神は死んだ…
うーん…。昨日の様子じゃもう少し苦戦すると思ったんだけど。確かに昨日も凄かったけどゴブリンがポリゴンになるまで時間があったから威力は低かっただろうし…もう少しステータス面で不安もあった。VRMMOは現実とは身体の動かし方が少し違うからちょっとぎこちないトコもあったんだけどなぁ?…いつの間にかスキルも取ってるし。
「ねーセン?」
「ん?」
私の斜め前を歩いていたセンが振り返る。
「今レベルいくつ?」
「ああ、そういえば俺もカノのレベル聞いておこうと思ってたんだった」
「私?私はねぇ、30だよー」
「へぇ」
「ふふ、私も一応トッププレイヤーの一人だからね!その中だとたぶん最弱だけど!」
そう、何を隠そう、この私は一応ね、トッププレイヤーなのである!なにせこのゲームを買ってから宿題する間も惜しんでプレイしていたのだから!……そのせいでテストは散々だったけどね…。
いや、思い出すのは止めよう!
「セン!このまま迷いの森に入ろう!」
「…?ああ、いいけど」
私が急に歩き始めたからか少し困惑したような声を聞きながら早歩きで森の中を進みだす。
目指すは此処から一番近い集落!
迷いの森はまあ、典型的な森のちょっと不気味なバージョンって感じ?ただ普通の森と違うのは巨大な虫型モンスターや植物型モンスターが生息しているって所かな。始まりの町だとザ・街って感じだったのが此処だと集落みたいな形になるんだよねぇ。
「そういえばカノはクランに所属してるんだっけ?」
暫く歩いたところでセンが声をかけてくる。
「うん、そうだよー……センも入る予定とかあるの?」
内心ドキドキしながら聞く。
……私と同じクランに入ってくれたり…そしたらいつも一緒に行動できるし…
「俺はまだいいかなぁ…気ままに楽しみたいし」
「…そっか…うん。まあ、そうだよね!セン団体行動とか嫌いだしね!」
んー…残念。でもしょうがないかぁ。
「あ、カノ。集落ってあれか?」
「そうそう。あれだよー」
段々と集落が見えてくる。
集落にいるNPCは森の民というやつで、エルフみたいのを想像するかもだけど実際は褐色肌が特徴の人族だ。とはいえエルフが居ない訳では無く、森の民とは別で森の賢者というのが何処か別の大陸に存在する…らしい。
「らしい」というのもエルフでない事に落胆したプレイヤーがNPCにエルフが居ないか聞いたところ、エルフという種族名かは分からないが耳が長い人族によく似た種族が存在すると聞いたことがある。と答えた訳だ。つまりは伝聞のまた伝聞である。確証の無い話だけどプレイヤー達、少なくとも私のギルドメンバーの一部は狂喜乱舞していた。
そんなことはさておき、私達は無事集落に到着した。
「……あ、そうだ。ねぇ、セン」
「ん?」
「えと…明日って、暇?」
明後日からまたクランの用事が入っちゃうから暫く一緒にプレイ出来なくなっちゃうんだよね…。だから、センの予定が空いてれば…ああぁぁぁ、空いてますようにぃ‼
「あー、悪い。明日はちょっと用事があるんだ」
「…...ソウナンダー」
神は死んだ。
その後しばらく集落を案内してからログアウトしたけど、ずっとテンションが低めでセンに気を使わせてしまった気がする...
……あ、センのレベル聞くの忘れた…ま、いっか。