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1-12.角モグラの攻撃っ!

 4匹の角モグラが、小さなトゲを飛ばす。 今度は、1本ではない。 数えきれないくらいの大量のトゲだ。


「ヨークっ。」


 しかし、そのトゲが、4人に届くことは 無かった。 ヨーク得意の土人形が 角モグラの前に立ちはだかったのだ。 トゲは、土人形をハリネズミのようにしたものの、誰を 傷つけることもなく、とうぜん、誰も 魔痺させることも なかった。


「うわぁ。 ぐるっぐるだね。」


「まぁな。 このくらいなら、何とかなる。」


 4匹の角モグラは、ジェイコブの木魔法・・・ 初歩のツルの魔法によって、ぐるぐる巻きにされていた。


「ジェイコブって、すごいね。 一度に4匹も捕まえちゃうんだから。」


「いや、オリヴィア。 これは、ヨークの石畳のおかげだ。 土の中から、石の上に飛び出てきたせいで、角モグラは、思うように 動けなかったんだ。 それに、ツルの魔法なら、Cクラスでは、オリバーが一番だ。あいつの魔法には、まだ勝てる気がしない。」


「まぁ、ジェイコブは、へなちょこだからね。 でも、思ったより、ツルの魔法ってすごいわ。 コレ、引っ張っても ほどけないもの。」


「おい、ケイシー。 まだ、こいつは、死んだわけじゃない。 トゲを飛ばす 可能性があるから、ヨークの土人形の 後ろに居ろよっ。」


 前に出て、ツンツンと、1匹の角モグラを つつき始めたケイシーを、ジェイコブが、土人形の後ろに引き戻す。


「ヨーク。とどめを。」


「あぁ。」


 ヨークは、右手で、風魔法を発動すると、ストンストンストンと、角モグラの首を落とした。 そうして、左手で、地面・・・ 石畳に対して魔法を発動する。 土魔法だ。 グググッと、不思議な形・・・ 小さな器状になった石を 4個作り出し・・・ 殺した角モグラの下に 敷き込んだ。




[風と水の魔法使い]  【 1-12.モグラの素材は貴重品 】




「何してるの? ヨーク。」


「あぁ、血を回収しておこうと思って。 角モグラの血は、『悲嘆する安らぎの興奮薬』に欠かせないだろ? 新鮮な角モグラの血は、貴重だから、採っておいて損はない。」


「そっか。 じゃぁ、石の器に血が溜まったら 採取瓶に入れるね。」


「そうだ、オリヴィア。 今度の休みに『悲嘆する安らぎの興奮薬』を 一緒に作ろうよ。」


 そうね。 ヨークや ジェイコブが一緒なら、魔法薬作りも うまくいくかも・・・ そう考えたオリヴィアは、小さく頷く。


「それいいかも。 じゃぁ、4人で作る?」


「んー『悲嘆する安らぎの興奮薬』は、難しいぞっ。 たぶん、失敗する。 それより、魔法薬店に、売ればいいんだよ。 水魔法で冷やしておいて、新鮮なうちに 持っていけば、いい値が付く。」


「じゃぁ、私、休みに売りに行くから、ついて来てよ。 ジェイコブ。」


 どうやら、ケイシーと、ジェイコブは、血を売りに行くことにした様子。


「えっ、どうしよう?」


「んー。 ボクは、ちょっと難しくても、魔法薬の調合には、自信がある。 休みに2人で作ろうよ。」


「ほんと? じゃぁ、私が失敗しそうなら、助けてね。」


「もちろんっ。」


 こうして、モグラの血抜き作業が進む間に、ケイシーと、ジェイコブは、土人形から、トゲを回収し始めた。


「素材としては、こっちの方が 高いんだけどな。」


「そうなの? ジェイコブって、お金のことばかり 考えてるのね。」


「ちげぇーよ。 高く売れるんだけれども、こちらは、魔麻毒の解毒薬の材料になるから、売らない。 ヨークの土人形があったから、こんな風に 毒の残った大量のトゲを 採取できるけれども、普通は、毒は、刺さった相手の体に 吸収されてるからな。」


「実験棟に、いっぱい いるんじゃないの?」


「エセクタの実験棟で飼ってるやつは、魔痺毒の形が 野生の魔獣と ちょっと違う上に、弱毒性の角モグラだから、解毒作用も 弱いんだ。」


「へぇ、じゃぁ、ヨークお手柄だね。 たぶん100本くらいあるよ。」


「バカ言え。 お手柄じゃねぇよ。 なぁ、ヨーク。」


 オリヴィアと一緒に、石の器から、採取瓶に新鮮な血を移しているヨークは、ジェイコブの方を振り返る。


「うん。 失敗しちゃったね。 まぁ、失敗に気づいたから、すぐ土人形で、対応が出来た っていう部分は あるんだけれども。」


「えっ、ヨーク。 何、失敗したの?」


「水筒の水だよ。 オリヴィア。 作った石畳の上じゃなくて、土の上に、水を捨てただろう? あれで、角モグラが、獲物が居ると思って 飛び出てきたんだ。 あいつらは、目に見える物じゃなくて、音や振動に 反応して 行動するからね。」


「なっ? お手柄じゃなくて、失敗なんだよ。 ケイシー。」


「うーん。 そのおかげで、トゲの採取が出来たし、やっぱり お手柄だと思う。」


「お前、オレ以外への評価が、ホンっト甘いな。 下手したら、4人とも ここで魔痺して、救助を待つことに なってたかも しれないんだからな。」


「だぁから、結果的に、いい素材を採れてるんだから、グダグダ言わないのっ。 ほんと、しつこい男は嫌われるのよっ。」


「うっせぇ。」


 森の中に、4人の笑い声が響く。 そうして、数本の採取瓶には、大量のトゲ・・・ 大量の血が、詰められた。


「じゃ、メインの素材よね。」


「角は、1瓶に1個ずつ入れたほうがいいな。」


「そうなの?」


「あぁ、超貴重だからな。 生きた野生の角モグラの角を、完全な形で 採取できる魔法使いは 少ない。 土の中では、ほぼほぼ無敵だからな。」


「うんうん。 だから、完全な形のまま、保存できるように、1個ずつ保管するんだよ。 瓶の中で角どうしが ぶつかって 欠けちゃうを 考えたら 当然だね。」


「あっ、ジェイコブ。 これも、売るの?」


「あぁ、完全な形でも、欠けていても、薬の効力は、変わらない。 だから、こいつは、売る。もし、必要なら、欠けている角を買ってくればいいんだ。 状態がいい 欠けた角でも、完全な角を売った値段の1割もしないはずだ。」


「じゃぁ、ボクらのも、ジェイコブたちに、売って来てもらおうか。 オリヴィア、いいよね?」


「うん。良く分からないから、まかせる。」


「あっ、じゃぁ、こうしない? あのね、私と、ジェイコブが、休みに いらない素材を売りに行くでしょ? で、オリヴィアと、ヨークが魔法薬を作るの。 失敗しても、成功しても、全部4等分。 売ったお金も、作った魔法薬も。 どう? いい考えだと思わない?」


「いい考えだね。 ただ、ボクらが、失敗してもいいのかな?」


「そりゃ、失敗しないに越したことはないけれども、魔法薬の調合って難しいもの。 いくら、ヨークでも、失敗することはあるから。 ねっ、オリヴィア。 それで、いいでしょ?」


「う・・うん。 私は、いいけど。」


「じゃぁ、決まりっ。 ジェイコブっ、素材を売り終わったら、アリス・テーキラのオシャレ魔女洋装店にも 行くからね。」


「ちょっと待て。 お前、明らかに、そっちがメインの目的だろっ? おかしいぞっ。」


 こうして、ヨークとジェイコブの荷物は、ちょっとずつ重くなり、4人の 次の休日のスケジュールも、埋まったのであった。

アリス・テーキラのオシャレ魔女洋装店で服を購入したことがある人は、高評価を押して次の話へ⇒

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