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1-26.魔法訓練場と土のドーム

 オリヴィアを、寮へと送り出した後、アメリア先生と、ナイチ先生は、東棟のはずれ・・・ 魔法訓練場へと移動した。 そこに置かれていたのは、緋色のヒモで グルグル巻きにされた 土のドーム。


「そろそろ、到着する時分ですね。 ナイチ先生は、最近、ランスロット・マーリン部と 関わることは、ございましたか?」


「クリームアン戦争で、散々、やり合いましたよ。 あそこのメンバーは、元々、他の部隊との折り合いが良くない。 それでも、攻撃に参加する部隊とは、多少の協力関係があるんです。 しかし、治癒部隊に対しては、そういった配慮というものがない・・・ しかも、向こうの方が、権限が上ですから。 本音を言えば、顔を 合わせたくないですね。」


「そうですね。 あの部署は、昔から、変わってないですからね。」


「えぇ、変わってない。 むしろ、あの頃より、悪くなってるかも しれないですね。」


 2人が、同じタイミングで、ふぅっと、ため息を吐いた。 そして、ほぼ同時に、訓練場の扉が音を立てて 開いた。


「こちらです。」


 扉の前・・・ そこでは、魔法省ランスロット・マーリン部の ガラハド・マルジンを案内する 学院長ニミュエ・ダームデュレクが、エセクタ魔法魔術学院の職員を従えて、訓練場に足を踏み入れようとしていた。




[風と水の魔法使い]  【 1-26.ガラハド・マルジン部長 】




「アメリア・スミス=ミラーでございます。 この度は、このような場所に 足をお運びいただき、恐縮でございます。」


「ご高名は、かねがね承っております。 本日は、よろしくお願いします。」


「お久しぶりです。 フローレン・ナイチです。」


「あぁ、学院に、お戻りでしたか。 キナコ公国では、こちらの部署の者が、少々 失礼いたしました。 戦争は、難しいものです。 多少の行き違いは、お許し願いたい。」


 訓練場にやって来たのは、ランスロット・マーリン部のガラハド部長であった。 闇属性魔法の使い手を 捕縛や無力化する この部署のメンバーは、当然ながら、クリームアン戦争における 闇属性の魔法使いの対処にも、活躍した。 そのため、ガラハドと、治癒部隊の上級指揮官であったナイチ先生には、面識があったのだ。


「その土のドームが、その生徒を 封じてある檻ですかな?」


 アビーを閉じ込めてあるドームを指差し、ガラハド部長が尋ねる。


「そうです。 その事態に直面した生徒が、彼女を拘束していたものを、そのまま緋色のヒモで 封印しました。」


「生徒が拘束した? 校長、闇属性を抑え込むことが出来る、光属性の生徒がいたという 話は、年初報告にありませんでしたが?」


「アメリアっ。」


 詳細を把握していない ニミュエ学院長は、アメリア先生に、その対応を任せる。


「土魔法を得意とする生徒と、木魔法を得意とする生徒が、協力して 押さえたようです。」


「それは、無理だ。 1年・・・ しかも、入学から3か月の段階で 闇の魔法使いを押さえられるなど、信じられん。 エセクタは、何を隠そうとしているのだ?」


「2人とも、学年でも、5本の指に入る優秀な生徒です。 しかし、最初は、木魔法を得意とする生徒だけで、取り押さえようとしたそうです。 当然ながら、これは、闇魔法で反撃され、逆に、拘束されたそうです。 しかし、ペーパー魔術符による アクシデントがあり、闇魔法が、解除されたタイミングで、反撃し、ギリギリのところで、彼女を制圧したと聞いています。」


「1年生に、ペーパー? ニミュエ学院長、そんなカリキュラム申請は、教育部から、聞いていないぞ。 エセクタは、そういう違反行為を しているのか?」


「お話の途中ですが、失礼いたします。 今回のフィールド教練において 宝の設置したのが、私です。」


 ナイチ先生が、言葉に詰まる学院長と、ガラハド部長の間に入った。


「戦争から帰って来たばかりの 君は、カリキュラム策定に、関わっておらんだろう。」


「はい。カリキュラム策定には、関わっておりません。 しかし、今回のペーパーの使用については、私が、監督をしておりました。」


「ほう、カリキュラムに無い1年生のペーパー使用を、勝手に 行ったということか?」


「宝を見つけ、一番にゴールした班の生徒に対する、褒美です。 特に優れた成績を収めた生徒たちに、褒美を与えることは、昔から行われており、1年次のフィールド教練での 慣例として魔法省の教育部でも、容認されているものだと 認識しております。 今回の褒美は、3年次の授業を体験できるというものでしたので、先日、3年生の授業で使ったばかりの、飛翔の魔術符・・・ ペーパーを、ゴール地点の近くで、体験使用させておりました。」


「それでは、話が合わぬ。 アードルフ・シタラ=ヒムゥラの領域が、森の奥深くにあり、そこで、事件が起こったと聞いている。 ゴール地点でペーパーを使用しただけでは、森の奥の事態に 関与しようがないではないか。」


「その通りでございます。 普通であれば、3メートルほど、空に浮くだけのことです。 しかし、ペーパーが暴走しました。 1年生が、魔力を込めただけで、生徒の体が・・・ しかも2人もです。 体が、空中に浮くだけではなく、森の奥へと飛ばされました。 こちらが、残ったペーパー魔術符です。 これに、不具合があったとしか 考えられません。」


「ふむ・・・ この印は、魔術符研究部の販売したものか。 これは、魔法省・・・ いや、ランスロット・マーリン部で 預かって、調べておこう。」


「よろしくお願いします。」


「で、この中に、3属性目の魔法を使った・・・ しかも、闇属性を持った魔女を 中に封じていると。」


 再び、土のドームに向き直ったガラハド部長は、先ほどナイチ先生から受け取ったペーパーとは違うペーパー・・・ 少し大きめの魔術符を、懐から取り出した。


「それでは、アメリア君、封印を解いて、ドームを崩してもらえるかな? 学院長、ナイチ君。 後ろに下がって 警戒してくれたまえ。」


「準備は、よろしいですね。」


 アメリア先生は、その手の平を 巻いてある緋色のヒモに当て魔力を込めた。フッと、ヒモが取り払われる。 そうして、バラバラと、土のドームが崩れ、中からぐったりとした 赤毛の少女が、転がり出る。


「これが、闇の魔女? この少女が?」


「お確かめください。 それを確認できるのは、ランスロット・マーリン部だけでございます。」


「そうだな。」


 ぐったりと倒れる小さな子供。 それを見て、危険は少ないと判断したのであろう。 先ほどの厳しい顔から、やや穏やかな表情となったガラハド部長は、魔術符に魔力を込め、ひょいと、少女・・ アビーの方へと投げつけた。


 ジュブブブブブブ


 溶けるような音を立てて、形を変えたその魔術符は、黒く変色すると、小さい塊となって 地面に転がった。


「なるほど、この子が使ったかどうかはともかく、闇属性魔法が使われたことは、間違いない。」


 コンッと、黒い塊を足先で蹴飛ばすと、ガラハド部長は、懐から小さな聖水器・・・ 聖水を入れる容器を取り出した。

教会で、聖水を頭からかぶったことがある人は、高評価を押して次の話へ⇒

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