表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/21

21、シンイチ帰国

 カブールで、誘拐報道とされたシンイチ。自分の眼で見て、生身で感じたアフガニスタンを、今度は日本に伝える義務がある、と決意する。4ケ月ぶりに東京、西域ラーメン店に戻ったシンイチであった。

 店、家族の状況が一変していることに逆に衝撃を受け、シンイチは、父親ハナオの介護、店の営業再建、そしてアフガニスタン報道に遁走する。

 ジロウ、カズミ、ユキコはどうしていくのか。そして友人アキヤマは?

 シンイチは、カブール最後の夜更けに、事務所のノートパソコンを借りて、メールを送ることにした。友人アキヤマと家族に向けてだ。


 ✉ 

    アキヤマへ

 だいぶ心配はかけたと思う。カブールにいるってことを、こちらから家族にも知らせていなかったが、一昨日、現地警察とTVクルーが突然やってきて、俺は「誘拐」されていた日本人ということで、インタビューも受け、帰国ということになった。こちらで出会ったAAA医療財団という人たちが計らってくれていたんだ。

 もしかして、日本のニュースでも流れているかな。

 アフガニスタンからの情報は、日本ではテロ状況以外にほとんど伝えられていない。現地に来てみると実感するけど、この国は今、復興の機運にあふれている。カブールの街、若者たちの素顔は、東京と変わりはない程だ。市内各所に、武装した警官、軍人がみられるけど、それ以外は緊張感もなく平穏。そしてバザールや旧市街地はいつでも活気でいっぱい。すでに戦時下ではない。テロ事件もほんの一部にすぎない。

 帰国したら、この国の状況を正確に伝えていきたいと思う。そうそう、卒論も仕上げていかないと。でもテーマが変わるかもな。

 今月の学園祭には、間に合うかな。練習もできずゴメン。即興のセッションという形になるかも。わがままだが、よければ参加したい。

 では、明日、カブールを発つ。        

                                イヌイ シンイチ


 ✉

    イヌイ家のみなさまへ 

 心配だいぶかけました。とても元気で過ごしています。アフガニスタンにいるということを今まで連絡しないでいました。それは、もう少しこちらに滞在したかったからです。カブールという街をもっと歩きたかったし、そしてかのバーミヤーンにも行ってみたかった。

 でも今回はその目的が叶えられないまま「誘拐されていた日本人」ということとなり、明日帰国という経過になりました。

 「西域ラーメン店」は変わりないですか。父さん、母さん、変わらずですか。では、帰りを待っていて下さい。                         シンイチ

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ