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2-1.そして朝がやってきた

 Dクラスの中は、先生のその言葉で、大きくざわついた。


 恐ろしい夜が明け、朝が、やって来た その日。


 私が エセクタに入学してから、一番慌ただしい日となった その朝は、前の日と同じような静かなものに思えた。


 教室に入ると、いつものように ホームルームが始まる。


 しかし、いつも にこやかな先生の顔が、おかしい。 妙に緊張した・・・ なんだろう? ピリピリと ひきつっている感じ。 そうして、開口一番に告げた。


「アードルフ・シタラ=ヒムゥラの生存が、確認されました。」


「嘘だろっ。」


「5年くらい前に そんな話が出た時は、吸血鬼と、見間違えただけじゃ なかったか?」


 クラスの中がざわつく。


 アードルフ・シタラ=ヒムゥラ・・・ 教科書にも出てくる 歴史上 有名な闇の魔法使い。


 でも、南の賢き魔女によって、滅せられたって・・・。


「昨日、魔法省のランスロット・マーリン部と、ニミュエ学院長が、その復活を、その目で確認したそうです。 今回の情報に間違いはありません。 吸血鬼でも、雪男でもないのです。 アードルフ・シタラ=ヒムゥラです。 今後、皆さんが、エセクタで 安全に生活し、学ぶことが出来る 保障が、出来ない可能性があります。 今朝、学院の鳩を 皆さまの保護者に飛ばしました。 鳩の返信で、保護者の方の許可が出た方のみ、学院に残ることが出来ます。 その他の方は、自宅に帰っていただくことに なります。」


 自宅に帰る? そんな・・・ 私は、言葉を失った。


 


[風と水の魔法使い]  【 2-1.席替え 】




 Cクラスの中は、ずいぶんと寂しくなった。 もちろん、アビーもイヴリンもいない。 あの日の午後、イヴリンの両親が、彼女を引き取りに来た。


 あとで、オリバーから聞いた話では、泣き崩れる両親が、エセクタ魔法魔術学院のことを 責めることは、一切なかったらしい。 学院長先生は、土下座をせんばかりの勢いで、平謝りだったらしいけれども。


 Cクラスが寂しくなったのは、それだけではない。 クラスの生徒が 半分くらい いなくなったのだ。


 あの日、伝書鳩が、生徒の保護者へと送られた。 アードルフ・シタラ=ヒムゥラの 復活を 告げる通知だ。


 その後が、大変だった。


 返信を持った鳩たちが、エセクタの上空を飛び回り、鳩小屋の周りを、抜け落ちた羽で、いっぱいにした。 両親から、スグに帰宅するように言われた生徒たちは、荷物をまとめて 帰宅の準備をした。


 それに、残った私たちの授業も、1週間中止。 でも、外出は、禁止された。 ケイシーとジェイコブのお買い物も 延期 ・・・そして、私とヨークの魔法薬づくりも。


 ・・・あぁ、つまんない。


 まぁ、そういう経緯で、28人いたCクラスのメンバーは、15人まで 減ってしまったのだ。


 ただ、これは、Cクラスだけではない。 貴族階級の生徒を集めたAクラスも、海外からの特待生などが居るBクラスも、生徒が居なくなっている。 特に、Bクラスは、海外からの特待生が、全員、帰国してしまったと 聞いた。


 Dクラスで残ったのは、20人くらいとか。 このクラスの生徒は、比較的多く、人が残っているみたいだ。 両親など家族が、魔法使いでない生徒が多いことから、危険な 闇の魔法使いと聞いても、実感が湧かないのが理由だろうと、ヨークが、言っていた。


「おはようございます。」


 朝のホームルーム。 壇上に立ったアメリア先生が、良く響く声で皆に話しかける。 人があまり居ないから、余計に教室に声が響いてるね。


「皆さんご存じの通り、先週の騒動で、エセクタで学ぶ生徒は、ほぼ半分の人数になりました。 今の人数でも、座学には、問題ございませんが、実習や実技になると、少し活動に困難があるかと思われます。 そこで、先生方で話し合った結果、クラスの統合を行います。 AクラスとBクラス。 それから、CクラスとDクラスを、一緒にまとめるということになりました。」


 教室に、小さな囁き声が、聞こえる。やはり新しい子たちが、クラスに入ってくるのは、不安なのだろう。 それに、Cクラスより、Dクラスの方が、人数が多い。


「ご存じのように、魔力量が、すこしだけ小さいのが、Dクラスです。 代わりに、あちらのクラスの生徒は、ほかのどのクラスよりも 座学の平均成績が、良いです。」


 その通り。座学の平均成績は、D≧B>C>Aの順番だと言われている。 まぁ、ヨークやルナみたいに、DクラスやBクラスでも、座学のトップを取れる可能性のある人は、Cクラスにも、いるけれどもね。


「ですので、実技では、Cクラスが、Dクラスを引っ張ってくれることを願っています。 そして、座学では、Dクラスの生徒の良い所を、盗んでください。 彼らは、優秀です。 魔力量の多寡で優越を考えず。 総合的な 魔法使いとしての力を 身につけていきましょう。」


 アメリア先生は、こう話を結んだ。


「先生、クラスの統合は、いつ 行う予定なんですか?」


 ヨークが手を上げて質問する。 うん、かっこいい。 こういう時の、ヨークって 絵になる。


「今日です。 授業は、Cクラスの教室を使う予定ですから、Dクラスの生徒が、こちらに移動してくることになります。」


 そこで、アメリア先生が、パンパンと 手を打った。


「はい。 いろいろ思う所はあるでしょうが、静かにしましょう。 この後、Dクラスの生徒たちがやって来ますので、一度、座席を整理します。」


 確かに、ぐるりと教室の 座席を見渡すと、当然、櫛が抜けたように 空いた席が目立つ。


「後ろに座ってる皆さんは、前に詰めてください。 席順は、フィールド教練で組んだ 班のメンバーが、順に並ぶ形にします。 よろしいですね。」


 こうして、休暇明けでもないのに、季節外れの席替えが始まった。 私の隣は、ヨーク。 ケイシーの隣は、ジェイコブ。 うーん。 ちょっと、頬が、緩んでしまう。 人数が少なくなったのは、寂しいけれども、ヨークと並んで 座れるのは、うれしい。


 見れば、ケイシーも、言葉では イヤそうに、ジェイコブを イジっているけれども、ご機嫌な時に、よくやっている 耳をピクピクっと 動かす仕草で、その感情が見て取れる。 そして、ケイシーの隣は、オリバーと ルナ。 意外にも、ルナの顔が緩んでる。 もしかしたら、前から、オリバーのこと、好きだったのかな?


 こうして席替えが済んだ時、ガヤガヤという 声と共に、Dクラスの生徒たちが、教室へと なだれ込んできた。

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