていくっていうのが、イマイチ、腑に落ちない。」
「ヨークが、持って行った方が、アメリア先生が 喜ぶからっ。 だよね、オリヴィア。」
「うん。 ケイシーが、ヨークに持って行ってもらうべきだって。 私も、そっちのほうが、アメリア先生が、喜んでくれると思うよ。」
はい。 ルナを含めて3人とも、アメリア先生に 持っていくのを 嫌がったとは、とても言えませんです。 銀の小箱を持ったヨークと、私たち3人は、テクテクと階段を上り、アメリア先生のお部屋の前に到着っ。
トントンっ。 ヨークが、優雅にドアをノックする。 どうぞっ の声に、そぉっと、ドアを開くと、アメリア先生は、立派な 樫の机の上に 書類を広げて 何やらチェックしている途中であった。
「あら、ヨークですか。 それに、ルナに オリヴィア、ケイシーまで。」
うーん。 ケイシーのお見立ては、正しいみたいね。 お気に入りのヨーク、成績優秀のルナ。で、私と ケイシーっていう セット。 今の呼び方から考えたら、アメリア先生の中では、そういう認識になっているのが 分かるんだもの。
「アメリア先生。 実は、今日、調理自習室を使わせていただいて、お菓子を作ったのですが、ぜひ、先生に食べてもらいたいと 持ってきました。 お口に合えばいいのですが。」
うわっ。 ヨークったら。 マジ、ホストになれるかも。
「あら、嬉しいわ。 ありがとう。 可愛らしい箱ね。」
ヨークから、銀の小箱を受け取ったアメリア先生は、顔を ほころばせて 嬉しそうに それを眺めた。
「作ったのは、ルナと、オリヴィアと、ケイシーですね。 どうも、ありがとう。」
意外にも、アメリア先生は、私たち3人が作ったことを把握していた。 へぇ・・・ って、そっか、調理実習室の使用許可を取る時に、名前を書いてた。 申請の書類を見てたんだね。 アメリア先生って、そういうところ、ちゃんとしてるなぁ。
「そうですね。 少し話は変わりますが、以前の休日に、エセグバートの街へ 素材を売りに行ったのは、ジェイコブと ケイシー でしたよね?」
「えっ、あ、はい。 フィールド教練の時に、古代森林公園で 採れた素材を、ジェイコブと、売りに行きました。 あっ、一応、ルナも 付き添ってましたけれども。素材の売却自体は、ヨークと、オリヴィアと、ジェイコブと、私のモノを 売っています。」
「分かりました。 少し、確認をしておきたかったのです。 もしかすると、販売の許可申請のことで、ヴェセックスの魔女魔法使いギルドから、こちらへ 聞き合わせが あるかもしれません。 疑義の照会があった時のために、素材を採取した状況を、ヨーク。 販売した時の状況を、ジェイコブ。 この2人を 記録責任者として4人で、書類として、まとめておいて もらえますか?」
「え? 先生、何か、問題があったのですか?」
「いえ、まだ、問題とはなっていません。 が、素材店への販売を目的とする 証明申請のチェックが入っているという伝言が、内々に、鳩で飛んできました。 何もないのが一番ですが、何かあった時のために、準備をしておくことが、大切なのですよ。」
「あっ、はい。 分かりました。 ジェイコブにも 伝えておきます。」
うーん。 ケイシーに質問をしておきながら、責任者は、ヨークと、ジェイコブっ。 さすが、アメリア先生。 こういう時、誰が 信用できるか、きちんと 把握できているわ。
「それでは、失礼します。」
その後、いろいろ 細かい話は あったんだけれども、サクッと終わらせて、アメリア先生のお部屋を退出する。 あぁ、疲れた。 やっぱり先生の部屋、ちょっと 緊張するのよねぇ。
「じゃぁ、ボクは、ジェイコブに まとめる書類について 話してくる。」
そう言って、ニコっと笑うと、ヨークは、”私に”手を振って、廊下を走って行った。 うん。 私に手を振って!
「えーと、じゃぁ、ナイチ先生のお部屋へ、行こっか。」
ナイチ先生のお部屋は、ヨーク抜きでも大丈夫。 緊張もしないし、気楽に訪ねることが 出来る。
「アメちゃん。 なんか メンドクサイこと 言ってたよね。」
「あっ、記録書類を 作って出すんだよね。 でも、そういうのは、ヨークとジェイコブに 任しておけばいいんじゃないの?」
「うん。 私は、触らないわよっ。 そういう面倒な作業、キラいっ。」
うん。私もキライだ。 適材適所っ。 ヨークとジェイコブなら、問題なく 作ってくれるだろう。 私は、この前、論文づくりで頑張ったから、今回は、お休みでいいと思う!
あんな そんなを 話しながら、ナイチ先生のお部屋の前。 今度は、ルナが、トントンって、ちょっと おっかなびっくり ドアをノックする。
「どうぞっ。」
そうして、部屋の中からは、ナイチ先生の優しい声が 聞こえてきた。
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4月も、空馬が走っていましたが、今日の15時45分頃も、空馬が走ってました。面白いですね。
ご報告 67話68話は、予約投稿をミスしていたみたいで、下書き段階で投稿して、その後、修正を、たぶん2回~3回程度、行って完成させています。修正前のお話と流れに違いはございませんが、念のため。




