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2-15.魔法素材の製造業者と販売業のギルド

 『ヴェセックス魔女魔法使いギルド』は、アルティマッジョーリと呼ばれる大組合に分類され、『魔法素材の製造業者と販売業のギルド』は、アルティミィノォリと呼ばれる小組合に分類される。


 ジェイコブたちが、魔女魔法使いギルドで得た 素材販売の許可書類を持って 向かったのは、その『魔法素材の製造業者と販売業のギルド』であった。


 素材を販売するにおいて、ジェイコブ 一行の 誰か一人でも、『魔法素材の製造業者と販売業のギルド』に所属していれば、このような 面倒な無駄手間を かける必要はない。しかし、エセクタの生徒たちが所属しているのは、魔女魔法使いギルドであって、魔法素材のギルドではない。


 このため、書類をもって たらい回しされる必要が あったのだ。


 これは、大組合に所属し、証明を持った身元のはっきりした人物が、出所のはっきりした・・・ 盗品や密猟などではない素材を 販売しようとしていることを 証明するために 必要な手続きなのである。


「これさぁ、毎回、こうなるなら 今後のことを考えて、私たちの誰か一人だけでも『魔法素材の製造業者と販売業のギルド』に 所属したら いいんじゃないの?」


「それが、出来たら、すでにオレが、申請してるな。」


「何で出来ないのよっ。 『魔女魔法使いギルド』に所属してるから、身元は、はっきりしてるでしょ? 『魔法素材ギルド』への登録は、申請するだけで 通るんじゃないの?」


「あぁ、申請すれば通るっ。 でもな、問題があるんだよ。」


 さっきから、ジェイコブが、やや不機嫌。 前を向いたまま 答えてくれないジェイコブに、ため息をつく。


 そうして、ケイシーは『魔法素材ギルド』へ向かう生徒を引率する エセクタの職員の後頭部をぼぉっと眺めた。




[風と水の魔法使い]  【 2-15.お金の事情 】




「あのっ、なんで『魔法素材ギルド』に所属できないの?」


 意を決したように、ルナが尋ねた。


「ん? 結局のところ、お金だな。」


「あぁ、私だと答えないのに、ルナが聞いたら 答えるんだぁ。」


「ちげぇよっ。 あんまり、大声で言うことじゃないからだ。 向こうについてから話すよ。」


 『魔法素材の製造業者と販売業のギルド』と書かれた入り口を通り過ぎると、受付に、さっき『魔女魔法使いギルド』でもらった許可証を差し出す。 ほとんど、確認もされずに ポンポンポンと判子が押されたら、ここで必要な作業は終了だ。


「ほかのヤツは、たぶん ここの受付で、証紙を買うから、時間がかかるはずだ。 その間に、あっちで説明するよ。」


 そう、ジェイコブが、『魔女魔法使いギルド』で 証紙を購入して貼り付けたのは、証紙の自動魔法販売機があったからだ。 やはり、『魔法素材ギルド』に来てから対面で証紙を購入し、それを貼り付けてから、もう一度書類を出すとなる。彼らとジェイコブたちとでは、かかる時間に差があるのは、当然だ。


 手間取る エセクタの生徒たちを置いて、ジェイコブたちは、ギルドの待合にある 人気のないベンチに腰かけた。 


「で、なんで『魔法素材ギルド』に 所属できないの?」


「さっきも 答えたけれども、お金の問題だ。 エセクタの生徒が、『魔女魔法使いギルド』に所属している状態は、例外中の 例外なんだよ。」


 そう、親方ではない人間が、ギルドに所属しているという状態は、例外と言えるだろう。 そうして、もう1つ大きな例外的要素。


「あのな。 金、払ってないだろ? オレたち。」


 通常、ギルドに所属するためには、毎月、賦課金や 協力金を 支払わなくてはならない。 要は、組合費だ。 そもそも ギルドとは、その構成員が 共存共栄するための協力組合である。 そうして、その活動や、維持管理には、多額の お金が必要になる。


 そのための資金が、組合費である。 もちろん、ギルド本体が、商売や依頼、あるいは金融における投資などにおいて、その資金を増やすといった行動はあるが、毎月の賦課金や その時々の協力金なくしては、その活動は 立ち行かない。


 しかし、『魔女魔法使いギルド』において、エセクタの生徒と その職員だけは、例外とされている。 それは、将来の 優秀な人材を確保するための手段。 生徒を半強制的に ギルド準構成員として扱うことで、生徒たちには、その恩恵を与える代わりに、学生が終了した時には、そのままギルドの正構成員としての 加入を促すのだ。


「まぁ、オレたちが、継続的に 古代森林公園に入って 素材を得ることが出来て、休みごとにそれを販売することができるなら、『魔法素材ギルド』に入る意味はあるんだけれども、それは、無理だ。」


 結局、継続的に素材を販売できるなら、毎月の組合費は、捻出できる。 というか、まず、黒字、上手く立ち回れば 大儲けだろう。 ただ、素材の入手が不定期で、いつ売りに来ることが出来るか 分からないような状態。 しかも、アードルフ・シタラ=ヒムゥラの復活で、日常生活にも 制限がかかるような 今の状態ならなおさら。 『魔法素材ギルド』に所属して、毎月お金を払うような 真似は出来ない。 少しくらい面倒でも、『魔女魔法使いギルド』を通して、証明を手に入れて、それを使って 素材を販売する方が、経済的に 理にかなっているのだ。


「まぁ、そういうことだな。」


「ふぅん。そっか、何をするにも、お金は必要なんだねぇ。」


 そうこうするうちに、他の生徒たちの書類も出来上がったようだ。 エセクタの職員が点呼を取り始めた。


「じゃ、行こうか。」


 こうして、ジェイコブ一行は、『魔法素材ギルド』を後にし、素材店へと向かうのであった。

『魔法素材の製造業者と販売業のギルド』で、書類を申請したことがある人は、高評価を押して次の話へ⇒

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