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2-5.ママの失敗は、成功の母?

「って、ホントに、居合わせただけじゃん。 闇の魔法使いに襲われたとか、空飛ぶ魔女を見たとかじゃないんだ。 つまんないー。 あっ、実は、誰か、男の子と会ってたとか?」


「ヨーク以外と、そんなこと あるわけないじゃないの。 あっ・・・。」


 ケイシーが変なことを言うので、思わず、ヨークの名前を出してしまった。 見ると、ヨークも 気まずそうな 顔をしている。


「今のは、ケイシーが、悪いっ。 っていうか、オリヴィアに、何もなくて良かったんだよ。」


 ジェイコブが、ケイシーの頭を掴んで、少し乱暴に 髪をグシャグシャっと かき回す。


「ちょっ、やめてよっ。」


 ヨークと顔を見合わせて、クスリと笑う。


 ちょっと、本当のことは、みんなに言えないね。 笑いながらも、寂しい気持ちが、私の こころを チクリと刺す。


「ねぇ、オリヴィア。 私、キディヒ先生に質問があるんだけれど、一緒に キディヒ先生の研究室まで、ついて来て くれないかな?」


 少し寂しい気持ちになって 一人で しんみりしている時、ルナが、キディヒ先生の所に 一緒に行こうと誘ってきた。 うん。 気分を変えるのに いいかも。


「いいよ。 ルナ、一緒にに行こう。」


 ジェイコブと じゃれついているケイシーは、置いて行く。 私は、ヨークと、オリバーに手を振って、ルナと一緒に 教室のドアを出た。


「キディヒ先生に、どんな質問があるの?」


「ラクッチング・ナッタデコッコ触媒の溶媒に、グウィディオンじゃなくて、ツケメーンを使っちゃダメかな? って思って。」


 ごめんなさい。 聞いた私が、悪かった。 言ってることが、まったく分かんない。 そう思ったんだけれども、その後のルナの言葉に、驚かされた。




[風と水の魔法使い]  【 2-5.謝りに行こう 】




 廊下を抜け、階段を上る。 ルナは、私に向かって、キディヒ先生の所へ向かう理由を、話し始めた。


「あとね、オリヴィア、1回、キディヒ先生の所に顔を出して、謝っておこうよ。 寝ちゃったのは良くない。 かなり、心証が、わるくなっちゃう。 損しちゃうよ。」


 本当に 質問があるわけじゃなかったのね。 私が、キディヒ先生に謝りに行けるように、質問があるふりをしたんだ。 この子、スゴい。


 ルナの後ろについて、キディヒ先生のお部屋へ。 ノックをすると、返事もなくドアが開いた。


「なんだ。 アガサの娘と、その連れか。」


 うん。 やっぱり、ママの知り合いなんだね。 教えたって言ってたし・・・。 ルナが、私のわき腹を、ツンツンとつついた。 あっ、私が謝るのが先なのね。 やっぱり、自分の質問なんて、どうでもいいんじゃないの。


「あの・・・先生。 すいませんでした。」


「まぁ、ワシの話は、つまらんからの。 そもそも、魔法素材工学の授業を 1年のカリキュラムに入れたのが、間違いなんじゃよ。 こんなもん1年で、理解できる生徒なんて、まずほとんどいないんじゃよ。 気にせんでえぇ。 まぁ、試験で、最低限の点数を取れば、問題ない。 そのための小テストじゃ。 小テストに出した内容を そのまま 本試験にだすからの。」


 あっ、いいこと聞いちゃった。 それなら、授業中に寝てても 何とかなりそう。


 ルナは、私の後ろに引っ込んで、何も言わない。 えーと、一応質問があるって言って、ここまで来たんだよね? 私の視線に気づいたんだろう。 ルナは、キディヒ先生に向かって、ある質問をした。


「あの・・・ 先生は、南の賢き魔女が、失敗をされたって おっしゃいました。 でも、教科書には、先生と、南の賢き魔女は、ポリレアチーズン重合で、魔力導性の高い素材を 作り出したって、書いています。 そこが、スゴく気になったんですけど。」


 ちょっと、ルナ、さっき言ってた 質問と違うじゃない。 案外、適当なのね。


「ふん。 1年の教科書には、書いておらん。 もう、上の学年の教科書を読んでおるか。 1年の魔法素材工学の授業に 意味がないというのは、取り消そう。 名前は?」


「ルナ・・・ ルナ・セレーネ=ヘンドリクスです。」


「なるほど、覚えておこう。 それで、アガサの失敗じゃな。 気になるか? まぁ大したことではない。 ポリレアチーズン重合のな。 実験の時に、濃度を間違えたのじゃ。」


 キディヒ先生が言うには、ママは、私たちと同じ授業とその実習を、上の学年でしたらしい。 その時、混ぜる素材・・・ ラクッチン・ナッタデコッコ触媒濃度を ほんの少しだけ、間違えたらしい。


 うん。 ちょっとだけ・・・ 濃さ1000倍。 ママっ、何してるのよ。


 ところが、この失敗が、実は大成功の素になった。 粉末のポリレアチーズン重合体ができるはずが、ガラス容器の内側、溶液表面に ボロボロの膜状の物質が出来ているのを、ママと キディヒ先生。 それから、もう一人の学生が 見つけた。


 詳しく調べた結果、これが、ポリレアチーズンの薄い膜である可能性が高いとかんじた キディヒ先生は、ママが、触媒の濃度を間違えた可能性が 高いと結論付けた。 ここからが、キディヒ先生と ママと もう一人の学生のスゴイ所で、3人は、ラクッチン・ナッタデコッコ触媒濃度をどんどん濃くして ポリレアチーズン合成を行ったのだ。


 結果、濃度を どんどん濃くすると、ボロボロではない、とても キレイなポリレアチーズンの薄膜が、ガラスの表面に できあがった。


 溶媒濃度を、高くすると、触媒溶液の表面で レアチーズンの重合反応が、急速に進むことが、この薄膜ができる原因だったということで、上級生の教科書には、キディヒ先生と、ママが、これを作り出したと 記載されているらしい。あっ、失敗については、教科書に 書いてなかったので、ルナは、知らなかったみたい。


 この薄膜の重合体は、魔力導性が非常に高いため、特殊で、効力の高い「ペーパー魔術符」の材料として使われているとのこと。 へぇ・・・。 ぜんっぜん知らなかったけど、なんか、小さい頃、ペーパー魔術符を作るために、膜を作った記憶がある。 作り方も、一応、覚えてるし、たぶん日記に、作り方をメモしてるはず。 もしかしたら、私、知らずに、ポリレアチーズンの作り方を ママから教わったことが あるのかもしれない。


「でも、もう一人の学生って、誰ですか? 教科書にそんなことは、載ってなかったですけれど。」


 ルナって、何者? なんで、そんな 上級生の教科書の内容まで、全部覚えてるのよ。


「あぁ、おぬしらも、知って人物じゃ。 その者の名前は、アデノーイ・ヒンプリン。 今は、アードルフ・シタラ=ヒムゥラと 名乗っているらしいがな。」


 ルナの 無邪気な質問によって、キディヒ先生の口から出てきたのは、とんでもない人物の名前であった。

カルピスは、書いてある量より濃くする人は、高評価を押して次の話へ⇒

☆☆☆☆☆ → ★★★★★

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