2-2.新しい名前は、CDクラス?
Cクラスの生徒は、魔力の量が、私たちよりも 多いという。
確かに、Cクラスにいる 双子の姉もそうだし、時々、Dクラスまで遊びに来ていた ルナも、明らかに、私より魔力が多い。
アードルフ・シタラ=ヒムゥラ・・・ 危険な闇の魔法使いの復活に、エセクタ魔法魔術学院は、大混乱に陥った。 学校から離れる生徒が 大量に現れたのだ。 Dクラスの人数は、元の2/3になってしまった。 ただ、うちのクラスは、まだいい方で、姉のクラスは、人数が 半分以下になったとか。
うん。 そういえば、食堂の混雑を、あまり 感じなくなった気がする。
そうして、騒動から1週間たった日のホームルーム。 まぁ 薄々予想がついていたことでは あるのだけれども、クラスの統合が、発表された。
Aクラスと、Bクラス。 CクラスとDクラスを 統合して、1クラスずつ。 1年生は、合計2クラスとして、編成し直す ことに なったのだ。
幸い、両親は、私と姉が、エセクタに残ることを許してくれた。 私は、姉と違って、Dクラす。 魔力が少ない方だ。 Cクラスは、平均的な魔法使いのクラス。 座学ならともかく、実習で ついていける気がしない。
とにかく、不安だ。
荷物を抱え、順番に並んだ状態で、廊下を歩く。 教室の移動。 先生が Cクラスのドアをあける。 中をのぞくと、後方の席が、空いていた。 荷物を持ったまま ヨタヨタと歩く私を見つけて、姉が、手を振ってくれるのが 見えた。
[風と水の魔法使い] 【 2-2.探知の結界 】
後ろの席で、アニリン・ウィリアム・パキンズが、Dクラスの女の子に手を振っているのが 見える。
噂では聞いていたけれども、ほんとによく似ている。 きっと彼女が、双子の妹 モーブ・ウィリアム・パキンズだ。 紫色の髪の毛も一緒。 並んで立っていたら、たぶん、どっちがどっちか 分からなくなりそう。
ケイシーが言うには、モーブは、ルナくらい 座学の成績がいいらしい。 それって、わたし、絶対 勝てないと思う。
Dクラスの生徒が、教室の後ろの席に着席すると、アメリア先生が、教壇に立った。
「では、これより、CDクラスとして皆さんは、一緒に学んでいくこととなります。」
なんて、安直な命名法・・・ 統合されたクラスの呼び方は、CDクラス。 ケイシーと 顔を見合わせ、笑ってしまった。 センスがないにも ほどがある。
「今から行うのは、実技や実習の際の 班決めです。 6人ずつ、6グループで 行おうと 思いますので、この60分間で、グループに分かれてください。」
そっか、元Cクラスが15人。 で、今やって来たDクラスの人たちが21人・・・ だから、36人になったんだね。
班分けは、そんなに悩むことでもなかった。 私たち4人は、もう一緒に居ることを 決めている。 そして、隣に座っているのが、オリバーとルナだもの。 ジェイコブが、オリバーに「入るか?」と聞いただけで、2人の勧誘は成功。 たぶん、クラスで1番 すごい班に なったんだと思う。 ヨーク、ジェイコブ、オリバーの スペシャルな3人がいて、その上、ルナが 居るんだものね。
・・・って、そう ケイシーに言ってたら、「私は?」って聞き返された。 そして、隣でそれを聞いていた、ジェイコブは、大爆笑。 思いっきり、頬っぺたを つねられている。 うん。これは、私がちょっと悪かった。
ぐるりと見渡すと、元Cクラスと、元Dクラスは、別々に グループを作っている。 これは仕方ないかな? もう3か月も、一緒に過ごしているんだから。
けれども、予想通りではあったけれど、アニリンとモーブの双子姉妹は、同じ班になっていた。 あそこの班だけ、CとDの生徒が混在しているのは、きっと、双子のおかげだと思う。
一番前の列の6人・・・ 私たちは、動く必要が無かったけれども、もう一度、席替え。 うーん。 これなら、さっき、動く必要が 無かったんじゃないかな?
「思ったより、早くグループ分けが出来ましたね。 それでは、今後の注意事項を説明します。 まずは、結界についてです。 今朝、学院の職員と、魔法省の職員で、エセクタの周囲に、光魔法の探知ペーパー魔術符による 結界を張りました。 これによって、闇属性の契約をしている 魔法使いが侵入してきた場合は、私たちは、それを 知ることが出来ます。」
え? いま、アメリア先生は、なんて言ったかしら? 不穏な言葉が 聞こえた気がした。 ちょんちょんと、ヨークを ツンツンと つついて聞いてみる。
「あぁ、闇属性の契約をしていると、光属性と反発するだろう? その反発を検知する魔法のはずだよ。 アードルフ・シタラ=ヒムゥラの侵入を 防ぐことはできないだろうけれど、エセクタに入ってきたら、学院内のどこにいるか 分かる仕掛けだろうね。」
「今、検知してると思う? 闇の属性魔法を 契約してたら、すぐ分かる?」
「今朝、結界を張ったって、先生が言った以上、すでにエセクタは、結界の内部になっていると思うよ。 だから、アードルフ・シタラ=ヒムゥラが 入って来たならば、分かるんじゃないかな? あぁ、でも闇属性の魔法を契約している人なら、誰でも、光属性と反発するから、人物の特定は無理か? ジェイコブ、どう思う?」
ヨークが、ジェイコブに尋ねる。
「特定は、無理だろうね。 光の属性で契約している人が 直接結界を張ってたら、別だろうけれども、ペーパー魔術符って言ってたから。」
「ヨーク、ジェイコブ。 何か質問があるのですか?」
あっ、アメリア先生に叱られる・・・ これ、わたしのせいだ。
「先生、すいません。 ちょっと 疑問に思ったので・・・。」
ヨークは、素直に謝り、しかも、分からなかったことを 質問し始めた。
「すばらしい。 ヨークとオリバーらしい、いい質問です。」
嘘っ。 これ、褒められるパターンなの?
「やっぱり、ヨークとジェイコブは、アメリア先生のお気に入り なんだろねぇ。」
ケイシーが、小さな声で呟く。 まぁ、その恩恵をこっちにも、おすそ分けして もらえるから、私も、ケイシーも、得してると思う。
そうして、アメリア先生が教えてくれたのは、光魔法の探知結界について。
そう、ヨークやオリバーの想像通り、すでに エセクタ魔法魔術学院の敷地内は、ペーパー魔術符の結界が 効力を発揮していた。 そして、光属性の魔法に反発する属性を持つ人が、侵入してきた場合、その侵入を 検知できるうえに、反発している場所を 特定できるという。
「分かりましたか? 特にDクラスの皆さんは、魔力が少ないことを 気にされている人も 多いと思います。 しかし、ペーパー魔術符を使った魔法には、魔力の多寡を 気にしなくてよいものが たくさんあります。 魔力が少ないことを 悲観するのではなく、自分に何が出来るかを 考えて、行動することが 大切ですよ。」
アメリア先生の言葉に反応して、教室の後方から、ため息の漏れるような声が、聞こえる。 おそらく、魔力の少ない Dクラスの生徒たちだ。
「ほら、オリヴィア。 心配しなくても、もう結界は、発動しているみたいだよ。」
「うん。 ヨーク、ごめんね。 私のせいで怒られるところだった。 聞いてくれて ありがとう。」
わたしが、闇の魔法使いのことを怖がって、結界が 既に発動しているかどうか気になっていると、ヨークは、勘違いしたみたい。 結果的に、良かったかな?
オリヴィアは、ヨークに笑いかけた。
・・・でも、どう考えても、この結界、闇属性と契約している魔法使いを、探知出来ていないのよね。
自分の左手の中指を見つめ、ほっと、息を吐くオリヴィア・・・ そうして、彼女は、午前の授業が終わったら、こっそり、ある実験をしようと 心に決めた。
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んー。難産っ。




