洗濯
まかない飯作りを終え、次の修行、つまり自分の服を洗うため、私は洗面所に来た。
洗面所では、ルカと同い年のメイド、ジラが待っていた。
「さ、始めます。こちらに、昨日あなたが着た服があります。これを、ここにあるたらいに水を入れ、洗濯板に擦り付けて洗ってください。私はここで見ています。」
おぉ、洗濯板。
おばあさんは川へ洗濯に、のアレか。
うっし、やるど!
洗濯板に擦り付け、
ピキッ
持ち手の親指のところにヒビが入った。
そういや、握力高いんだっけ?
慎重に慎重に。
ゴシゴシ。
ゴシゴシゴシ。
うむ、さすがに洗濯くらいはできるようだ。
よし、ペース上げていこー!
ゴシゴシゴシゴシゴ、
バキッッ
おん?
手元を見、
割ーれーとーるー⁉︎
何か聞こえた。
何か聞こえたけど知らない。
洗濯板真っ二つとか知らない。
弁償?なんの話?
ピキッ
え、また何か聞こえたんだけど?
あれ、でも洗濯板に変化はない。
「ジラ、何か聞こえなかっ、」
ジラを見ると、笑顔のジラと目が合う。
ジラの青筋がピキッと音をたてた。
あ、この音ね。
問題なし!
洗濯板割れてなくて良かっ、
青筋?
もう一度ジラを見る。
「ふ、手を止めてはいけませんよ?安心してください、手は出しませんから。例えば私お気に入りの洗濯板を割られたとしても」
やらかしたぁ‼︎
知らない知らない。
私何もしてない。
うん、そういうことにしておこう。
数分後。
私は洗濯を終えた。
その後ジラに笑顔で殴られたなんていう記憶はない。
ないのである。
私が洗濯を終えると、師匠がパンわ一つ持って私のところにやってきた。
「午前中の修行の結果は聞きましたよ。散々…いえ、よく頑張りましたね」
はい、私は頑張りました。
散々って聞こえた気がするけど聞き間違いに違いない。
「今からこのパンを食べ、午後の修行をします」
あ、はい。
まだあるのね。