表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/80

1-31.アビーの憂鬱2

 その日、両腕のヒモ・・・ アメリア先生は、反省の紐と言っていたけれども・・・ そのヒモが取れた。 私が、このヒモを隠すために 巻いていたリストバンドのような ブレスレットは、魔力銀で出来ている。 魔力の放出が抑えられている間、魔力を蓄積する力のある不思議な銀の素材を身につけることで、ヒモを隠すだけでなく、少しでも 魔力の増加を図ろうと 考えたのだ。


 そうして、アメリア先生の言葉が、教室内に響く。


「明日から始まる 古代森林公園でのフィールド教練は、みなさんの1年度の成績に 大きくかかわってきます。 」


 私は、ずっと、ドキドキしながら この時を 迎えていた。


 なぜなら、3日前に行った 座学の前期中間試験で、ルナ、ヨーク、ジェイコブに次ぐ 4位の成績を収めることが出来たのだ。 4位っ。 そう、4人目。 これが、大きな意味を持つ。 古代森林公園でのフィールド教練は、4人組の班行動。 この順位ならば、ヨークと同じ班になれるっ。 あと、ルナとも。


 グループ分けの発表を待つ。 教室の中が、ざわざわと騒がしくなる。 今からはじまる グループ分けによって、自分の1年度の 成績が変わってくるのだから 当然だ。


「はい、それでは、みなさん。 自分が信頼できると思う、4人ずつのグループに分かれて ください。」


 ・・・え? 信頼できる 4人?


 アメリア先生の その言葉は、私を 絶望の底に 突き落とした。




[風と水の魔法使い]  【 1-31.男子寮に乗り込む前に 】




 視界の端に、オリヴィアが見える。 ケイシーが見える。 ジェイコブが見える。 ・・・ そしてヨークも。


 意味もなく くっついたり、ゼッケンを 取り合ったり、じゃれついてる・・・ ホント 目ざわりっ。 なんで、成績順じゃないのよっ。 Dクラスは、座学の成績順だったって聞いたのに。


 さっき外した ブレスレットを、もう一度、両腕につけ、こぶしを ぎゅっと 握りしめていると、ルナの声が 聞こえた。


「えーと・・・ アビーが良いなら、一緒に 班を組んでもいいよ。」


 もぉ。 この子は・・・ イヴリンとオリバーの2人と 班を組むつもり? イチャイチャ カップルを連れて、いい結果・・・ いい成績を取れるわけ ないでしょっ。


 そうは思ったけれども、ルナが、不安そうに 私の方を見ながら、オリバーを チラチラ見ている。 もぉ、いいわよっ。 いつも ルナは、私のことを 考えて行動してくれている。 ならば、私も、ルナに 協力してあげなきゃダメだ。


 それに、よく考えたら、オリバーは、実技でも、ヨークに劣らない 魔法の腕がある。 ヨークも、ジェイコブも あの子・・・ オリヴィアに 取られちゃったのなら、オリバーを メンバーに入れるのは、悪いことではない。 まぁ、ルナの キラキラした目は、絶対、成績のことなんて 考えてないけどね。


「ふたりとも、仲いいね。」


 あぁ、・・・ なんで、イヴリンと、オリバーに、仲いいね なんて、言ってるのよ。 それじゃ、2人の仲が進むだけよ。 そう思って、イヴリンと、オリバーの イチャイチャムードを 壊してやろうと考えていると、アメリア先生が、こちらに向かってきた。4人で、チームを組んだ途端だよ。うわっ、こっそり 見てるんだ。 この人。


「アビー。 よく頑張っていますね。 特に、最近の座学の伸びは、本当に素晴らしいです。 あなたに、この班のリーダーを任せます。 腕章には、緊急時には、信号を発する魔法が、かかっています。 魔力を込めると、赤い光が 空へと打ち上げられるとともに、魔力の波が、森の入り口に届く仕組みです。 危ないと思ったら、魔力を込めなさい。」


 アメリア先生は、私にリーダーの腕章を、オリバーに、同じ仕組みの魔法がかかっている 副リーダーのゼッケンを渡すと、ルナと、イヴリンには目もくれず、離れて行く。 私の座学のことを 褒めてくれたけれども、座学なら、ルナに勝る生徒は居ない。 ルナを 相手にしないってことは、たぶん、先生は、実技・・・ 魔法の力が強い人を、より評価する人 なんじゃないだろうか? そんな気が した。


 寮に戻った時、ルナが、1冊のノートを 取り出した。


「あのね。 先にDクラスが、古代森林公園でフィールド教練を やってるのは、知ってるでしょ? あそこの子たちは、魔力が少ないから、宝は隠されなかったらしいんだけれども、たぶんチェックポイントは、同じだわ。 だから、問題になるのは、宝の隠し場所。 去年のCクラスの隠し場所は、地図で言うと、ココね。 精霊の樹木がある場所で、木のウロに、小さな一角獣の角を、4本 隠していたらしいの。 で、一昨年は、神隠しの滝に、ケンタウルスの たてがみ。」


「すごい。 良く こんなの調べられたね。」


 私が、ビックリしながら 相槌を打つと、ルナは、得意そうに、ノートをめくりながら 説明する。


「チェックポイントの話は、Dクラスの子たちに教えてもらったわ。 だけど、これは、他の班の子たちも、知っていると思う。Dクラスの子が言うには、1個の水晶に魔力を注ぐ時間が、30分くらい。だから、私たちだと、10~15分だと思う。 宝については、2年生と、3年生のクラスまで、聞きに行ったの。 1年の子で、聞きに来た子は居ない って聞いたから、たぶん、私たちしか知らないんじゃないかな?」


「そうだね。 ルナの言う通りだと思う。」


「それでなんだけれども、私、明日は、まず 宝を探しを 最初にした方がいい思う。 チェックポイントの位置は、みんな知ってるし、どのくらい時間が かかるかも、今みたいに、ちょっと考えたら 分かることでしょ? だから、他の班の人たちは、チェックポイントを 全部通過するまでの時間を計算して、余った時間で 宝探しをすると思う。 だから、みんなが、チェックポイントを通過するために 手間取っている間、私たちだけが、宝探しをする時間が出来るわ。 ね、最初に 宝を探すほうが いいでしょ?」


 本当に、ルナは、よく考えている。 確かに、私が一人で考えたならば、チェックポイントを全部通ってから、余った時間で 宝探しをしよう って考えるもの。


「じゃぁ、ルナ。 精霊の樹木と、神隠しの滝を 最初に探すのね。」


「ううん。 去年、一昨年って、隠し場所が、変わっているでしょ? だから、精霊の樹木と、神隠しの滝は、後回しにする。 図書館でも、色々調べたんだけれど、精霊の樹木でも、神隠しの滝でも無いとすれば、今年は『聖なる魔の祠』って呼ばれている『賢き南の魔女の神殿』に、隠されるんじゃないかと 思うんだ。」


 『聖なる魔の祠』なのに『神殿』って、どういう命名方法よ。 真面目に考えると、頭が おかしくなりそうだわ。 それにしても、また『賢き南の魔女』なのね。 名前を聞くだけで、ちょっと イライラしちゃう。 でも、ルナが そこまで言うなら、そこにある確率が 高いんだろうなぁ。


「ルナっ。 じゃぁ、それをオリバーの前で、話してごらんなさいよ。 オリバーが、ルナの頭の良さに気づいて、イヴリンから、あなたに 乗り換えてくれるかもしれないわよっ。」


 軽く意地悪を 言ってみようと思った 私の言葉に、ルナは、顔を赤く染めて黙ってうつむく。 うわっ。 かわいい。 この顔を見たら、本当に、オリバーが、ルナに乗り換えちゃうのもあるかもね。


「ほらっ。 フィールド教練は、明日なんだから。 今から、男子寮の オリバーの部屋に 行きましょっ。」


「えっ、ちょっと待って。 オリバーの部屋? ごめん、私、シャワー浴びてくる。」


 いやいや、私と 一緒に オリバーの部屋に行くんでしょ? シャワーを浴びておかないと ダメなことが、起こるわけないでしょ。


 普段は、冷静なルナが、ちょっと パニックを起こして、部屋の シャワールームに 駆け込むのを見ながら、私は、ひとつ背伸びをした。


両腕にハメてあった 2個の魔力銀のリングブレスレットを外して、机の上に並べる。 よし、ルナが、シャワーを浴び終わったら、男子寮に 乗り込んじゃうぞっ。

テストを受けるときに、過去問を必ず確認する人は、高評価を押して次の話へ⇒

☆☆☆☆☆ → ★★★★★

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ