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1-20.つながる道

「オリヴィアっ。 下がって。」


「ヨーク、こっちよ。」


 オリヴィアと、ヨークは、廊下の飛来物を避けるように 小神殿の入り口の方へ・・・ そこは白壁で、入り口と呼べる穴は存在しないのだが・・・ 移動した。 ちょうど、大人なら1人分。 オリヴィアたちなら、なんとか2人、入り込むことのできる 狭い隙間が、そこに存在したのだ。


 柱と壁の狭い隙間で、身を寄せ合う。


「ごめんね、ヨーク。 私、間違ってたみたい。」


「えっ? なにが?」


「あのね、私、森の道に埋まってた 石板の文字を見て、この神殿は、ママのお部屋だって 思い込んでたの。 だから、ヨークが、罠だって言ってくれてるのに、そんなはずは無いって・・・ ごめんね。 ヨークまで危ない目に・・・。」


「ううん。 違うよ、オリヴィア。 罠って言うのは、邪悪なって意味じゃない。 外に居た時も、中に引きずり込まれてからも、この神殿からは、悪い気配なんか まったく感じられない。 むしろ、神聖なオーラ・・・ あたり一帯を浄化する気を 感じるくらいだっだ。 南の賢き魔女アガサ・ボナム=カーターの神殿だと言われて、もっともだと思うことはあっても、否定することは、誰も しないはずだよ。」


「だって、罠が・・・。」


「さっきも言ったけれども、罠って言うのは、邪悪なって意味じゃない。 もしかしたら、この神殿を 警備する 意味があるかもしれないし、神殿に入る 資格を持つ者かを 確かめる 試しの意味があるかもしれない。」


「試しの意味?」


「うん、向こう・・・奥が危険であれば、力の無いものが、奥へ進むのを防ぐために、障害物が設置されていても おかしくないだろ? 廊下の奥へ進むだけの力が あるかどうかの 試練だね。」


「ママの試練・・・。」




[風と水の魔法使い]  【 1-20.通らない魔力 】




 奥に通じる廊下からは、まったく音がしなくなり、何者の気配も感じられなくなった。


「ねぇ、ヨーク。 私、ママの試練なら、受けてみたい。」


「オリヴィア。 それは、ボクのただの想像だよ。 ただの侵入者よけなのかもしれない。」


「うん。 それでも、行ってみていい?」


「そうだね、向こうの音もおさまったし、どんな状態か、ボクも少し気になってる。 でも、危険なことが無いように、注意しながらだよ。」


「ありがとう、ヨーク。」


 柱と壁の狭い隙間から はい出した2人は、互いの手をぎゅっと握って、奥へと続く廊下へと向かう。


「あっ、また、何か倒れてる。」


「1度、罠が作動して、元の状態に戻ったのかもしれない。 もう1回、同じように入っても、大丈夫かどうか・・・。」


 ヨークは、廊下の手前で立ち止まり、先ほどのように足を踏み入れるかどうか悩んでいる様子。


「あれって、エセクタのローブじゃない?」


 オリヴィアの指が、倒れている人をさす。


「うん。女の子・・・さっきと一緒かな?」


「でも、こっちを向いてる・・・ あれ、ルナじゃない?」


「ルナ・・・ アビーと いつも一緒に居る子か。」


 アビーを思い浮かべたのか、ヨークが、少し顔をしかめた。


「行こう、ヨーク。 ルナを助けよう。」


「オリヴィアっ。」


 オリヴィアは、ヨークを追い越し・・・ 繋いだその手も 既に放していた・・・ 廊下へと足を踏み入れ駆けだした。 慌てて、後に続くヨーク。


「ルナ、大丈夫?」


 オリヴィアの手が、ルナの体に触れる。 その瞬間、辺りが真っ白に光り、3人の体が浮き上がった。 ルナの体の周りに まとわりついていた闇が、奥へと吸いこまれるように消える。


「オリヴィアっ。」


「ヨーク、ルナの 意識がない。」


「まずは、ルナより、自分だっ。 自分の体を 守るんだ。」


「でも・・・ きゃっ 」


 ルナに、意識はない。浮いた体が、このまま落下したならば、大きなケガをしかねない。 オリヴィアが、ルナの体を支えようと、その体に もう一度 手を伸ばした瞬間、奥へと吸い込まれた 闇に続くかのように、ルナ、オリヴィア・・・そしてヨークの順・・・浮いた体が、廊下の向こう側へと 吸い込まれていく。


「オリヴィアっ。」


 ヨークが、その手をオリヴィアの方へ差し出した。 オリヴィアの左手が、ルナのローブを掴む。 そうして、逆の右手を伸ばし、ヨークの右手を かろうじてつかんだ瞬間、3人の体が 緑色の雑草の上に投げ出された。



******************************



「る・・・ルナ? ヨーク? それにオリヴィアっ。」


 オリバーは、イヴリンの体を引き寄せた。 突然、人間の体が、こちらに飛んできたからだ。


 現れたのは、ルナ、オリヴィア・・・そして、ヨーク。 不思議なことに、3人の体が、白い光に包まれてる。


「なんなの。 一体・・・。 なんで、いつも邪魔するのよっ。 みんな、消えちゃえばいいのよっ。」


 アビーが、雑草の上にたたずむ 5人に向かって黒い魔力を放出した。 闇の拘束が、その まがまがしい力をもって、襲い掛かろうとする。


 しかし、その闇が、オリヴィアたちを包む 白い光に触れた瞬間、黒い蔓-ツル 闇の拘束は、ボロボロと 崩れてしまった。


「アビー・・・。なんで、私たちを攻撃するの?」


 オリヴィアは、信じられない思いで、アビーを見つめる。 しかし、ヨークは冷静であった。


「オリバーっ。アビーを捕まえてくれっ。 君の木魔法なら、出来るはずだっ。」


「それが、通用しないんだ。 さっき やっている。」


「今は、ボクが居る。 守りは、ボクに任せて、もう一度、試してくれっ。」


 オリバーが、手を広げ、その魔力で、緑色のツタをアビーへと飛ばす。 手、足・・・ そして体。 先ほどよりも 強くっ。 彼の魔法は、確かに アビーを捕らえた。


「こんなの、すぐ抜けられるわっ。 分かってるでしょ。」


 イライラとした口調で、アビーは、その緑の拘束に 闇の魔力を通そうとする・・・ 上手くいかない。 オリバーの体・・・ そして、その発動した魔法にまで、オリヴィアたちが纏-マト っていた白い光が まとわりついているのだ。 アビーが、黒い魔力を放出しても、光が、その闇を かき消してしまう。


「よしっ、このまま、緊急信号を上げてくれ。 ボクの腕章は、置いてきてしまったんだ。」


「いや、こっちのゼッケンも、闇の魔力のせいで 使えないっ・・・ えっ? 戻ってる?」


 いつの間にか、白い光が、闇をかき消したため、オリバーのゼッケンを包んで邪魔をしてた 黒い闇の魔力が、その力を失って、消えてしまっていたのだ。 オリバーは、左手の木魔法を 解除することなく、右手をゼッケンに当てた。 そのまま、魔力をゼッケンに通すと、ゼッケンであった布は、宙に霧散し、空には、黄色い光が打ちあがった。


「よしっ! あとは、このままの状態を維持する。 オリバー、魔力は、大丈夫だろうな。」


「あぁ、このままなら、しばらくは、持つ。」


「それなら、ボクは、今から、全ての魔力を使う。」


 ヨークは、左手を地面に当て、ぐっと魔力を込めた。 その魔力は、地を伝い、拘束され転がるアビーの元へ・・・。 そこにたどり着いた瞬間、ヨークの魔力が、土壁・・・ 真球のドームを作り上げた。 中には、拘束されたアビーの体・・・。


「ふぅ・・・ ボクと、オリバーの2重の拘束だ。 いくら、アビーでも、そう簡単に 抜け出せないだろう。」


 ほとんど すべての魔力を、使い切ったヨークが、地面に倒れ込む。


「ヨークっ。」


 その体を、オリヴィアの小さな体が、支えた。


「オリヴィア、大丈夫かい? ケガはなかった?」


「それは、こっちのセリフ。 立っていられないんでしょ。 無理しないでっ。」


 ふらつきながら、立ち上がろうとするヨークを、オリヴィアが、座らせる。 そうして、両手の指をヨークの体に当てると、魔力を通し始めた。 火傷を治した時と同じ・・・ 治癒魔法だ。


「魔力の不足は、助けられないけれども、これで ちょっと回復すると思う。」


「オリヴィアっ。 こっちを頼む。 イヴリンが、目を覚まさないんだ。」


 ヨークを癒すオリヴィアに、悲痛な声で、オリバーが 声をかけた。


「ヨーク、ごめんっ。 向こう行くね。」


「あぁ、ちょっとボクは、休ませてもらう。」


 座り込むヨークを置いて、オリヴィアは、イヴリンの元へ。 その手を・・・指を、体に 押し当て・・・声を失った。


「オリバー・・・ イヴリンに、何があったの・・・」


「分からない。 あの祠に・・ アビーが、あの祠に、イヴリンを放り込んだ。 出てきたら、こうなってた。 何が起こったのか・・・ おいっ、オリヴィア、休んでないで、治してくれっ。」


「オリバー・・・ 魔力が、通らない。 さっきから、魔力を通そうとしてるんだけれど・・・。ルナや、ヨークには、魔力が通ったの。 でも、イヴリンには、一切の 魔力が通らない。」


「そんなはずないだろっ。 オリヴィアっ。」


「ごめんなさい・・・ 私の力では・・・ 」


「イヴリン・・・。」


 オリバーは、再び、イヴリンの体を 抱きかかえる。 アメリア先生の姿が そこに現れても、彼は、愛しい恋人の体を 離そうとはしなかった。

母親から、試練を与えられたことがある人は、高評価を押して次の話へ⇒

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