2-10.teaでファニーな朝食を
んー。 お部屋に帰ったら、ケイシーに 聞いてみよっと・・・。
そう、私は、お部屋に帰る途中、ぶつかった拍子に、ヨークの腕の中に、倒れ込んでしまったのだ。
「あっごめん。 ヨーク。 私、考え事をしてて・・・。」
慌てて、立ち上がって ヨークに謝る。
「ううん。 オリヴィア、ケガとか無かった?」
「うん。 大丈夫よ。 さっきまで、ナイチ先生のお手伝いをしてて、その時のことを 考えてたの。」
そうね。 ナイチ先生の 胸の筋肉のことを考えてたから、嘘じゃないっ。
「お手伝い? こんなに 早い時間に?」
「そう。 ほら、ケイシーたち、街に行くでしょ? その時に使う馬車とか、馬とかを 用意してたんだけど、そのお手伝い。」
「そうなんだ。 でも、それって、ペーパー魔術符を 使うんじゃないの? たぶん、1年生は、まだ使っちゃ ダメだから、先生が、手伝うように 言わないはず なんだけど・・・。」
「あっ、私は、ママに教わって、小さい頃から使ってたからだと思う。 それに、ヨークも使ったことに なってるでしょ? ほら、空飛ぶペーパー。」
そう、私たちは、あの事件の時、ペーパー魔術符で、空を飛んだことに なっているのだ。
「あぁ、そうだったね。 そっか。 それなら、ボクも先生にお願いすれば、ペーパーを使ってみることが できるかな?」
「ん-と・・・ 今度、頼んでみる? たぶん、ヨークなら、ナイチ先生も、OKを出してくれると思うよ。」
「ほんと? ほら、ペーパー魔術符って、ものすごく値段が高いし、危険度が高いから、いくらエセクタでも、高学年でしか、扱えないと思ってたんだ。 ぼくみたいに、魔力はあっても、体力的に、ちょっと劣る 魔法使いには、ペーパーって、不可欠だから 早く慣れておきたいんだよ。」
「え? でも、私、ヨークって、すごく筋肉があるって 思ったけど・・・。」
と言って、私は少し後悔した。 さっきの サワサワで、ヨークの筋肉を 楽しんでいたことを 暗に 自白してしまった からだ。
「ん-と、ほら、オリバーとか、ジェイコブとかは、もっとすごいんだよ。 筋力も、体力も。」
へぇ・・・ それは、面白そう。 ケイシーなら、そういうのも、詳しく知ってるかもしれない。 ちょっと、聞いてみたいな。 あっ、あとオリバーの話は、ルナにも してみたい。 どんな反応をするか、楽しみだもの。
その時、男子寮の入り口から、ジェイコブが 出てきた。
「ん? ヨーク?朝っぱらから、デートか? そろそろ、飯いかない? そだ、オリヴィアも一緒にっ。」
「あっ、私、ケイシーと一緒に行くから、一度、寮の部屋に戻らなきゃ。 じゃぁ、ヨーク、ジェイコブ、また 後でねっ。」
そうして、手を振って2人と別れ、私は、お部屋へと 戻るのであった。
[風と水の魔法使い] 【 2-10.幸せを感じちゃうね 】
お部屋に戻ると、ケイシーが、プンプンと怒っていた。
「おそいっ。 お腹すいたっ。」
「あっ、ごめん。途中で、ヨークとジェイコブに、会っちゃって。」
ジェイコブの名前が出た途端、ケイシーのご機嫌が直った。 うん、分かりやすい。
「そなの? もう、朝ごはんに行くって 言ってた?」
「うん。 今から食堂だって 言ってた。」
「じゃ、ルナを誘って、すぐ行きましょ。 何か食べないと、わたし、死んじゃうっ!」
こうして、私たちは、ルナを誘って、食堂へ。 あっ、いい匂いが するね。
食堂では、ヨークと、ジェイコブが、席を取って 待ってくれていた。
「ほらな、ルナも一緒に来るって 言ったろ? 当たった。」
ジェイコブが、ヨークに言う。
5人で、テーブルの1つの区画を占拠して、お食事開始っ。
マッシュルーム、焼きトマト、ベーコン&ソーセージ、目玉焼き、ハッシュブラウン、ベイクドビーンズ。
うーん。 おいしそう。 いっただきまぁす。
「ん? ケイシーは、パンケーキにしたんだ。」
「そう。トーストより、こっちに メープルシロップかけて食べる方が、休日っぽくない? ほら、今日は、街に出かけるんだし。」
「お前、この前、メープルシロップは、太るから やめるって、言ってたろ。」
「だから、平日は、食べてないでしょ。」
ケイシーと、ジェイコブが、いつもの漫才のような 会話を始めた。
「そうだ、オリヴィア。 ジェイコブたちが出発したら、魔法薬実験室のカギを アメリア先生の所に貰いに行くから、一緒に行こうよ。」
『悲嘆する安らぎの興奮薬』を調合するのため、わたしとヨークは、魔法薬実験室の使用許可を取ってある。 カギは、アメリア先生が、管理しているのだ。
「うん。 そうね。 ルナも、街に お出かけするんでしょ?」
もくもくと、ベイクドビーンズを、口に運んでいたルナに たずねる。
この ベイクドビーンズ・・・ 見た目は、煮豆のように見える。 煮ているのに、「焼く=ベイクする」とは、これいかに? と思うかもしれないけれど、これには理由がある。 洋風のふた付きの厚手の鍋を キャセロールというんだけれども、この料理、耐熱性のキャセロールに、豆を入れて、オーブンに放り込んで「ベイク」するのだ。 鍋の中で、煮られるので、出来る料理は、煮豆なのだけれども、調理法として、オーブンで、お鍋ごと「ベイク」したから、ベイクドビーンズ。 うーん。 言葉って難しい。
ルナは、もぐもぐと 口を動かし、お豆を 可愛らしく飲み込んだ後、答えた。
「うん。 ケイシーが、誘ってくれたの。 図書室で、本を読もうと思ってたんだけれど、ヨハネ・ゲンフライ・グーテンの活版書店が、コースに入ってるんだって 言ってくれて・・・。 私、ママと一緒じゃなく 活版書店に行くのって 初めて。」
うわっ。 ずるいくらい、かわいい。 でも、ケイシー、ナイチ先生に 上手くお願いして、ヨハネ・ゲンフライ・グーテンの活版書店にも 寄ってもらえるようにしたんだ。 さすがっ。 と思ったら、ケイシーが、裏話を暴露っ。
「そうなのよ。 ナイチ先生が、格式高い ヨハネ・ゲンフライ・グーテンの活版書店に 行きたい生徒が居るとは 思わなかったって。 ナイチ先生 自ら 付き添ってくれるって 言ってた。」
あら?先生が 乗り気なのね。 しかし、ナイチ先生は、筋肉もすごいけれど、知的なのよね。 これは、学生時代、モテモテだっただろうな。 あっ、今も、モテてるかも。 私は、知らないけど。
食べ終わったら、朝のティータイム。
授業がある日は、ゆっくりできないけど、お休みの日は、特別っ。 おいしいクッキーを ポリポリ食べながら、お茶を頂くのだっ。
みんなで 紅茶を飲みながら、アリス・テーキラのオシャレ魔女洋装店の話や、ウィリアム・ハムリンの魔法玩具ローハルボーン231番地の話で 盛り上がる。
ヨークの きりっとしてるけれども、ちょっと緩んだ笑顔には、見とれちゃうし、ジェイコブの奇想天外なお話は、とってもファニーで面白い。
ケイシーが、ケラケラと笑い、ルナも、コロコロと笑う。
あぁ、こういう空気って、なんか 幸せを 感じちゃうね。
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