メティとの雑談
私は、寛いでいる。
いや、正確に言えば、だべっている。
勉強の必要性を、「告知」によって朗らかに否定された私は、特にやることが思いつかず、ベッドにだべっている。
ちなみに、11歳の誕生日は明日だったりする。
ねーねー、告知。
〈お呼びですか、マスター〉
告知って呼びづらいから、名前つけていい?
〈かまいません〉
ギリシア神話において、「思慮」とか「助言」とかを司る知性の神、メーティス。
その神から名前を頂いて、メティでどうだ!
〈かまいません〉
えっとー。メティ、君の感想としては、なにかないかね?
〈呼びやすく、いい名前であると評価します〉
ふーむ、高評価だね、よかったよかった。
さて、メティ。
〈なんでしょう、マスター〉
私は暇なのだよ。というわけで、雑談につきあってくれたまえ。
〈はい、マスター〉
えっと、何から会話を始めるか。
まずは定番のあれだろうか。
いやー、今日はいい天気ですねー。
〈今日の最高気温は21度、最低気温は12度、平均気温は16度、したがって全体的に過ごしやすい気温であるといえます。しかし湿度は30%であり、これは標準より高い湿度です。つまり、完全にいい天気であるとは判断できません。また、これからの降水確率は70%以上であり、「いい天気」は崩れることとなるでしょう〉
雑談でこんな長い分析いらねえよ。
あとさらっとこのあと雨だからいいお天気ぶち壊しだとかそういうのはいらないのだよ。
この人に天気を聞いちゃいけないな。
メティ、精霊だったときの記憶ある?
〈自分の名前などの個人情報は忘れている部分が大半ですが、それ以外の記憶はあります〉
ほうほう。
じゃ、女の子だった?男の子だった?
〈精霊に男女の区別は存在しません〉
何才だった?
〈記憶にございません〉
それ、使う場面違くね?
ま、いいや。
兄弟姉妹はいた?
〈はい〉
何人?
〈ざっと二万ほど〉
は?
〈精霊は大地のエネルギーより生まれる存在です。自分を生んだ大樹や同時に生まれた精霊を入れています〉
は、はあ。
親はいた?
〈はい〉
それ大樹?
〈はい〉
大きかった?
〈はい〉
生活楽しかった?
〈はい〉
彼氏彼女はいた?
〈は…否、いません〉
今「はい」って言いかけただろ。
〈はい〉
むう…。
木の実とか食べてた?
〈はい〉
森に住んでた?
〈はい〉
強かった?
〈はい〉
人間の国には行った?
〈はい〉
一人で?
〈はい〉
その国滅ぼした?
〈はい〉
その国楽しかっ…いやちょっと待て。
もう一度聞こう。
その国滅ぼした?
〈はい〉
オウ…。
まじかよ。
〈今から200年前、この国「ドーラ王国」の隣国であった「メマグ王国」は、当時精霊の棲み処であった森に侵攻の目的で軍を向かわせようとする動きがあることが精霊達に伝わり、その地を治める大精霊の一人である私はメマグ王国を滅ぼしました。しかし、国王以外に悪意はなかったため、国王以外は殺害しておりません〉
それ、さっき勉強してるときに読んだ気がするぞ、その歴史…。
〈雑談は終わりですか、マスター?〉
終わりじゃないけど、いや驚いた。
ちなみに、メティは他の人にもスキルとしてついてるの?
〈否。私はマスターのためだけに存在しています〉
へー、という事は、いうなれば私専属?
〈はい〉
私一応メイド(になる予定)なんだけど、それって大丈夫?
〈問題ありません〉
う、うむ。そうか…。
―メティ先生、まだ何か隠してそうで怖いな…。
というわけで、私とメティの会話はここまで、となった。
これ以上メティに爆弾発言されると、私が混乱するからね…。