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長い夜が明けるように  作者: 紅椿
第一章 新しい世界と藍鼠
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死神

俺はこのゲーム発売初日からやっているプレイヤーだ。先日やっと第一フィールドのボスを倒した!...クソゲーかと思っていたがだんだんゲームの操作性にも慣れてきた気がする。


そんな俺等は今日、迷いの森に入ってみることにしたんだ。


攻略サイトを見る限り、パラライトビーという蜂みたいな(・・・・・)モンスターが一番要注意のようだ。空を飛ぶから攻撃しにくいし、仲間を呼ぶし、毒もあって凄く厄介なんだと。攻撃しない限りは安全らしいから、迷いの森では「蜂に攻撃しない」というのが常識らしい。蜂の法に流れ弾とかが飛んでいかないように気を付けなきゃいけないな。


さて、現在の時刻は11時15分。


「【隠密】かけるぞー」


盗賊(シーフ)がパーティ全体に【隠密】かけた。パーティ全体にかけるとMPの消費が早いけど、初めて迷いの森に入るのに【隠密】をかけないことは自殺行為だからな。




…なんだか小人になったみたいな気分になる。凄く綺麗な森だ。





暫く迷いの森を歩いているとなんだか戦闘の音が聞こえた。


「誰かが戦闘してるみたいだよ」


「この先だな」


パーティメンバーの魔法使いがそっと音がしたほうを覗いてみる。


「うわっ」


「どうしたの?」


「なんかポリゴンがめっちゃ飛び散ってる……一瞬血に見えてびびった」




どうやら誰かがパラライトビーらしきモンスターと戦闘しているらしい。


「巨大蜂がうじゃうじゃいて気持ち悪いんだが」


「なんか良く見えないけどソロっぽいぞ?」


ソロ? パーティメンバーが死んだのか?


「助ける?」


「うーん………いや、やめておこう。助力に入っても全滅するだけだし」


「うわ、やべ。リーd」


周りを警戒していた盗賊がポリゴンになって弾けた。真後ろに巨大なモンスターが姿を現した。


ムカデみたいな奴だ。ちょっと物音を立てすぎたか。



「くそ...早く、逃げるぞ!」


ちょっと真正面から勝てそうにないよな。無理無理。二匹いるし。



でも逃げ始めるのが少し遅かったか……!【隠密】をかけていた盗賊が死んだのも痛い…こうなったら一か八か交戦するしか…。


「あ、」


逃げ遅れていた魔法使いがムカデに右腕を食われる。後衛の魔法使いのHPは一瞬で0になり、ポリゴンが飛び散った。


「くそっ、硬いな…!」


苦し紛れに攻撃するも全くHPが減る様子が無い。


必死に抵抗するがパーティの皆がどんどんポリゴンになって消えていく。第一フィールドのボスを倒したとはいえ、それは万全の準備をしての辛勝だ。アイテムも用意せずに初見の二体相手ではやはりきついか。


仲間の居なくなった俺はなすすべもなく、あっという間にHPがレッドゾーンに入る。


自分の身体が咀嚼されるのって結構精神的にくるな……。ポリゴンが血っぽいのも……。


四肢が飛ばされるが、なまじHPがあるせいで死ねない。


乾いた笑いが自分の口から洩れた。


「プレイヤーの心折りにくるとか…運営鬼畜す ぎ」


俺の四肢を食い終えたムカデ共が俺を真っ二つに引き裂いた。







そして視界がポリゴンで塗りつぶされブラックアウトするまでの瞬間、


数メートル先、蜂達の向こう。


「しに が、み……?」




返り血((ポリゴン))でその身を紅く染めた死神が見えた気がした———————

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