1-6.男の子の寮は、刺激的っ!
エセクタ魔法魔術学院の寮は、生徒の生活と、学習のための コミュニティだ。 寄宿舎は、2人部屋で、同じクラスの生徒と ルームをシェアする。 オリヴィアの学年であれば、AからDまでのクラス分け ※ が、そのまま寮でも適用され、生活や学習など様々な場面で、プラスポイント、マイナスポイントが与えられる。 このプラスマイナスのポイントは、寮同士の対抗戦の得点として加算・減算される。 競争は、クラス同士の対抗心を刺激し、学院生活の 楽しみの一つとされる。
※オリヴィアの学年は、ABCDの4クラスである。
しかし、他の学年では、違う数のクラス分けに
なっている場合もある。
そのため、他の学年においては、寮でも、
別の組み合わせとなっている場合が存在する。
日当たりの良い南塔は、貴族階級の生徒を集めたAクラスの寮。 特別な才能を持った生徒を集めた特待生は、Bクラスで、東の塔。 そして、魔力の乏しい生徒を育成するDクラスは、じめじめとした暗い北の塔。
そうして、オリヴィアとケイシーが、ベッドに転がったまま、明日からの フィールドワーク教練について話しているのが、西の塔。 平凡で平均的な平民のための Cクラスの寮となっている。
[風と水の魔法使い] 【 1-6.ゼッケンをつけよう 】
「結局、ヨークが縫い付けることになるとは、思わなかったわ。」
「ケイシー。 あれは、やり過ぎよ。 下のシャツまで、一緒に縫っちゃってた じゃない。」
「ほんと、慣れないことは、やるべきじゃないもんね。 でも、オリヴィアだって指に針を刺しちゃったじゃないの。」
ケイシーは、可愛らしく舌を出して 笑いながら言う。
「だって、私、あんなの見たことなかったもん。 ビックリしたんだよ。 それにしても、ヨークは、何でも できるんだね。」
そうなのだ。 結局、ジェイコブのローブにゼッケンを縫い付けたのは、ヨークであった。
数時間前、ケイシーは、ローブを着たままゼッケンを縫い付けようとしていた。
「い・・・ 痛いっ。」
「あっ、ごめんジェイコブ。 針が刺さっちゃった?」
「ケイシー、頼むよ。 っていうか、これ、服ごと 全部 縫い付けてないかい?」
ジェイコブの言う通り、ケイシーが縫い付けたゼッケンは、ローブだけではなく、下の服すべて・・・ 彼の シャツまで 縫い留めて しまっていた。
「大丈夫よ。 ハサミもあるから。」
オリヴィアは、サッとハサミを差し出し、受け取ったケイシーが、チョンチョンと、縫い付けた 糸を切る。
「ちょ・・それ、ローブまで 切れてない?」
「だ・・大丈夫。 ちょっとだから。」
「ケイシー、『ちょっと』ってことは、切れてないかい? ボクのローブ。 もうダメだ。 オリヴィアっ、代わってくれよ。」
「えっ? う・・・うん。」
オリヴィアは、ケイシーからハサミを受け取り、縫い付けられた ゼッケンの糸を 切っていく。 時間はかかったが、ゼッケンは、きれいに 取り外すことが出来た。
「ローブは、着たまま縫い付けなきゃダメ? さすがに そのままだと、私、上手く縫い付ける自信ないんだけれど・・・。」
ジェイコブに告げると、返事もせずに、サッと、ローブを脱いだ・・・ そう、ご存じの通り、ローブは、上下が一続きになっており、袖のついている ワンピース形式の ゆったりとした服だ。 当然、その下は、下着・・・。
「きゃぁぁぁぁぁ。」
男の子の セミヌードなんて 見たことが無かったオリヴィアは、顔を真っ赤にし、声を上げ、飛び上がった。 そうして、縫い針は、オリヴィアの指に・・・。 もっとも、ケイシーは、じいぃいっと 凝視して、逆に、ジェイコブの顔を 真っ赤に 染めてしまったのだが・・・。
「オリヴィアっ、どうした?」
「んっ・・・なんでもないっ。」
騒ぎを 聞きつけて 飛び込んできたヨークに、針を刺してしまった人差し指を 口にくわえた オリヴィアが 答える。 そのまま治癒魔法を使って、傷口を塞ぐと、もう一度、ゼッケンを持ち上げた。
「いや、ケガしてるなら、ボクが やろう。」
ヨークは、オリヴィアの手から ローブとゼッケンを 取り上げると、ジェイコブの ベッドに腰掛けた。 膝の上に ローブを置く。 ポイッと ゼッケンを てきとうに置いたかと思うと、針と糸をチクチクチク・・・。 なんと、あっという間に ゼッケンを つけてしまったではないか。
「おい、お前、いいお嫁さんに なりそうだな。」
それを見たジェイコブは、にやにや しながら からかい、その冗談に ケイシーが 乗っかって 言う。
「あら、いいわね。 私の部屋にも1台ほしいわ。 ヨークが。」
「おいっ そんなことより、服を着ろよっ。 オリヴィアが 困ってるじゃないか。」
ヨークは、ローブを そのままベッドに投げると、顔を真っ赤にして、うつむく オリヴィアの手を取る。
「寮の入り口まで送るよ。 お前ら、2人で楽しんでろっ。」
「いやよっ。 私も寮に帰るわ。 下着姿の男の子と 2人きりで 居るなんて まっぴらよ。」
「ちょっ、服を着てないから、オレは、外に出れないぞ。」
ケイシーは、ヨークの 空いた腕を取り 掴まる。
「いいよ。 ヨークに送って行ってもらうから。 じゃねっ。」
こうして、無事ゼッケンは、縫いつけられ、2人は、ヨークと一緒に 女子寮の入り口まで 戻って来た。
「じゃ、2人とも、また明日。」
「うん。ヨーク、またね。」
「あら? 見つめあっちゃって。 お似合いね。」
ヨークとオリヴィアは、ひどく赤面し、つないだ手を パっと離すと、ケラケラと笑う ケイシーを睨んだ。 そうして もう一度、お互いの顔を見ると、手を振って離れた。
「さっ、ケイシーお部屋に戻ろう。」
「そうね、もうすっかり 暗くなってるもの。 じゃねっ、ヨーク。」
「うん、おやすみ。」
「今日は、ありがとう。」
西の空の夕焼けも、紺色に変わり、空には 大きな月が ゆらゆらと揺れる。 どうやら、明日のエセクタも、良い天気に なりそうだ。
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