合流
私は始まりの街にある広場のベンチに腰掛けて空をぼーっと見ていた。
「んー、早く着いちゃったなー?」
待ち合わせ時間までまだ15分もあるよー。千夜早く来たりしないかなぁ。
……そういえば、今日お昼ご飯食べて少ししたらログインするって言ってた
千夜はキャラクリに時間かけるタイプでもないだろうし...ログインしてから1時間ちょっとは経ったかな?それなら千夜はもう始まりの街に来てるよねー、探しに行こうかなー?うーん。
「うん…いいよね!時間になったら戻ってくればいいし!」
「―おいコラ、何処行くつもりだ。」
後ろを振り向くと黒髪赤目の中性的な美少年、もとい私の幼馴染である旭千夜が立っていた。
「あ!千……セン、早いね!3時までまだ15分もあるよ〜」
もしかして私が待ってたのが見えて早め来てくれたのかな?なーんて
「ああ、思ったより始まりの街が始まりの森から近くてな。早めに着いちゃったんだよ」
へぇー、と返事しそうになったものの違和感を感じて開きかけた口を閉じる。
森から近くて?...だから早めに着いた?
「………もしかしてさっき街に来たの…?」
いやぁ……まさかね?普通はスライムを1、2匹倒したら街に初期費用で装備買いに来るし……そういえば何でセンは初期装備なのかなぁ?あとポリゴン付いてるんだけど……。
「まぁ、取り敢えずフルダイブゲームは久しぶりだからな。感覚に少し慣れておこうと思って。」
「んー?」
「でも意外と楽しくてな。つい夢中になりすぎてたから急いで此方に来たんだ。」
「んん?いやいやいや?」
まさかずっと初期装備でスライム狩ってたの!?
初期装備なんて紙みたいなものだよ?うっかりスライムに体当たりでもされれば1時間のデスペナルティが受けるんだよ?
「まぁ確かに少し長く居すぎた気もするが..別に問題ないよな?待ち合わせに遅れたわけでもないし…」
「問題は...結果的にまあ、ないけど!普通スライムを倒せたらすぐに街に来るんだよ!装備とか買わなきゃでしょ!」
「でもスライムを倒す分には不都合はなかったから」
あ、ちょっとしゅんとした。
「気づいてるとは思うけどスライムって経験値多いわけじゃないんだから。そのうえ一度気づかれるとすばしっこくて割に合わないの!分かる⁉チュートリアルでデスペナルティ受けちゃう人だって多いんだから!」
「…えー?…」
落ち込んでいる様子が私に効かないと気づいたのかケロッと元の様子に戻ったセンが何やら言ってる気もするけど、それは無視することにして..
「私が教えなかったのも悪いけどぉ!まさかずっと森にいるなんて思わないじゃん…!」
続けて言い募ろうとしたがセンが微笑ましそうに笑っているのに気づいて口を閉じる。
私が千夜レベル上げできる時間が減っちゃうかもしれなかったことに拗ねてると気がついたのだろう。
「…あーはいはい。悪かったって。ゴメンナサイ。」
「許す!」
謝罪が何処か棒読みだったような気もするけど私は寛大なのです!
すぐさま思考を切り替えた私は菫色の髪をくるくると指に巻き付けながら先ず何処に行くか考える。
そーだなぁ……本当はすぐにレベル上げ行こうと思ってたけど..
「…よし!セン!取り敢えず装備を買いにいこう!」
「おー」
初心者向けのお店は...えーと
んーと…確か此方に武器屋とかがあったよーな……。
センがマップを開いたのを見て私も記憶をたどりながらお店を探す。
ふとセンが顔を上げて視線を少し泳がせた。
「華――カノ…?お前ゲームのPNいちいち違うのにしてるからな…一貫性がなくて滅茶苦茶呼びづらい。」
センは私の頭上のPNを確認するとため息とともに苦情をぶつけてくる。
「ふふっ、私はセンと違って全部のゲームで同じPNは使わない派なんですぅー。それに毎回本名をもじってるだけから一貫性が無いわけでは無いんですー。」
「はぁ…何だよ同じPN使わない派って…」
呆れたように笑うセンの隣に出来るだけさりげなく並ぶ。
ちらりとセンのほうに視線を向けた。
センはゲームの中でもかっこいいなぁ…..チラチラ他のプレイヤーもこっち見てるし
……これで手でも繋げば
「…恋人っぽく見えたりするかなぁ…」
私からの視線を感じたのか
初めてくる街に気を取られていたセンがこちらを向いて私を覗き込んだ
「?ごめん、なんか言ったか」
「...んー。何でも?」
こういうとこだよねー...ふとした瞬間の気遣いとか、私を見る目があんまりにも優しいから。
......少なからず私に好意は抱いてくれていると思うし、なんなら私のこの感情にも気づいてるんじゃないかなとは思うけど、
どうだろ?千夜は鈍そうだからなぁ…
まぁ……今はこの関係性で、私は満足かな!
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