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1-16.着替えは、覗かないでっ

「イヴリぃぃンっ。」


 黒い水晶が掲げられている 闇の祠 -ホコラ に、体ごと吸い込まれた イヴリンを追って、中に入ろうと駆け寄ろうとするオリバー。 ルナの体は崩れ、その場で 震えるばかり。


「む・だ・よっ。 でも、万が一があるし、邪魔しないでねっ。」


 アビーの手から、黒い蔓 -ツル が飛ぶ。 蔓は、オリバーの足に絡みつくと、その体を 引き倒した。


「あなたは、後よ。 邪魔しないで、そこで見てなさいっ。」


「アビー、何のつもりだ。 イヴリンに何をしたっ。」


「ちゃんと言ったわよ。 偉大なアードルフ・シタラ=ヒムゥラに、魔力を捧げるって。 聞いてなかったの?」


「闇の魔法使い アードルフ・シタラ=ヒムゥラは、何十年も前に居なくなった。 南の賢き魔女によって、滅 -メッ せられた。アビー、お前、どうしたんだ? 何を考えてるっ。」


「うんうん。 良く勉強してるね。 オリバーは、お利口さんだわ。 でもね、滅したんじゃなくて、一時的に、封じられているだけなの。 みんなが思っているより、南の賢き魔女って、賢くないんじゃないのかなぁ。 あっ、邪魔しちゃ ダメよっ。」


 得意そうに しゃべるアビーは、隙だらけ。 それを見て、またも、オリバーが、イヴリンを追って、祠に 駆け込もうとしたのだ。 しかし、その足は、闇の拘束に捉えられている。 アビーが、両腕を クイッと動かすだけで、その動きは、いとも簡単に抑え込まれ、足止めされてしまった。


「くそっ。 離せっ。」


「ねぇ、アビー、イヴリンは、どうなっちゃうの?」


 震える声で、ルナが、尋ねた。


「さぁ? どうなるんだろ。魔力を全部、吸い取っったら、オリバーに、返してあげる。 それに、次は、ルナの順番だから、自分で 確かめたら いいんじゃないかなぁ。」


 そう言うと、アビーは、ニッと白い歯を見せた。




[風と水の魔法使い]  【 1-16.不死鳥の尾羽 】




 湖を進むジェイコブ。


 聖なる気に包まれる その湖の水は、思った以上に 冷たいものであったが、危険なことが 起こる気配もなく、湖面に浮かぶ 白い台にたどり着いた。


 そこにあったのは、4枚の羽根。


「これは・・・ まさか、フェニックスの尾・・・。」


 濡らすわけにはいかない。 ジェイコブは、悩んだ挙句、4枚の羽根を、自分の頭・・・ 髪の毛に 刺した。


 濡らさない。 濡らさない。 濡らさない・・・ 頭が、水の下に沈まぬよう、平泳ぎ? ・・・いや、立ち泳ぎ? と言った感じで、ゆっくりと、3人の元に戻る。


「おい、火を起こして待ってるんじゃ なかったのかっ。」


 湖から上がった ジェイコブの 最初の言葉は、それであった。


「ぷぷぷ。 あなた、どこかの誇り高き部族ってかんじよ。 あぁ、もぉ ダメッ。」


 ケイシーは、ジェイコブの姿に、大笑い。 つられて、ヨークも オリヴィアも爆笑だ。 それはそうだ。 ジェイコブが、着ているのは、機能性の高い圧着したウェア。 なのに、頭には、4本の羽を刺して、まるで、東方の大陸に居ると言われる、誇り高き部族のような恰好を しているのだから。


「バッカだなぁ、ジェイコブは。 植物のツルを出して、それで 羽根を 固定して、濡れないよう、上の方に 浮かしておけば、良かったんだよ。」


「ヨーク、頭いい。 私、ぜんぜん思いつかなかった。 たぶん、ジェイコブと一緒なことをしたと思う。」


「羽根を頭に刺したオリヴィアか。 ちょっと見てみたいな。」


「もぉ、イヤよ。そんな恰好。」


「ジェイコブ。オリヴィアに、イヤがられてるわよっ。」


「ちがぅっ。 そんな意味じゃない。」


「じゃぁ、どういう意味よっ。 イヤなんでしょ? 頭に羽根は・・・。 ジェイコブ、こっち。ほら、羽根は、渡してっ。」


 ケイシーは、左手で、火の魔法を使い、近くの流木に、火をつけると、頭の羽根を 1本ずつ抜いてゆく。


「ねぇ、これって、何の羽根?」


「不死鳥だね。」「不死鳥っ。」「フェニックスだわ。」


 ヨーク、ジェイコブ、オリヴィアの声が、揃った。


「え? オリヴィア、知ってたの?」


「うん。 でも、私が知ってるものより、だいぶ 小さいから、子供の羽根じゃないかな? って思う。」


「いや、これより大きい羽根なんて、図鑑でしか 見ることはないぞ。」


「あのね、 私の部屋に飾ってあったの。 それに、小さい頃に死んじゃったけど、フェニックスも1羽 飼ってたし。」


「不死鳥が、死ぬのか? 初めて聞いたぞ。」


「オリヴィア、不死鳥は、死なないから 不死鳥なのよ。」


「そんなことないよ。 不死鳥って、気を付けて飼わないと 簡単に死んじゃうもの。 あのね、私が、間違えて エビの殻を食べさせちゃったら、中毒死しちゃったの。 犬や、不死鳥には、エビを殻ごと食べさせたら ダメなんだって、ママにも、叱られたんだから。」


 衝撃の事実に、3人は、言葉が出ない。


「まぁ、オリヴィアが言うんだから、そうなんだろう。 南の賢き魔女なら、不死鳥を飼っててもおかしくない。」


「ヨーク、不死鳥が、死ぬ話なんて、誰に話しても、信用されないぞ。 気が狂ったと思われる。」


「大丈夫よ、ジェイコブ。 今でも、半分くらいの子は、あなたのことを そう思ってるから。 で、これは、不死鳥の羽根で 間違いないのね。」


「あぁ、そっちは、間違いない。 気が狂ってるとは、思われていないがなっ。 そして、これが、宝として 隠されていたものということで、間違いないだろうな。 なっ、オレの言った通り、ここに あっただろ?」


「うわっ、ドヤ顔が、キモっ。 鼻の穴、開いてるわよ。 さっさと、服を 着替えなさいよ。」


 ケイシーは、さっさと、ジェイコブの荷物を広げて、下着など 着替えを 取り出してゆく。


「じゃぁ、オリヴィア、こっちで、採取瓶に不死鳥の羽根を入れておこう。 ギリギリ、瓶に入る大きさじゃないか?」


「うん。 小さい羽根だから、たぶん、大丈夫だよ。」


 カバンから、4本、採取瓶を取り出し、ヨークと一緒に1本ずつ、不死鳥の羽根を 採取瓶に放り込んでいく。


「おいっ、何、見てるんだ。 着替えてるんだぞっ。」


「なによ、裸を見られたって、減るもんじゃ ないでしょ?」


「そりゃ、減らないけど、お前もイヤだろ? 着替えてるのを、のぞかれるとっ。」


「そうね、それに、見た感じ、それ以上減ったら、大変だわっ。」


「うるさい、大きくはなっても、減らねぇよっ。 あっち行けっ。 ・・・って、着替えを持っていくなっ。」


 そうこうするうちに、ジェイコブと、ケイシーが、大騒ぎを始めた。 採取瓶を カバンに仕舞い、チラリと2人を見た ヨークとオリビアは、目を合わせて、うなずいた。


「ちょっと、2人だけに してあげようか?」


「うん。 そうね。 私、あの神殿をよく見てみたい。」


 ジェイコブと、ケイシーに気づかれぬよう、2人は、手をつなぎ、そっと白い石造りの神殿の方へと、歩いていくのであった。

犬や不死鳥に、エビの殻を食べさせたことがある人は、高評価を押して次の話へ⇒

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