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1-18.吸い込まれる指

 突然、祠の入り口に掲げられた 黒水晶が 点滅を繰り返した。


「あら? 終わったみたいね。」


 顔に笑みを浮かべたまま、アビーが呟く。 そうして、踵を返し、祠に近づくと、おもむろに 人差し指を立てた。 その指を、自分の方へと ひょいっと 振る。


 指の動きに合わせて、祠-ホコラ から、ひゅんっと 言った感じで、イヴリンの体が 飛び出してきた。 ドスっという音とともに 地面に落ちた彼女の体は、ピクリとも 動かない。


「イヴリぃぃぃぃぃぃぃンっ。」


 叫ぶオリバーは、急いで 彼女の元に駆け寄ろうとする。 が、黒い戒め・・・ 闇の拘束が、その足を捕らえて 離さない。


「もぉ、オリバーったら、せっかちなんだからぁ。 順番は、守らないとダメよ。 つぎは、ルナの番だってば ♪ 」


 そう言いながら、アビーは、イヴリンの・・・ もはや動かなくなった 白い顔をつま先で軽く・・・突っつくように蹴る。 足は、そのままイヴリンの体を、ゴロンっと転がして・・・ 横に押しやるように動かした。


「おっもいわね。 邪魔だわっ、この子。 さてっと、ルナッ、あなたの番よっ。」


 アビーが、軽く腕を振ると、ルナにまとわりつく闇の拘束が、その体をズルズルと、引きずる。


「助けてっ。 お願い、アビー。」


「うんうん。 もちろん、助けるわよ。 あなたが、きちんと魔力を 捧げ終わったらね♪ 行ってらっしゃい。」


 もう一度、アビーが腕を振る。 今度は強くっ!


 アビーの腕の動きに連動するように、ルナの体が、ふわりと浮き上がる。 そうして、次の瞬間、すさまじい勢いで、黒水晶の祠へと 吸い込まれていくのであった。




[風と水の魔法使い]  【 1-18.えっ ナイチ先生? 】




 荷物をまとめ終わった2人・・・ ヨークとオリヴィアが、小神殿へと、近づいていく。


「結局、何を するつもりなの?」


「あぁ、オリヴィアが、もう1回だけ、挑戦してみたい って言ったらしい。 ヨークは・・・ まぁ、付き添いだな。」


「さすがに、ヨークと、ジェイコブで、どうにもならなければ、オリヴィアでは、何も起こらないわよねぇ。」



「何か、起こるのかいっ? ・・・ 何をしているか、私も 気になるね。」



「うわっ、先生っ。」


「えっ・・・ ナイチ先生。 なんで ここに。」


「それは、こっちが、聞きたいね。 この小神殿は、ゴール地点の裏側の森を 少し奥に進んだ場所にあるんだよ。 一体、君たちは、どんなコースを通って、ここに、たどり着いたんだい? それに、さっきの白い光は、何かな? 実は、あれが、気になって、こちらまで 見に来たんだ。」


 振り返ると、そこに居たのは、ゆっくりと歩いて来る ナイチ先生。


「先生、あそこの神殿が 光ったんです。」


「神殿が 光った? 何をした?」


「オリヴィアが、壁の石板に書かれていた文字を読みました。 それに従って、魔力を通したんです。 そうしたら、神殿が、上空に向かって、光を発しました。 ただ、何が起こったかは、分かりません。 いま、同じことを もう一回、オリヴィアが やってみようとしていますので、先生が、それを見た方が 早いんじゃないですか?」


「ほう・・・ 4人でやらずに、分かれているのは?」


「安全のためです。 何か起こったら、オレ・・・ じゃない、ボクが、緊急信号を 上げる予定でした。」


「なるほど。 しかし、ゼッケンが 見当たらないが?」


 そう、ゼッケンが見当たらない。 それもそのはず、ローブの胸の部分に 縫い付けられた 副リーダーのゼッケン。 それは、ケイシーの荷物を前・・・ 胸側に背負ったため、隠れてしまっていたのだ。


「いや、この荷物の下です。 ちょ・・・はずれない。 ほら、これです。」


「そうだね。 ゼッケンは、見えるようにしておいた方がいい。 まぁ、私が、ここに居るから、使う必要は ないけれどもね。」


「ほら、持てよっ。」


 ジェイコブは、肩から外した荷物を、持ち主・・・ケイシーに渡す。


 その時・・・


「え? あれ、なんかおかしいよ。 光らないし、それに、オリヴィアとヨークが 騒いでる。」


「ん? 魔力を通してるんじゃ ないのかい?」


「さっき、ジェイコブが魔力を通した時と 雰囲気が 違うんです。 あの時は、スグに神殿全体が光ったのに、今は、そんな気配がなくって・・・ それに、2人が、バタバタしてる。」


「2人は、ここで、待ってなさい。 私が行くっ。」


 ヨーク先生は、ローブの裾をひるがえし、ヨークとオリヴィアの元へと 駆け出して行った。




******************************




 オリヴィアは、ヨークがやったように、左手を石板にそっと近づけた。


 ただ一つ違ったのは、ヨークが、壁にあてがったのが 手の平であったのに対して、オリヴィアが押し付けたのは、指先だということ。 これは、魔力の放出が、手の平から行われるか、指先から行われるかの 違いであろう。


 ぐっと力を込め、指先から魔力を注入する。 「ヨークは、魔力が反発する感じって言ってたけれども、逆よね。吸い込まれる感覚だわっ。この後、戻ってくるのかしら?」 そんな風に、考えたオリヴィアが、ヨークの方を振り向いた瞬間であった。


 石板が、白く淡い光を放った。


「え? 石板が光った? オリヴィア。 大丈夫かい?」


「分かんない。魔力は、吸い込まれてるんだけれども、それ以外に、おかしなことは、感じないわ。 さっきは、こんな 光り方は、しなかったよね?」


「魔力が、吸い込まれる? そんな・・・ 魔力は、一切、吸い込まれなかったよ。 オリヴィアっ、すぐ手を離そう。 危険だっ。」


「って、離れないよ。 指先がくっ付いてる感じ。 え? これ、どうなってるの?」


 ヨークも、オリヴィアの左腕を取り、壁の石板から はがそうとするが、まったくもって 動く気配がない。


「おーいっ、ジェイコブっ・・・。 えっ? ナイチ先生っ?!」


 後ろを振り返り、ジェイコブを呼ぼうとした時、見たもの・・・。 そこに、ナイチ先生と話すジェイコブとケイシーの姿が見えた。


「ダメッ。 なんか 指が、石板に 吸い込まれる。」


 何ということだろう。 少し目を離しただけ・・・ 後ろの ジェイコブたちを見た その間に、オリヴィアの指が、石板・・・ いや、白壁の中に 吸い込まれようとしているではないか。


「オリヴィア。 掴まれっ。」


 吸い込まれそうになる左手。 その反対側・・・ 右手で、オリヴィアは、ヨークの 体に しがみつく。 しかし、それでも 動きは止まらない。 ズルズルと、靴の裏を こするように、壁の中へ。


 シュンッ・・・


 それは、一瞬であった。 オリヴィアの体が、壁の中へと吸い込まれる。 そして、一緒にヨークの体も・・・ その地面に ただ一つ残されたのは、リーダの腕章・・・ ヨークの腕に巻き付いていた その布だけであった。

ゼッケンの使い方を失敗したと思った人は、高評価を押して次の話へ⇒

☆☆☆☆☆ → ★★★★★


 いや、ゼッケンで、緊急信号を発しようとしたら、ケイシーの荷物が邪魔で、すぐに先生を呼べない。その間に2人は壁の中に吸い込まれてしまった・・・・って感じにしようと思ったんです。


 ナイチ先生が、先に現れたせいで、必要なくなっちゃいました。


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