1-17.大きな お尻!
「オリヴィアっ。 これ、読めるかい?」
ヨークの指が、壁に埋め込まれている 石板を指した。
「そうね・・・ 力を与えるって 書いてる。 これって、この石板に 魔力を通せばいいのかな?」
オリヴィアは、腕を そっと持ち上げ、石板に 触れようとした。
「待って。 ボクが、魔力を 通すよ。」
指を 石板に当てようとした オリヴィアの手を取り、ヨークは、自分の手を 石板に押し当てた。
「大丈夫だと思うけれども、魔力を供給した者に対して、呪いをかける術具も 存在するからね。 これは、ジェイコブか、ボクの どっちかが、最初に やるべきだと思う。」
「でも、何かあったら・・・。」
「うん。確かにっ。 おーいっ、ジェイコーォォブっ。」
ヨークは、大きな声で ジェイコブを呼ぶ。
「なんだ? 2人で、離れていくから、そっとしといて やったのに。」
「ホント。 2人で、いちゃいちゃ するんじゃ なかったの?」
「いやいや・・・ これを見てくれ。壁に 石板が埋まってる。 オリヴィアが言うには、ここに、力 を与えると書いてあるらしい。 おそらく、魔力を通すことだ と思う。」
「なるほどね。」
「ジェイコブ、何かあったら、ゼッケンで、信号を 送ってくれるかい。」
「あぁ、ゼッケンに手には、当ておく。 問題が起こったら、すぐに魔力を通して、緊急信号で、先生たちに伝達するから、大丈夫だ。」
ヨークは、手の平を 石板にピタッと押し当てる。 そうして、集中し、石板に魔力を通していった。
[風と水の魔法使い] 【 1-17.小神殿の動く彫刻 】
その白い石造りの小神殿からは、神々しい雰囲気が 感じられた。
「もし、入り口を作るとしたら、ここだよね?」
オリヴィアが、指差したのは、小神殿の柱と柱の間にある、白い壁であった。
高さは、かなり低いものの、ギリシアのパルテノン神殿のような柱。 その間に白壁。 中に入ろうとするものを 阻むように立ちはだかる壁には、半人半獣の馬、槍を持つ戦士、女神を思わせるような盾を持った女性・・・ 様々な彫刻が、並んでいる。
そして、その中央にあったのが・・・。
「これ、ルーシ文字 じゃないかな?」
その石板には、確かに、ルーシ文字が刻まれていた。 壁のど真ん中にある小さな石板。 そのさらに真ん中に 小さな水晶。
「オリヴィアっ。 これ、読めるかい?」
『自らを示す力を通す』・・・ そう ルーシ文字で 刻まれている。 ヨークに、そのことを告げたオリヴィアは、魔力を通そうとした。 しかし、流石にヨークは、冷静であった。 そっと、オリヴィアの手を取ると、ジェイコブたちを 呼んだのだ。
ケイシーと、ヨークは、手を取り合った2人を・・・ ヨークは、ただ、石板からオリヴィアの指を離させようとしただけだったのであるが・・・ 一通り からかったあと、まじめな顔で、小神殿の白壁を眺めた。
石板に、魔力を通そうとするヨーク。 ジェイコブと、ケイシーは、小神殿から少し距離を取った。 そして、ジェイコブは、ゼッケンに手を当てる。 こうしておけば、何か起こった場合でも、安全な位置から、緊急信号を発することが出来る。
それは、グッと力を込め、ヨークが魔力を通した瞬間であった。 小神殿の屋根から、白い光が空へと打ち上げられる。 彫刻は動き、そして・・・ 何も起こらなかった。
「なんか、彫刻は、動いたよね? ほら、この戦士と、女神みたいなのが、入れ替わってるもん。」
オリヴィアと、ヨークが、彫刻の位置を指差していると、ジェイコブたちも、駆け寄って来た。
「どうなったの?」
「なんか、彫刻が動いたみたい。」
「こっちから見ていると、神殿の屋根から、光が打ち上げられていた。 あれは、かなり目立ってると思う。 たぶん、森の外・・・先生たちも、気づいたんじゃないかな?」
「光が・・・? そっか、ジェイコブたちの位置だと、神殿の上の様子も 見えたんだな。 こっちは、石板・・・ というか、水晶に、魔力を通そうとしたんだけれども、ぜんぜん通らないんだ。 魔力が 反発する感じだな。 次、ジェイコブが、やってみてくれないか? 次は、オリヴィアと、ボクが、離れて 見ている。」
今度は、ケイシーとジェイコブが、神殿の壁に挑む。 オリヴィアは、離れた位置で、ヨークと待機だ。 もちろん、腕章には、ヨークが手を当てて、魔力を通す準備を している。
「ヨォォクッ、今から通すぞっ。」
後ろを向いて、ジェイコブが、叫ぶ。 と、同時に、小神殿の屋根から 光が空へと打ち上げられた。
「わぁっ、すごい。 きれいだわ。」
「うん。 神々しい光・・・ 神聖な雰囲気を感じるね。」
おそらく、さっきと同じ現象が 起こっているのだろう。 しかし、何かが・・・ さっきと変わった 特別な何かが 起こるわけでは、無かった。
「彫刻は、動いたのよね。 ほら、さっき こっちにあった 半人半獣の馬が、下に来てるでしょ?」
「あぁ、彫刻が、移動してるな。 なぁ、ヨーク、白い光が、打ち出されてただろ?」
小神殿の方に 歩いて寄ってくる ヨークたちに、ジェイコブが、問いかける。
「あぁ。 それに、光を空に打ち出す前に、神殿自体が、白い光に包まれていた。 何らかの現象なんだろうけれど、これ以上は、分からない。」
「ヨークにわかんないんじゃ、もう無理よね。 オリヴィアは、何か分かったことあった?」
「ぜんぜんっ。 それに、ヨークと、ジェイコブが、理解できないことが、分かるとは思わないよ。」
「あー、ひどぉい。 私が、入ってない。」
「あはは。 でも、ケイシーも、分かんないでしょ?」
「うんうん。 なんか、神聖な現象だとは思うけど、さっぱりよね。」
「まぁ、これは、このくらいで、いいんじゃないか? 宝も手に入れたし、荷物を片づけて、ゴールを目指すことを 考えた方が、効率的だと思う。」
「そうだね。 ジェイコブの言う通りだと思う。 あのイバラの道を、引き返すことを考えると、後ろの班と比べて、時間のロスが 大きいだろうし・・・。」
「あぁ、やだ。 私、今度は 後ろがいい。 オリヴィアが 前を歩いてよ。」
「えっ? そうね。 じゃぁ、逆になる?」
「うん。 ヨークが 先頭だな。オレが、最後を歩く。 それでいいだろ?」
「あぁ、それでいい。 行きよりは、マシだと思う。 ジェイコブが、枝を払ってくれてるしな。」
「こっちは、行きよりキツいだろうな。 前に、ケイシーの でかいケツがあるから、前が見えないっ。」
「こら、ヨーク。 私の 何が でかいって?」
「ケツだよ。 ケツっ。 ヨークは、前が、オリヴィアで、良かったよな。 って、あちっ。 お前、魔法は、使うなよっ。」
ケイシーの 左の手の平から、小さな火の玉が、ジェイコブの顔に向かって 飛んできたのだ。 火の玉は、前髪を じゅっと焦がすと、空へと 飛んで、そのまま湖の中に、飛び込んだ。
「ふざけたこと言うからよ。 あっ、帰りは、私の荷物、ジェイコブが、運んでね。 そんなこと言う、余裕があるんだから、大丈夫よね。」
「おいっ、オレと、ヨークの荷物には、チェックポイントの水晶も、入ってる。 お前のより、だいぶ、重いんだぞっ。」
「じゃぁ、そんなこと言わなきゃいいのよ。 はいっ。 決定ぃー。」
そうこう言いながら、4人は、広げていた 荷物を片づけていく。 そうして、ケイシーは、さっきの言葉通りに、荷物を背中に負ったジェイコブの前・・・ 胸の側に、自分の荷物を 背負わせた。
「ほら、前後の重りがあって、バランスが取れて、逆にいい感じよね。 うん。」
「取れてねぇよっ。 重いだけだ。」
グズグズと、文句を言いながらも、ジェイコブは、ケイシーの荷物も 一緒に運んでやる雰囲気・・・。
「オリヴィア、ボクも、荷物を運ぼうか?」
「ううん。 ヨークのバッグには、私の採取瓶も入ってるし、それに、チェックポイントの水晶も、2個、入ってるじゃない。 ジェイコブよりも、よっぽど 重いはずよ。」
そういうと、オリヴィアは、もう一度、後ろを振り返った。
「ねぇ、帰る前に、もう一回だけ、あの神殿に、魔力を通してみて いいかしら?」
「うん。 じゃぁ、さっきと同じように、2人ずつ別れよう。」
こうして、ヨークと、オリヴィアは、小神殿へ・・・ ケイシーとジェイコブは、その場で待機し、様子を見守ることになった。
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あっ・・・予約投稿ミス。




