拒否権プリーズ!
2時間ベッドで横になった私。
そろそろ体の痺れも取れてきた。
起きようかな、と上半身を起こし、
「ロテル、起きましたか」
師匠だ、こんにちは!
おやすみなさい!
私は布団をかぶりなおした。
「こら!修行を続けますよ。昼食を食べたら、午後の修行です」
「拒否します」
「拒否権はありません」
師匠の鬼!鬼畜!
もうやだ!
あんなご主人様大好きぃ!な修行なぞやらん!
なんていう心の叫びも虚しく、師匠は布団を引っぺがした。
「鬼が!鬼がおる!」
「さあ行きますよ」
「鬼婆ぁぁぁぁぁ!!」
「今日は、昨日の復習と、いってらっしゃいませご主人様の練習です」
いーやーだぁ!
おかえりなさいませの次はいってらっしゃいませぇ?
いやだ!
「まずは復習です。昨日やったことを思い出し、やってみてください」
えー。
「追い返すのはいけませんよ」
追い返す気満々だったのに。
ちぇ。
師匠がドアを開けて入ってきた。
すっと一礼。
「おかえりなさいませ、ご主人様…」
「はい、よく出来ました。」
師匠ご満足そうに頷いた。
「師匠」
「何ですか?」
「無理です。」
もうダメだ。
「分かってますよ。目がご主人様に向ける目じゃなかったので。蔑むような目でしたよ。」
よし!
私はガッツポーズをした。
「ご主人様に気持ちを込めてお出迎えしたんです!」
「…はい、次はいってらっしゃいませご主人様、の練習です」
スルーされた。
「礼をしながら、いってらっしゃいませ。そして、お帰りを心よりお待ちしております。大体昨日と同じです」
「はーい…」
「じゃあ、早速私がご主人様役をやりますね」
了解。
ガチャ
師匠がドアを開け、私を振り向いた。
「それでは、行って来る。」
私はすっと流れるような礼をした、
「永遠にいってらっしゃいませ、ご主人様。お帰りを心より拒否します。帰ってくんな!」
さよーなら!
バンッ!
ドアを閉め、ご主人様を閉め出す。
鍵をかけて、っと。
ドン、ドン!
「ロテル!開けてください!ロテル!」
ちっ、帰ってくるなって言ったのに。
世話の焼けるご主人様だ。
ガチャ
ドアを開けた。
そこには、師匠が腕を組んで立っていた。
「ロテル、はっきり言って、あなたはメイドに向いていません。」
うん、知ってた!
言われるまでもなく。
「でも、ここは名家メフィスト家です。メイドにならなければいけません」
「嫌です」
「嫌でも、です。まわりから、あなたはメイドであるべきとされています。お母様とお父様の顔に泥を塗るつもりですか?」
お母様にお父様って言われてもねぇ。
会ったことないし。
こんなことするくらいなら、泥だってなんだって塗ってやろうかとも思う。
私の態度に、師匠は深くため息をついた。




